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【番外編2】嵐との出会い
第4の嵐 アイロス爆発
しおりを挟む「えっと、つまりなんだ……お前は、後輩の不正入学がばれるのが嫌でおれたちを遠ざけてたんじゃなくて、後輩が代表委員としておれたちの目に留まるのが嫌だったわけだな?」
「そうです……って、不正入学?」
ひとまず委員会室に戻り、確認の意味も込めておれがそう訪ねると、アイロスはきょとんとして目をまたたいた。
「あのディアが不正? ありえないですって。あいつがこの大学に入れないわけがないですもん。……え? 先輩方、そんなことを疑ってたんです?」
「入れないわけがないって……倍率四十倍って数字を知ってて、よくそう言えんな。普通、おれらの目をごまかす理由なんて、それしかねえだろ。」
「正確には、僕が勝手にそう疑ってただけなんだけど…。申し訳ない。」
予想が大ハズレして困惑しているらしく、ジョーの言葉からはいつもの清々しさが消えている。
それも仕方ないだろう。
何せ、おれだって未だに頭の整理が追いついていないくらいだ。
なんだってアイロスは、こんなヘンテコな理由でおれたちの目を欺こうとしたんだ?
「……まあ、やましいことがねえならいいんだけどよ。さすがに、理由が突飛すぎて状況が分からんから聞かせろ。なんであの後輩を、おれらの目に触れさせたくなかったんだ?」
「うっ…」
アイロスが頬をひきつらせる。
〝やっぱり、訊いてきますよねー……〟
そんな心の声が、顔に浮き出ていた。
「やっぱり、戦国世代のツートップの目はごまかせないですよね。ごめん、ディア……」
絶望的な溜め息を吐き出すアイロス。
それで諦めがついたのか、彼はしゅんと肩を落としたまま話し始めた。
「そのうち、顔くらいは知られるって分かってたんです。ただ、素のディアを今見られるのは、ちょっとまずいかなって思って……」
「はあ…?」
「ううう…っ。だって……だってですよ!?」
突如として、アイロスの声がひっくり返る。
「新入生調査対象外に逃げたとはいえ、あのディアラントですよ!? 先輩方の目に留まらないわけないじゃないですか!? 見ましたよね、あれ! あいつはそこにいるだけで、自然と人を集めるような奴なんですよ!?」
「お、おう……」
「ディア以上に光る子がいればと思いましたけど、今年の新入生、なんかいまひとつですしー…。こうなったら、せめて代表委員の選定が終わるまでは、ディアのこと隠すしかないって思ったんですよ。」
「はあ…?」
「それなのに、ディアの奴ったら俺の気苦労も知らないで、満面の笑顔で『よろしくお願いしまーす!』だし、あんなに大人しくしとけって言ったのに、全然本性隠す気ないしー!!」
わっと顔を覆って、アイロスは大声で嘆き出す。
そんなアイロスを、おれもジョーも複雑な心境で見つめるしかなかった。
あのアイロスが、ここまで感情を爆発させるくらいだ。
相当ストレスが溜まっていたのだろう。
そしてそのストレスに耐えられるくらい、ディアラントのことを気遣っていたわけだ。
今も言葉の端々で「でも、ディアが望むなら仕方ないじゃないですかぁー…」などとぼやいているのが、何よりの証拠といえよう。
「……どう思う?」
「どう思うも何も……」
隣のジョーに話を振ると、ジョーも困ったように頬を掻いているところだった。
「アイロス君がここまでするくらいだから、もちろん事情は汲んであげるべきなんだろうけど……ねえ? ここまでされると、逆に興味が湧くってもんだよ。」
やっぱりそうだよな。
全く同じ感想を抱いていたおれ。
しかしながら、こんなアイロスをさらに追い詰めるのもどうか。
そんな板挟みになった結果、おれはジョーに同意して頷くこともできず、曖昧にその場をやり過ごすしかなかった。
しかし―――
「もういいですよ。」
その時、アイロスが投げやりに呟いた。
「どうせ、俺が止めたって先輩方はディアんとこに行くんでしょう? 俺はもう疲れたんで、あとは本人に直接聞いてくださいよ。俺は悪くないです! 楽観主義のディアラントの自業自得なんですよー!! あんの大馬鹿者ーっ!!」
なんだか、アイロスの人格が崩壊してきた気がする。
結局おれは、乱心状態に陥ったアイロスの気が済むまで話を聞いてやる他になかった。
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