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第18歩目 観光ツアー
ツアーのお得意様
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男性と世間話をしながら歩くこと五分ほど。
案内された集会所は、すでに多くの人で賑わっていた。
「……あら。」
集会所に入ってすぐ、カウンターに座っていた女性がこちらに興味を示した。
「ああ、ラミアさん。今日もいらしてたんですね!」
どうやら、顔見知りらしい。
気さくな態度で彼女に声をかける男性を横目に、そんなことを思う。
「こちら、うちの常連さんのラミアさんです。うちのツアーが回ってるのって、ラミアさんの寄付がすごいからなんですよ。」
「やあねぇ。大したことはしてないわよ。人を持ち上げるのが上手なんだから!」
ラミアは男性の肩を叩き、明るい笑い声をあげた。
見た目の派手さからも伝わってくるが、随分と豪胆な性格だと見受けられる。
「ふーん。あなたたちが飛び入り参加の二人ね?」
話がこちらに及んできたので、シュルクとフィオリアはそろって会釈を。
ラミアは二人に近付くと、何かを吟味をするように二人をじっくりと眺めた。
そうすることしばし。
「いいじゃない! この辺りじゃ見ないタイプ。その見た目、ティーン出身でしょ? レアな出会いをしたわー♪」
シュルクの体を触っていたラミアは、上機嫌で表情を明るくした。
「よし! 新しい出会いで、気分がよくなっちゃった。今夜は、あたしの奢りでツアー出発前の宴会といきましょ!!」
「いいんですか!?」
これに沸き立ったのは、男性を含む従業員たちだ。
「いいのよ。ここは、パーっと景気よくいきましょ! ってなわけで、準備よろしく♪」
「承知です!」
男性は、足取りも軽くスタッフルームへと消えていく。
その後、集会所全体を巻き込んだ宴会が始まった。
皆が笑顔で酒と料理を楽しむ中……
「………」
シュルクは隅の方で気配を殺し、持参していた歴史書にずっと目を落としていた。
目の前に出された酒や料理には、一切目もくれない。
そんなシュルクの隣で、フィオリアは所在なげに周りの様子を見ながら、落ち着かない時間を過ごしていた。
先ほどから色んな人に話しかけられるのだけど、学問に関わる話以外には基本的に無言を貫き通すシュルク。
これは、自分はどんな態度を取るのが正解なのか。
まるで見当がつかないフィオリアは、早くも目を回していた。
と、そこに―――
「おーい! シュルク君にフィオリアちゃーん!」
酒瓶を片手に、ラミアがやってくる。
「何よー。全然飲んでないじゃない!」
シュルクの隣に陣取った彼女は、酒が入ったコップをシュルクに差し出した。
しかし、シュルクはというと―――
「すみません。あくまでも調査という目的で来ているので、お酒は遠慮します。それに、お嬢様が潰れた時のために素面で待機している必要がありますので。」
完全に役に入りきっているのか、まるで堅物のような態度で酒をラミアへと突き返した。
そんなシュルクの態度に、ラミアはつまらなそうに唇を尖らせる。
「真面目でつまらないわねー。というか、上着くらい脱いだら? 羽が窮屈でしょ。」
「自衛のためです。」
「ここの護衛サービスは、トップクラスよ?」
「それでも、念には念を入れるのが護衛の務めですので。」
さすがはシュルク。
一切なびかない。
テコでも動かなそうなシュルクに、ラミアはどこか不満そうだ。
「あ、あの……」
ここは、自分が場を繋がなくては。
フィオリアは、おそるおそる口を開いた。
「軽くでしたら、私がお付き合いします。ラミアさんは、この辺りの地形にはお詳しいんですか?」
「もちろん。生まれも育ちもここだから!」
「でしたら、明日からのツアーについて教えてもらえますか?」
あらかじめ、シュルクから地図や詩の資料を渡されていてよかった。
フィオリアは、鞄から地図を取り出して机に広げる。
