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89,銃
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「ごめん、待たせた?」
俺は急いで走り、射撃訓練場に到着した。すると――
「あ、ネリア! もう体は大丈夫なんすか?」
黒い筒を持ちながら竜心が近づいてきた。
「ああ。寝てたら回復したよ」
「それなら良かったっす」
「それよりも、その手にあるものが銃なのか?」
俺は竜心の手にある黒い筒を指差した。
「そうっすね。コイツは64式7.62mm狙撃銃っす。ちなみに、銃の歴史から話そうと思ってこんなものを用意したっす!」
じゃじゃーんと竜心は一冊の本を取り出した。そこには『日本史の全て』と書いてある。
「えーっと、まずここ日本の歴史から始めるっす。確かネリアの世界には弓はあるんすよね?」
「そうだな。でも銃なるものは無い」
「なるほどー。要するに、銃は弓の進化後みたいなもんです。昔まで弓だったんすけど、1543年に種子島っていう島に外国人が来て、この銃の祖なる鉄砲を伝来させたと言われてるっす。そもそも鉄砲っていうのは、鉛の弾を火薬の爆発で発射するためのもんっす。それから火縄銃だのなんだのとなって今の形の銃になるんすけど、ここまでで質問あります?」
「え、えーっと、大体のことはわかったんだが、どーもピンとこないんだよなー。あと、中距離が魔法、長距離が弓ってのが俺達の世界のセオリーなんだけど、銃はどこに属するんだ? 近距離とか?」
俺がサイフォスさんから習った中で一番射程が長いのはウェーブランスのなのだが、弓の射程の二分の一程度しかない。
「んー、このカテゴリーでいくと、銃は超長距離ってことになるっすね。なんなら見てみます? 一応射撃許可はとってあるんで」
「ぜ、ぜひ見たい!」
こんなすごい武器、滅多に見れないぜ!
「でも自分、狙撃手じゃないんで、あまり上手く的に当てられないんすけどいいっすか?」
「ぜんぜん! 問題なし、オールオッケーってやつだ!」
「じゃあ撃ちます……って危ない危ない。はい、これ」
「……なんですかこれは」
謎の形をした物を渡された。半分に切った卵みたいなものがついている。
「それは耳あてっす。それしてないとソニックブームで鼓膜が破れたり、聴覚障害になるんで」
「……ソニックブームこわ」
ソニックブーム最強説。そもそもソニックブームってなんだ?
「いいっすか? 耳あてつけました?」
「ああうん、オッケー」
凄く邪魔だが、これで耳をソニックブームから守れるなら安いもんだ。
「じゃあ撃ちまーす」
そう言った瞬間、竜心の顔が真剣になった。そして銃を構え、引き金を引く――
パァン! と快音が響いた……のだと思う。耳あてのせいなのか、音がずっと遠くに聞こえる。
「うーん、イマイチな位置っすね」
的の穴を見ながら竜心が呟く。
「え? 十分じゃないか? 胸の位置は打ち抜けているし」
それにしてもすごい威力とスピードだ。射程も長いし、何よりも精度が半端じゃない。
「いや、俺の中じゃ三十点ぐらいっすかねぇ。本当は枠内に入れるだけじゃなくて、ど真ん中を撃ち抜くつもりだったっす」
そう言って竜心は銃を手放した。
「ネリアもやるっすか?」
俺は急いで走り、射撃訓練場に到着した。すると――
「あ、ネリア! もう体は大丈夫なんすか?」
黒い筒を持ちながら竜心が近づいてきた。
「ああ。寝てたら回復したよ」
「それなら良かったっす」
「それよりも、その手にあるものが銃なのか?」
俺は竜心の手にある黒い筒を指差した。
「そうっすね。コイツは64式7.62mm狙撃銃っす。ちなみに、銃の歴史から話そうと思ってこんなものを用意したっす!」
じゃじゃーんと竜心は一冊の本を取り出した。そこには『日本史の全て』と書いてある。
「えーっと、まずここ日本の歴史から始めるっす。確かネリアの世界には弓はあるんすよね?」
「そうだな。でも銃なるものは無い」
「なるほどー。要するに、銃は弓の進化後みたいなもんです。昔まで弓だったんすけど、1543年に種子島っていう島に外国人が来て、この銃の祖なる鉄砲を伝来させたと言われてるっす。そもそも鉄砲っていうのは、鉛の弾を火薬の爆発で発射するためのもんっす。それから火縄銃だのなんだのとなって今の形の銃になるんすけど、ここまでで質問あります?」
「え、えーっと、大体のことはわかったんだが、どーもピンとこないんだよなー。あと、中距離が魔法、長距離が弓ってのが俺達の世界のセオリーなんだけど、銃はどこに属するんだ? 近距離とか?」
俺がサイフォスさんから習った中で一番射程が長いのはウェーブランスのなのだが、弓の射程の二分の一程度しかない。
「んー、このカテゴリーでいくと、銃は超長距離ってことになるっすね。なんなら見てみます? 一応射撃許可はとってあるんで」
「ぜ、ぜひ見たい!」
こんなすごい武器、滅多に見れないぜ!
「でも自分、狙撃手じゃないんで、あまり上手く的に当てられないんすけどいいっすか?」
「ぜんぜん! 問題なし、オールオッケーってやつだ!」
「じゃあ撃ちます……って危ない危ない。はい、これ」
「……なんですかこれは」
謎の形をした物を渡された。半分に切った卵みたいなものがついている。
「それは耳あてっす。それしてないとソニックブームで鼓膜が破れたり、聴覚障害になるんで」
「……ソニックブームこわ」
ソニックブーム最強説。そもそもソニックブームってなんだ?
「いいっすか? 耳あてつけました?」
「ああうん、オッケー」
凄く邪魔だが、これで耳をソニックブームから守れるなら安いもんだ。
「じゃあ撃ちまーす」
そう言った瞬間、竜心の顔が真剣になった。そして銃を構え、引き金を引く――
パァン! と快音が響いた……のだと思う。耳あてのせいなのか、音がずっと遠くに聞こえる。
「うーん、イマイチな位置っすね」
的の穴を見ながら竜心が呟く。
「え? 十分じゃないか? 胸の位置は打ち抜けているし」
それにしてもすごい威力とスピードだ。射程も長いし、何よりも精度が半端じゃない。
「いや、俺の中じゃ三十点ぐらいっすかねぇ。本当は枠内に入れるだけじゃなくて、ど真ん中を撃ち抜くつもりだったっす」
そう言って竜心は銃を手放した。
「ネリアもやるっすか?」
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※架空のお話です。
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