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【番外編3】伝説が生まれるまで
カウント開始 雲の上の存在
しおりを挟む今になって、よく考える。
あの日、飲み会がなかったら。
酔いつぶれた後輩が、学外暮らしじゃなかったら。
その後輩を、彼の自宅まで送らなければ。
気まぐれに、あの場所を通ろうと思わなければ。
そのどれかが一つでも欠けていたら―――オレはきっと、彼女に出逢えなかっただろうって……
初めて彼女を見たのは、大学の入学式でのことだった。
……若いな。
祝辞を述べる彼女を見て思ったことは、それだけだった。
確か、先代の神官が病気で亡くなったのが五年前。
その後代理を立てることもなく、二十歳にも満たない彼女が神官に就いたのだと記憶している。
高校、そして大学と、軍人志望の人間が集まる環境にいたので、宮殿の話について触れる機会は多々あった。
その中で、なんとなく彼女の肩身が狭いだろうことも察していた。
オレとそんなに歳も変わらないだろうに、お偉いさんは大変だな。
その時は、そうとしか思っていなかった。
オレには、軍人になるつもりなんてなかった。
だから、彼女のいる世界とは交わらずに生きていくと思って疑っていなかった。
大変そうだという小さな同情も、テレビの向こうに映る芸能人に抱くような、現実感に欠けたものだった。
この時のオレはまだ知らない。
この二年後、関わるはずもないと思っていた世界の根幹にまで、足を踏み入れることになるなんて―――
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