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第7章 戦いの終わり
親友で恩人
しおりを挟む「あいつも、よくやるな……」
医療・研究部の一室。
緊急生中継をテレビから見守っていたルカとエリクは、無事に終わりそうな雰囲気の会見にほっと胸をなで下ろしていた。
「これからもドラゴンと接していようなんて、キリハ君らしいね。ってことは、キリハ君はこのまま宮殿に残るつもりなのかな?」
「いや、ないな。」
エリクの疑問に、ルカは即で首を振る。
「あいつにはもう、あいつなりに夢を叶える計画があるみたいだぜ。宮殿には残らないだろう。」
「あら、そうなの?」
「ああ。本人がそう言ってたし、向こうも乗り気だからな。おかげでオレは、一年以上も前から苦労ばっかだよ。」
「一年以上も前から、か…。ふーん?」
「……なんだよ?」
突然生ぬるくなったエリクの視線が気持ち悪くて、ルカは顔をしかめる。
「なんか、改めて見てるとやっぱり嬉しいなって思って。ルカにとって、こんなに大事な友達ができるなんてさ。」
「……そうだな。」
少しの間を置いて、ルカは表情を和ませる。
「正直、あいつがどうしてオレをこんなに信用してるのか……今でも分かんねぇ。あいつにはオレよりも頼りにできる奴がいっぱいいて、あいつを好きな奴もたくさんいて……そのうちオレの存在なんか、あいつの中でかすれていくんだろうって思ってたんだ。」
「そんなことないと思うけどな。」
「そう。そんなことなかったわけなんだよ。」
ルカの切り返しに、エリクは思わず目を見開く。
自分で言っておいてなんだが、ルカが素直に認めるとは思っていなかったからだ。
「嫌でも分かる。あいつ、悩み事も相談も真っ先にオレに言ってくるんだぜ? 霞むどころか逆で、あいつの中でオレの存在がどんどん大きくなっていくんだ。それでオレも、あいつのためにここまでのことができちまったんだから、もう潔く認めるしかないよな。」
眉を下げて笑ったルカは、病室の窓に広がる青空を見つめる。
「キリハは―――オレにとって、唯一の親友だよ。それで……オレの人生を変えてくれた、大切な恩人だ。」
とても凪いだ、ルカの横顔。
ようやく認められてすっきりしたと、彼の穏やかな表情が語る。
「よかったね。そういう人に出会えて。」
エリクが笑う。
それにもルカは、一つ頷くだけだった。
「とはいえ、今は自分のことだな。衝動的にとはいえ、思いっきりやっちまったよ。まともに歩けるようになるのは、いつになることやら……」
「全治六ヶ月。四月からの復学は諦めるしかないね。」
「だな。まあ、復学試験の対策時間が増えたと思うしかねぇよ。というか、オレはともかく、兄さんはいつまで宮殿にいるんだ?」
「んー……いつだろ? まだ経過観察をさせてほしいとは言われてるんだけど、いつまで缶詰めかは聞かされてないんだよねぇ~…」
「で、もう一個気になるんだ。保護の名目で宮殿にいるくせに、兄さんはなんで白衣を着てるんだ?」
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「エリクくーん!!」
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「エリク君!! どうか、私の後生を聞いてーっ!!」
「あわわわわ…っ。ロンド先生、どうしたんですか!?」
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「エリク君! このまま、宮殿の医療部に転職してくれないかなぁ!?」
ロンドの後生は、完全にヘッドハンティングだった。
「え…? 宮殿の…?」
「うん! そう!」
ロンドは涙目になって、切実に訴えた。
「うちの気難しい患者たち、もう君の言うことしか聞かなくなっちゃって!! どこがどう痛いのかって詳しい症状を聞き出せるのも君くらいだし!! シアノ君のカウンセリングだって、君しかできないし!! もうカウンセリング限定の業務委託じゃ済まないんだよーっ!!」
果てにはおいおいと泣き出し、ロンドはエリクの白衣に頭をこすりつけている。
「やっぱり、やってたんだな?」
「いやぁー…。ただ普通におしゃべりしてただけのはず……」
「どうせまた、嫌みゼロ、悪意ゼロの究極の自虐ネタで心をベッキリと折って素直にさせたんだろ。それか、拳込みで命の説教でもしたか?」
「あー……しました。」
ほら見ろ。
やっぱり無駄な世話好きをしていたではないか。
これも立派な職業病である。
「兄さんの好きにしたらいいじゃねぇか。自分で蒔いた種だろ。」
自分に意見を求められても困るので、ルカは早々に部外者ゾーンへ逃げる。
「んー…」
エリクはロンドを張り付けたまま、虚空を見つめてじっくりと考える。
そんな時間が数十秒経過した頃。
「うん、いいですよ。」
彼はあっさりと承諾した。
「本当かい!?」
パッと表情を輝かせるロンドに、エリクはにこやかに頷く。
「ええ。さすがに事件が起こった病院に戻るわけにもいかないので、転職はしなきゃいけないと思ってたんです。」
「そうなんだね!! 安心してくれ。決して悪くない待遇にするから!!」
「あ、じゃあ!」
そこで、ぽんと両手を叩くエリク。
「一つ、条件があるんです。」
突然、彼はそんなことを言う。
そしてその条件を聞いたロンドは大喜びし、ルカは理解不能だと言いたげに顔を歪めるのだった。
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