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218、三ツ星シェフソア
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218、三ツ星シェフソア
「ふうぅ、やっと終わったぞ……」
あの粘度の高い液体と格闘して一時間。ようやく排除することができた。
「もうこりごりだぜ……」
「あはは、お疲れ様……」
ややくたびれた表情のサイフォスさんがねぎらってくれた。
「ありがとうございます……フェイウ? そっちはどうなってる?」
「私のほうはもうちょっとー。でも数分で終わると思う」
「そうか、まあ、お前もお疲れ様」
原因コイツだけどね。
「というか、本が多いよー。並び替えだけで一苦労」
わかる。本の並び替えって楽しいけど面倒だけどな。
「んー、私はそこは全然気にしないからてきとーでいいよ」
「えー? 巻数そろってないとなんか嫌じゃないですか?」
「そう?」
「むっ、聞き捨てならないですね。ダメですよサイフォスさん」
うーん、そもそも巻数バラバラにしたのはお前だぞ。
「おーい、できたぞー」
パタパタとソアさんがキッチンの方から駆けてきた。
「自信作なんじゃ。皆の者、期待するがよい!」
むふーっと鼻息荒くソアさんが俺たちを呼ぶ。というか、ひよこエプロンかわいい。
「ほんとーですかー? 私、味にはうるさいですよ!」
「大丈夫じゃ、食べてから言ってくりゃ?」
ほう、自信満々ですねソアさん。
「確かに師匠のご飯はおいしいですからね。めったに作ってくれないですけど」
「そうですね! 私も一度食べたことがありますが、絶品ですよ!」
「楽しみです! 楽しみです!」
そんなに言うなら、俺も期待して……って
「すげー⁉」
俺はキッチンに入った瞬間、歓声を上げてしまった。
「なんだこの量の料理と、質の高い料理は⁉」
キッチンに所狭しと並べられた色とりどりの料理。そのどれもが手が込んでいて、普通じゃお目にかかれないレベルだ。
「わしを総動員して作ったのじゃ。凄いじゃろ?」
じゃろじゃろ? と期待のこもった目で俺を見てくる。なんだろう、今日のソアさんかわいくね?
「凄いですね。びっくりしました」
「ふむ、まあ、しっかりと心行くまで食べて行ってくりゃ」
ふふーんと上機嫌に皿を運んでいく。
「俺も持っていくか」
無理にならない程度に数皿持っていく。
「うわー、肉とかすげえ」
きめ細かい油が滴るうまそうな肉だ。
「うわー! 本当にすごい! おいしそう!」
肉を見て、フェイウの目がハートになる。お前、本当に肉好きよな。
「わーい肉です肉です!」
ナナカ、お前も肉好きだったな。
「美味しそうです! ふわー!」
リーヴァも肉好きだったね。
「さすが師匠! 勉強になります!」
匙やらの準備をしていた皆が色めき立つ。
「わしに感謝して食うのじゃぞ?」
「「「「はーい!」」」」
元気に声をそろえて手を上げる。
「そろったな? では、食べるぞ!」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
待ちきれない! と一斉に動き出す。
「まずは! これだっ!」
俺はまず、澄んだ色のスープに匙を伸ばす。
「うおぉぉ、綺麗な色だ……」
スッと匙を入れたらフワッと香りが立った。俺はそのまま匙を口元へ。
「……やばっ」
思わず呟いてしまった。コクもすごいし、香りが鼻から抜けるぞ⁉ てか、これ一時間じゃできないでしょ。
「どうじゃ? うまいじゃろ?」
キラキラした目でソアさんが見てくる。
「うまいです! 最高です!」
三ツ星シェフレベルの味だぞ!
「そうじゃろそうじゃろ! なんならお主のために毎日作ってもいいのじゃぞ……?」
「本当ですか? それは魅惑的なお話ですね」
こんなうまい料理なら毎日食いたい!
「はいキター! あざとい! あざといですソア様! いいですよそういう告白じみたこと言えるの素晴らしい!」
「うるさいのじゃ」
「痛い痛い痛い!!」
アイアンクローはダメですー! と叫ぶ。うるさい。
「さて、話を戻すが、わしはいつでもうぇるかむじゃ。待っておるぞ」
「あ、はい」
じゃあまた今度ご飯を作ってもらおう。
「……さすが、鈍くて安心するわ」
「そうねフェイウちゃん。鈍すぎだわ」
ひそひそと何かが聞こえたが、よくわからん。
「でも、本当に美味しいです! お酒が欲しくなります!」
リーヴァも上機嫌だ。だって美味しいもんね。
「酒が飲みたいか? 良いぞ良いぞ。ウイスキーで良いか?」
「だめです。俺が許可しません」
「そんなっ!」
「だめったらだめです。俺がいないというか、男のいないところでなら許可しますが」
「どうしてなのですか⁉」
「だって脱ぐじゃんリーヴァ。だめだよ」
「私ならかまいません! すべてをさらけ出せます!」
「俺がかまうの! ダメ! 絶対!」
こういうところは頑固なんだから!
