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第13歩目 こじれた絆
今は今
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ミシェリアはぐずぐずと、すすり泣き続けている。
「あの……」
控えめに声をかけてみるも、彼女が顔を上げてくれる様子はなかった。
「……はぁ。」
シュルクは肩を落とす。
仕方ない。
ここまで来たら、巻き込まれついでに世話を焼くしかないだろう。
「引き出し、勝手に漁りますよ。」
一言断りを入れ、シュルクはミシェリアから離れてクローゼットに向かった。
中をあらため、手頃な肩掛けを探し出す。
そして、相変わらず下をうつむいているミシェリアの前に膝をつき、取ってきた肩掛けをそっとかけてやった。
「え…?」
「それ、見られたくはないでしょ。見なかったことにするんで、隠してください。」
きっちりと首の刺青を隠してやると、ミシェリアが信じられないというように目を大きくした。
「わたくしのこと……軽蔑しないのですか?」
「別に。金持ちは気にするのかもしれないですけど、俺は庶民ですからねぇ。軽蔑する必要がどこにあるのか、さっぱり理解できないですよ。奴隷なんて、なりたくてなるもんじゃないでしょうに。」
昔がどうだろうと、今は今。
もし目の前にいる相手に軽蔑すべきことがあるのだとしたら、それは立場ではなく、内面の問題だと思う。
今までの経験で得た、一つの答えだ。
「………」
ミシェリアは、ぎゅっと肩掛けを握り締める。
「……少し、ほっとしましたわ。」
彼女はここで初めて、素朴な笑顔を見せた。
「なんだか、旦那様と初めて会った時のこと思い出しました。あの時も、旦那様があなたと同じように、ご自分の上着をかけてくださって……」
「えー……あの人がそんなことするようには、到底見えないけどな……」
全然想像ができない。
シュルクが思ったことをそのまま口にすると、それを聞いたミシェリアが子供のように頬を膨らませた。
「まあ! わたくしは、嘘なんてつきませんわ。あの時の旦那様は、わたくしにとっての神様だったのですから!」
「あああ、分かった。分かりました。別に、あなたのことを否定するつもりはないですって! すみませんでした!!」
握った両手でぽかぽかと体を叩いてくるミシェリアに、シュルクはすぐに謝ることにする。
落ち着いたとはいえ、彼女から完全に酔いが抜けていないことは明らか。
またさっきのように変な暴走をされても困るので、ここはできるだけ彼女の神経を逆なでしないようにしなければ。
「………旦那様は……」
急に拳を下げるミシェリア。
「旦那様は、わたくしが嫌いなのですわ……」
しゅんと落ち込んだ彼女の口から、そんな言葉が零れ落ちた。
「あの……」
控えめに声をかけてみるも、彼女が顔を上げてくれる様子はなかった。
「……はぁ。」
シュルクは肩を落とす。
仕方ない。
ここまで来たら、巻き込まれついでに世話を焼くしかないだろう。
「引き出し、勝手に漁りますよ。」
一言断りを入れ、シュルクはミシェリアから離れてクローゼットに向かった。
中をあらため、手頃な肩掛けを探し出す。
そして、相変わらず下をうつむいているミシェリアの前に膝をつき、取ってきた肩掛けをそっとかけてやった。
「え…?」
「それ、見られたくはないでしょ。見なかったことにするんで、隠してください。」
きっちりと首の刺青を隠してやると、ミシェリアが信じられないというように目を大きくした。
「わたくしのこと……軽蔑しないのですか?」
「別に。金持ちは気にするのかもしれないですけど、俺は庶民ですからねぇ。軽蔑する必要がどこにあるのか、さっぱり理解できないですよ。奴隷なんて、なりたくてなるもんじゃないでしょうに。」
昔がどうだろうと、今は今。
もし目の前にいる相手に軽蔑すべきことがあるのだとしたら、それは立場ではなく、内面の問題だと思う。
今までの経験で得た、一つの答えだ。
「………」
ミシェリアは、ぎゅっと肩掛けを握り締める。
「……少し、ほっとしましたわ。」
彼女はここで初めて、素朴な笑顔を見せた。
「なんだか、旦那様と初めて会った時のこと思い出しました。あの時も、旦那様があなたと同じように、ご自分の上着をかけてくださって……」
「えー……あの人がそんなことするようには、到底見えないけどな……」
全然想像ができない。
シュルクが思ったことをそのまま口にすると、それを聞いたミシェリアが子供のように頬を膨らませた。
「まあ! わたくしは、嘘なんてつきませんわ。あの時の旦那様は、わたくしにとっての神様だったのですから!」
「あああ、分かった。分かりました。別に、あなたのことを否定するつもりはないですって! すみませんでした!!」
握った両手でぽかぽかと体を叩いてくるミシェリアに、シュルクはすぐに謝ることにする。
落ち着いたとはいえ、彼女から完全に酔いが抜けていないことは明らか。
またさっきのように変な暴走をされても困るので、ここはできるだけ彼女の神経を逆なでしないようにしなければ。
「………旦那様は……」
急に拳を下げるミシェリア。
「旦那様は、わたくしが嫌いなのですわ……」
しゅんと落ち込んだ彼女の口から、そんな言葉が零れ落ちた。
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