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【番外編3】伝説が生まれるまで
カウント28 味方は続々と
しおりを挟むオレがどれだけ魅力ある人間なのか。
アイロス先輩は、それをちゃんと理解しろと言った。
その時はまだ実感に欠けていたが、辞令が発表されてからというもの、オレは彼の言葉の正しさを嫌というほど理解することになった。
『僕、絶対に入軍試験に受かって、先輩の部隊に行きますから!!』
きっかけは、後輩のこの一言。
入学してまだ半年も経たない一年生の宣言に触発されてしまったのかもしれない。
他の後輩たちもこぞってドラゴン殲滅部隊への入隊意志を示し、宮殿情報部への就職が決まっている先輩からも、密やかに協力すると確約をもらってしまった。
仲が良かった同級生たちも、オレへの辞令を不服として、署名活動を始めると言い出す始末だ。
ここまで言われてしまうと、さすがにオレも全ての事情を伏せたままでいるわけにもいかない。
やむを得ず皆を集めて、ドラゴン殲滅部隊隊長への就任がオレの意志であることを伝えることにした。
そして、オレに味方してくれようとする気持ちへ感謝することに加えて、その選択に伴うリスクをきちんと説明した。
できることなら、オレのことは心の中だけで応援するにとどめてほしかったから。
総督部を敵に回すことの危険性は、オレが経験として知っている。
アイロス先輩という前例がすでにあるとはいえ、目の前にあるのが茨の道だと分かっているのに皆を引き込むことは、やはり躊躇われたのだ。
それでも、皆の意志は変わらなかった。
オレの身に具体的にどんなことが起こったのかは言わなかったし、総督部の名前が出たことで顔を青くする人はもちろんいたけど……
―――信じるべきはオレだから、と。
最終的に、皆はそう笑ってくれたのだ。
オレってば、無自覚でとんでもないことをやってたんだな。
一歩も譲ってくれなさそうな皆を目の前に、オレは初めて本気で自分という人間の恐ろしさを知ったのだった。
正直、オレはオレのやりたいことをやりたいようにやっていただけで、ここまで慕われるような人間ではないと思っていた。
人間関係だって、来るもの拒まず去るもの追わず、持ちつ持たれつで協力したり協力してもらったりしただけ。
それなのに、現実はこうだ。
誰もがオレが正しいと信じてくれて、リスクを知ってなお、オレの味方でありたいと言ってくれた。
オレに突きつけられたハチャメチャな条件を知って、オレの剣の実力は知らないはずなのに、それでもオレに自分の未来を預けてくれると言うのだ。
こうなっちゃったら、オレも腹をくくるしかないでしょ?
だって、オレを慕ってくれる皆の気持ちは、オレじゃ止められないんだからさ。
こうなったら、皆の運命を預かってやる。
オレの味方についたことを決して後悔させないよう、圧倒的な強さを見せつけてやろうじゃないか。
オレ一人の強さではなく、オレと皆の気持ちが一つになってもたらされる本当の強さを。
そう言ったオレに、皆は興奮状態で賛同してくれた。
本当は皆を諦めさせるために開いた集会だったのに、最後にはまるで決起集会のようになってしまい、後から思い返すと少し面白くて笑えた。
―――そうして今日、オレは新たな一歩を踏み出すのだ。
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