「ふうぅ、やっと終わったぞ……」
あの粘度の高い液体と格闘して一時間。ようやく排除することができた。
「もうこりごりだぜ……」
「あはは、お疲れ様……」
ややくたびれた表情のサイフォスさんがねぎらってくれた。
「ありがとうございます……フェイウ? そっちはどうなってる?」
「私のほうはもうちょっとー。でも数分で終わると思う」
「そうか、まあ、お前もお疲れ様」
原因コイツだけどね。
「というか、本が多いよー。並び替えだけで一苦労」
わかる。本の並び替えって楽しいけど面倒だけどな。
「んー、私はそこは全然気にしないからてきとーでいいよ」
「えー? 巻数そろってないとなんか嫌じゃないですか?」
「そう?」
「むっ、聞き捨てならないですね。ダメですよサイフォスさん」
うーん、そもそも巻数バラバラにしたのはお前だぞ。
「おーい、できたぞー」
パタパタとソアさんがキッチンの方から駆けてきた。
「自信作なんじゃ。皆の者、期待するがよい!」
むふーっと鼻息荒くソアさんが俺たちを呼ぶ。というか、ひよこエプロンかわいい。
「ほんとーですかー? 私、味にはうるさいですよ!」
「大丈夫じゃ、食べてから言ってくりゃ?」
ほう、自信満々ですねソアさん。
「確かに師匠のご飯はおいしいですからね。めったに作ってくれないですけど」
「そうですね! 私も一度食べたことがありますが、絶品ですよ!」
「楽しみです! 楽しみです!」
そんなに言うなら、俺も期待して……って
「すげー⁉」
俺はキッチンに入った瞬間、歓声を上げてしまった。
「なんだこの量の料理と、質の高い料理は⁉」
キッチンに所狭しと並べられた色とりどりの料理。そのどれもが手が込んでいて、普通じゃお目にかかれないレベルだ。
「わしを総動員して作ったのじゃ。凄いじゃろ?」
じゃろじゃろ? と期待のこもった目で俺を見てくる。なんだろう、今日のソアさんかわいくね?
「凄いですね。びっくりしました」
「ふむ、まあ、しっかりと心行くまで食べて行ってくりゃ」
ふふーんと上機嫌に皿を運んでいく。
「俺も持っていくか」
無理にならない程度に数皿持っていく。
「うわー、肉とかすげえ」
きめ細かい油が滴るうまそうな肉だ。
「うわー! 本当にすごい! おいしそう!」
肉を見て、フェイウの目がハートになる。お前、本当に肉好きよな。
「わーい肉です肉です!」
ナナカ、お前も肉好きだったな。
「美味しそうです! ふわー!」
リーヴァも肉好きだったね。
「さすが師匠! 勉強になります!」
匙やらの準備をしていた皆が色めき立つ。
「わしに感謝して食うのじゃぞ?」
「「「「はーい!」」」」
元気に声をそろえて手を上げる。
「そろったな? では、食べるぞ!」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
待ちきれない! と一斉に動き出す。
「まずは! これだっ!」
俺はまず、澄んだ色のスープに匙を伸ばす。
「うおぉぉ、綺麗な色だ……」
スッと匙を入れたらフワッと香りが立った。俺はそのまま匙を口元へ。
「……やばっ」
思わず呟いてしまった。コクもすごいし、香りが鼻から抜けるぞ⁉ てか、これ一時間じゃできないでしょ。
「どうじゃ? うまいじゃろ?」
キラキラした目でソアさんが見てくる。
「うまいです! 最高です!」
三ツ星シェフレベルの味だぞ!
「そうじゃろそうじゃろ! なんならお主のために毎日作ってもいいのじゃぞ……?」
「本当ですか? それは魅惑的なお話ですね」
こんなうまい料理なら毎日食いたい!
「はいキター! あざとい! あざといですソア様! いいですよそういう告白じみたこと言えるの素晴らしい!」
「うるさいのじゃ」
「痛い痛い痛い!!」
アイアンクローはダメですー! と叫ぶ。うるさい。
「さて、話を戻すが、わしはいつでもうぇるかむじゃ。待っておるぞ」
「あ、はい」
じゃあまた今度ご飯を作ってもらおう。
「……さすが、鈍くて安心するわ」
「そうねフェイウちゃん。鈍すぎだわ」
ひそひそと何かが聞こえたが、よくわからん。
「でも、本当に美味しいです! お酒が欲しくなります!」
リーヴァも上機嫌だ。だって美味しいもんね。
「酒が飲みたいか? 良いぞ良いぞ。ウイスキーで良いか?」
「だめです。俺が許可しません」
「そんなっ!」
「だめったらだめです。俺がいないというか、男のいないところでなら許可しますが」
「どうしてなのですか⁉」
「だって脱ぐじゃんリーヴァ。だめだよ」
「私ならかまいません! すべてをさらけ出せます!」
「俺がかまうの! ダメ! 絶対!」
こういうところは頑固なんだから!
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