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82,無理ゲー

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「ここでやるのもなんだし、広いところに移動しようぜ」
「いいぜ」
 俺らは広い、グラウンドまで移動した。
「ちょ、ちょっと! なんの騒ぎですか!?」
 グラウンドに移動したところで、布志名さんが慌てて来た。
「コイツが舐めたこと言ってるんで、教育っすよ、教育」
 ニヤニヤと後藤は笑う。
「ええ。今から先輩のご指導を受けるんですよ」
 ストレッチをしながら、俺は同意しているというスタンスを見せる。
「えぇ? どういうこと? い、良いんですか? 麻田准将」
 困惑しながら麻田准将を見つめる。ちなみに麻田准将は竜心から話を聞いている。
「良いんじゃないでしょうか。これはネリア二士が決めたことなので。ただ」
「ただ?」
「厳しい戦いになることは間違いなさそうです」
 険しい顔で二人を見つめる麻田准将。
「……ネリアは俺のために怒ってくれたっす……」
 竜心は心底心配そうにネリアを見つめる。
「それで怪我とかしたら俺、示しがつかないっす……」
「いや、俺はネリアがやったことは最高の判断だと思う」
 ぼそっと篤人が言った。
「ここで叩いとかなきゃ、後藤はもっと調子に乗っていた。それこそ死人出るぐらいにな。負けりゃ元も子もないが、勝つことができればヤツは止まる」
「そ、そりゃそうかもだけど……でも、ネリアがやる意味無くない? だって、一応まだ十六歳なんだよ!? 日本だとまだ学生だよ!?」
 奈美が必死に訴えかける。
「戦国時代なら、十六歳は立派な大人ですよ。それに、ネリアはそんじょそこらの十六歳とは違うです。なんてったって、このクセの強い麻田小隊に馴染めるんですから」
「ははは、そうっすね。信じましょう、ネリアを」
 竜心は顔を上げ、二人をじっと見つめた。




「ルールは武器の使用なし、ノックアウトかギブアップで終了でいいな?」
「ああ、構わねぇぜ」
 ざっ。俺は構えを取った。対して後藤は――
「ほら、こいよ」
 自然体で、あろうことか手招きまでしている。
「なめやがって!」
 俺は飛びかかろうとして――止めた。
「行かねーよ。どうせ来た瞬間に殴るつもりだろ?」
「ふっ、ただの馬鹿じゃないみてぇだな。じゃ、俺から……行くぜぇ!」
「はやっ……!」
 一歩踏み込んだかと思うと、もう目の前に拳が!
「くっ!」
 なんとか避ける。
 ヒュン! 恐ろしいほどの風切り音が鳴る。
「っぶねぇ。これ、一発でも食らったらやべぇ」
 無理ゲーかよ。
「でもな」
 俺は崩れてしまった構えを直す。
「そんな無理ゲーを毎日やって来たんだよ!」
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