中途半端な俺が異世界で全部覚えました

１４３．催眠術

布志名さんは首元からペンダントを取り出した。
「一応人払いの結界は張っておくね」
　凄腕魔術師である布志名さんは、超高速で結界を組み立てる。
「主の守りよ秘めたる我らの密を不可視の殻を形成したまえ」
　本当はもっと長い詠唱を、独自の分構造と単語で組み立てる。
「速い……」
　この構築スピード、ソア様にも負けず劣らずって感じです。
「よーし、これでいいでしょ。で、ナンバーズ習得のことなんだけど」
　布志名さんはとある一冊の本を戸棚から引き出す。
「催眠術と瞑想でやってみよう！」





「はい、あなたは段々眠くなーる、眠くなーる……」
…………正直に言いますね。布志名さん、催眠術めっちゃ下手！　逆に目がどんどん冴えていくんですけど！
「あれ？　おかしいな？　なんでかからないんだろ？」
　こてん、と首をかしげる布志名さん。
「少し私にやらせてください」
　私は布志名さんに横になるように指示する。
「じゃあ、行きますね。……あなたは段々眠く、眠くなる……そして……ってあれ？」
「………zzz、zzz……」
「ね、寝てるー!?」
　横になった布志名さんは、まるで、天使のように可愛い寝顔を披露してくれた。
「ちょ、布志名さん！　起きて！」
　ユサユサと布志名さんを揺り動かそうとするが、全然起きる気配がない。
「……むにゃ」
　……だめだ。起きる気配が無い。
　ということで、私は一人で瞑想にチャレンジすることになったのであった。