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3、燃費の悪いボディと三世代ほど遅れた冷却システム
しおりを挟む「まさかここまでエネルギーを消耗するとは……なんて燃費の悪いボディだ。どんなエンジンを積んでいるのだ?」
またシナがヒィヒィ言いながらも、ようやくベッドに戻ったアリスは、先程感じたのと同じ不快感……空腹を感じた。
「は、はは、久しぶりにこれだけ動きましたものね……」
帰りは体の使い方をアリスが覚えてきたのか、若干楽だったものの、やはりその体重を支えていたシナは満身創痍になりながらも答える。
「な、なにかクロイツ……シェフに頼んで用意してもらいますか……?」
「ああ、お願いする。それと、シェフの名前はクロイツというのか?」
「え? あ、はい。そうですが」
「そうか、記憶した。では、クロイツを呼んでもらえるか?」
「……し、失礼します……」
アリスが先程と同じような食事を軽く取ったあと、やや緊張した顔でクロイツが入ってきた。
「ああ、楽にしてくれクロイツ」
名前を呼ばれ、思わず驚いた顔をしたクロイツ。
「お、お嬢様? 俺……じゃない、私の名前を……?」
「もちろんだ、もう記憶した。さて、本題に入るぞ。私はさっき、ダイエットとやらを決意した。わかるか?」
「え、ええ。体重を落とすことですね。存じ上げております」
「そうだ。私はあまりにも重い。このままでは命の危機だ。だからお前の力を借りたい」
「私の力を……?」
「ああ。食事の改善は間違いなく助けとなる。できるか?」
アリスは真剣な目でクロイツを見る。
「よ、よろしいのですか?」
「ああ、好きにやってくれ。栄養バランスがしっかりしていれば文句は言わん」
「……かしこまりました! 不祥クロイツ、全身全霊であたらせていただきます!」
「頼んだぞ。……そしてシナ」
「は、はい! なんでしょうか⁉」
「今度は知識と運動だ。誰か専門家を手配することはできるか?」
「えーっと、探してみます!」
「頼んだぞ。私は……休息に、はい、る……」
突然襲ってきた眠気に堪らず目を閉じる。
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「理由なんて……! これは不当です! わたくしは――」
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「お、王様⁉ ど、どうして⁉」
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「そんなっ、事件だなんて……。わたくしはただ、良かれと思ってやっただけですのに……」
「それがイイコトじゃなかったのです。精々残された時間を楽しむことですわね、子豚ちゃん」
女性が最後にいやみったらしい言葉を残し、王と共に去る。
「……わたくしは、わたくしは何も悪いことなんて……」
うつむき、言葉をこぼす。それでも、涙は流さない。
「……これは陰謀ですわ。わたくしを陥れるために、誰かが仕組んだ罠。そうに違いありません! わたくしは――」
「…………これはアレフルルの記憶か……」
じっとりとした不快感を覚えながら、目を覚ました。
「メモリーが混同しているな。……だが、これは手がかりとして有用だ」
アリスは目をつぶり、もう一度記憶を確かめる。
「……コイツが鍵となりそうだ。覚えておかねば」
そう言い、ふと窓の外を見るとまだあたりは薄暗い。日の出まで半刻といったところか。
「ふっ……!」
眠ってばかりでは体の筋肉は落ちるばかりだと考え、アリスはベッドから起き上がろうとする。
「……おお、少しずつアジャストされてきているな」
初めて起き上がったときとは違い、スムーズに起き上がることができた。体とアリスの繋がりが深くなってきたのか、動きのぎこちなさも消えてきた。
「立つのは……足に多大な負荷がかかるが、理解はできてきたぞ」
床がギシギシッと悲鳴をあげたが、それでもアリスは初めて一人で立ち上がった。
「最優先タスクはまず長距離を歩けるようになることだな」
立っていると腰に負荷がかかるので、ベッドに座る。
「……足に異常発生。痺れのような、なんだこの不快感は? ………………ああ、そうか。これが痛みか」
彼女は、ARSはAIである。軍用であろうとも、自分で学び、考えて結論を出すという根本は変わらない。
「ふむ、人の体は脆いな。それに、替えが効かない。考慮せねば」
改めて前の体と今の体を比べる。
「それにしても、冷却機能が追いついていないぞ……」
ふぅ、ふぅ、と少し動いただけで熱くなってしまった体にため息をつく。
「これも考慮せねば……懸案事項が多すぎる」
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