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第14歩目 ぶつかり合う感情
ミシェリアに優しい理由
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勇気を出して踏み込んだ一歩。
それに対するシュルクの反応は……
「は?」
きょとん、だった。
質問の意味が分からないと、翡翠色の瞳が語っている。
「だから、ミシェリアさんって、本当にただの情報交換の相手なの? なんかシュルク、やたらとミシェリアさんに優しくない?」
「えー、そんなこと……」
始めは軽い口調で否定しかけたシュルクだった。
しかし、彼はすぐに考え込む仕草を見せ、視線を虚空へとやる。
「あー、でも……なるほど……そういう……」
きっと、今までの自分の行動を思い返しているのだろう。
ぶつぶつと呟くシュルクの表情が、だんだんと気まずげなものに変わっていく。
「つまり、全面的に俺のせいだと……」
「もう! 素直に認めればいいってもんじゃないんだから!!」
フィオリアはたまらず、シュルクに向かって怒鳴っていた。
「なんで、私がさっき部屋を出ていったと思ってるのよ! 認めて謝れば満足するほど私が単純……なこともあるかもしれないけど、今回は満足してあげないんだから!」
「お前、自分が単純って自覚はあったのか。」
「もう、今はそこを突っ込まないでよ!!」
しみじみと言うシュルクの腕を両手で掴み、フィオリアは間近からシュルクの顔を見上げた。
「なんで? なんでミシェリアさんには、あんなに優しいの?」
これを本人の口から聞かないことには、納得がいかない。
別に、自分以外の皆に優しくするななんて言わないけど、あそこまで露骨に態度が違うと、さすがに気になるというもの。
「あー……」
何か言いにくい事情でもあるのか、シュルクは言葉を濁して視線を逸らす。
「……それ、言わなきゃだめ?」
苦し紛れにそう言って逃げようとするシュルクは、仄かに顔を赤らめていた。
予想していなかったその反応に数度まばたきをしたフィオリアは、その反応の意味を考えて大きく頬を膨らませた。
「何!? 言いたくない理由なの!?」
「言いたくないというか、言いにくいというか……」
「どっちも一緒だもん! そんなにミシェリアさんのことが気に入ってるの!?」
「へ?」
シュルクがポカンと口を開けるが、一度火がついてしまったフィオリアには、そんな反応など見えていなかった。
「へー? シュルクって、ああいう人が好みなんだー?」
「ちょ、ちが……」
「ミシェリアさん、美人だもんねー。私みたいに、子供っぽくないもんねー。」
「ああもう! 待て待て待て!!」
シュルクは慌ててフィオリアの言葉を止めると、ものすごく渋い顔をして頭を抱えた。
「分かった。白状する。白状するから、その変な勘違いをやめろ。」
「勘違いって?」
「まず、俺は別にミシェリアさんが好みとかじゃないから。」
「じゃあ、なんで―――」
「焦るな。ちゃんと話すから。」
シュルクは深く、本当に深く息を吐き出す。
「放っておけなかったんだよ。―――なんだか、お前に似てて。」
「え…?」
フィオリアは目を丸くする。
シュルクからの答えは、少なくとも自分の予想にはなかったものだった。
それに対するシュルクの反応は……
「は?」
きょとん、だった。
質問の意味が分からないと、翡翠色の瞳が語っている。
「だから、ミシェリアさんって、本当にただの情報交換の相手なの? なんかシュルク、やたらとミシェリアさんに優しくない?」
「えー、そんなこと……」
始めは軽い口調で否定しかけたシュルクだった。
しかし、彼はすぐに考え込む仕草を見せ、視線を虚空へとやる。
「あー、でも……なるほど……そういう……」
きっと、今までの自分の行動を思い返しているのだろう。
ぶつぶつと呟くシュルクの表情が、だんだんと気まずげなものに変わっていく。
「つまり、全面的に俺のせいだと……」
「もう! 素直に認めればいいってもんじゃないんだから!!」
フィオリアはたまらず、シュルクに向かって怒鳴っていた。
「なんで、私がさっき部屋を出ていったと思ってるのよ! 認めて謝れば満足するほど私が単純……なこともあるかもしれないけど、今回は満足してあげないんだから!」
「お前、自分が単純って自覚はあったのか。」
「もう、今はそこを突っ込まないでよ!!」
しみじみと言うシュルクの腕を両手で掴み、フィオリアは間近からシュルクの顔を見上げた。
「なんで? なんでミシェリアさんには、あんなに優しいの?」
これを本人の口から聞かないことには、納得がいかない。
別に、自分以外の皆に優しくするななんて言わないけど、あそこまで露骨に態度が違うと、さすがに気になるというもの。
「あー……」
何か言いにくい事情でもあるのか、シュルクは言葉を濁して視線を逸らす。
「……それ、言わなきゃだめ?」
苦し紛れにそう言って逃げようとするシュルクは、仄かに顔を赤らめていた。
予想していなかったその反応に数度まばたきをしたフィオリアは、その反応の意味を考えて大きく頬を膨らませた。
「何!? 言いたくない理由なの!?」
「言いたくないというか、言いにくいというか……」
「どっちも一緒だもん! そんなにミシェリアさんのことが気に入ってるの!?」
「へ?」
シュルクがポカンと口を開けるが、一度火がついてしまったフィオリアには、そんな反応など見えていなかった。
「へー? シュルクって、ああいう人が好みなんだー?」
「ちょ、ちが……」
「ミシェリアさん、美人だもんねー。私みたいに、子供っぽくないもんねー。」
「ああもう! 待て待て待て!!」
シュルクは慌ててフィオリアの言葉を止めると、ものすごく渋い顔をして頭を抱えた。
「分かった。白状する。白状するから、その変な勘違いをやめろ。」
「勘違いって?」
「まず、俺は別にミシェリアさんが好みとかじゃないから。」
「じゃあ、なんで―――」
「焦るな。ちゃんと話すから。」
シュルクは深く、本当に深く息を吐き出す。
「放っておけなかったんだよ。―――なんだか、お前に似てて。」
「え…?」
フィオリアは目を丸くする。
シュルクからの答えは、少なくとも自分の予想にはなかったものだった。
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