料理をつまみながら、談笑を始めるフィオリアたち。
そんな二人の様子を、シュルクはただ静かに見つめていた。
案内された集会所は、すでに多くの人で賑わっていた。
「……あら。」
集会所に入ってすぐ、カウンターに座っていた女性がこちらに興味を示した。
「ああ、ラミアさん。今日もいらしてたんですね!」
どうやら、顔見知りらしい。
気さくな態度で彼女に声をかける男性を横目に、そんなことを思う。
「こちら、うちの常連さんのラミアさんです。うちのツアーが回ってるのって、ラミアさんの寄付がすごいからなんですよ。」
「やあねぇ。大したことはしてないわよ。人を持ち上げるのが上手なんだから!」
ラミアは男性の肩を叩き、明るい笑い声をあげた。
見た目の派手さからも伝わってくるが、随分と豪胆な性格だと見受けられる。
「ふーん。あなたたちが飛び入り参加の二人ね?」
話がこちらに及んできたので、シュルクとフィオリアはそろって会釈を。
ラミアは二人に近付くと、何かを吟味をするように二人をじっくりと眺めた。
そうすることしばし。
「いいじゃない! この辺りじゃ見ないタイプ。その見た目、ティーン出身でしょ? レアな出会いをしたわー♪」
シュルクの体を触っていたラミアは、上機嫌で表情を明るくした。
「よし! 新しい出会いで、気分がよくなっちゃった。今夜は、あたしの奢りでツアー出発前の宴会といきましょ!!」
「いいんですか!?」
これに沸き立ったのは、男性を含む従業員たちだ。
「いいのよ。ここは、パーっと景気よくいきましょ! ってなわけで、準備よろしく♪」
「承知です!」
男性は、足取りも軽くスタッフルームへと消えていく。
その後、集会所全体を巻き込んだ宴会が始まった。
皆が笑顔で酒と料理を楽しむ中……
「………」
シュルクは隅の方で気配を殺し、持参していた歴史書にずっと目を落としていた。
目の前に出された酒や料理には、一切目もくれない。
そんなシュルクの隣で、フィオリアは所在なげに周りの様子を見ながら、落ち着かない時間を過ごしていた。
先ほどから色んな人に話しかけられるのだけど、学問に関わる話以外には基本的に無言を貫き通すシュルク。
これは、自分はどんな態度を取るのが正解なのか。
まるで見当がつかないフィオリアは、早くも目を回していた。
と、そこに―――
「おーい! シュルク君にフィオリアちゃーん!」
酒瓶を片手に、ラミアがやってくる。
「何よー。全然飲んでないじゃない!」
シュルクの隣に陣取った彼女は、酒が入ったコップをシュルクに差し出した。
しかし、シュルクはというと―――
「すみません。あくまでも調査という目的で来ているので、お酒は遠慮します。それに、お嬢様が潰れた時のために素面で待機している必要がありますので。」
完全に役に入りきっているのか、まるで堅物のような態度で酒をラミアへと突き返した。
そんなシュルクの態度に、ラミアはつまらなそうに唇を尖らせる。
「真面目でつまらないわねー。というか、上着くらい脱いだら? 羽が窮屈でしょ。」
「自衛のためです。」
「ここの護衛サービスは、トップクラスよ?」
「それでも、念には念を入れるのが護衛の務めですので。」
さすがはシュルク。
一切なびかない。
テコでも動かなそうなシュルクに、ラミアはどこか不満そうだ。
「あ、あの……」
ここは、自分が場を繋がなくては。
フィオリアは、おそるおそる口を開いた。
「軽くでしたら、私がお付き合いします。ラミアさんは、この辺りの地形にはお詳しいんですか?」
「もちろん。生まれも育ちもここだから!」
「でしたら、明日からのツアーについて教えてもらえますか?」
あらかじめ、シュルクから地図や詩の資料を渡されていてよかった。
フィオリアは、鞄から地図を取り出して机に広げる。
料理をつまみながら、談笑を始めるフィオリアたち。
そんな二人の様子を、シュルクはただ静かに見つめていた。
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