竜焔の騎士

時雨青葉

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第2章 300年前の真実

とある少女の話

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 彼女は、人間にしては面白い子だった。


 私には近寄るなと。
 リュドルフリアとユアンにあそこまで言われていたくせに、笑顔をきらめかせて私の元に訪れた。


 私が戦争の火種を作ったと。
 そう知っているにもかかわらずだ。


 その時にはもう、ドラゴンと人間の絆は壊滅状態だった。
 そんな中で私の元へ通う彼女は、人間の中でも異分子だったと思う。


 彼女の視界を借りて見る人間は、なかなかに醜悪だったといえよう。
 それでも彼女が排斥されなかったのは、彼女が当時《焔乱舞》の使い手であったからだろうな。


 最初は無視を決め込んでいたんだがな……ポツポツと言葉を交わすようになったのは、いつからだったか。


 なんとなく、彼女と接しているのは気分がよかった気がする。


 リュドルフリアも見ない。
 ユアンの諌言かんげんにも耳を貸さない。
 周りの人間すらも気にしない。




 私を―――私だけをまっすぐに見上げる瞳。




 それがユアンを思わせるという不快感はあったが……私だけに注がれる眼差しに、いつしか気を許しかけていたのかもしれない。


 だが私は、彼女に対する疑いと自分の意地を振り払えなかった。


 彼女はなんのために、ここまでのことをする?
 どうせ、私が人間を認めれば戦争が終わると思っているのだろう?


 まあ、私が同胞を狂わせるのをやめれば、争いの勢いは多少マシになるかもしれんな。
 もはや人間たちが自主的に争っているから、それで戦争が終わるとは思えんが。


 仮に私がこの行為をやめた末に、戦争が終わったとしよう。
 そうしたら、彼女はどうするのだ?


 用済みの私には目もくれず、人間の中に戻っていくのか?


 そう思った私の中には、怒りとも切なさともいえる感情が渦巻いた。


 もしかしたら、一度リュドルフリアを失った経験を繰り返すかもしれないことに、自覚なしに恐怖したのかもしれないな。




 どうせこいつも離れていくなら―――いっそ、私の手で壊してしまえ。




 当時の私は、自分が至ったその結論を正しいものだと信じて疑わなかった。


 彼女との、短いようで長いやり取り。




 その末に―――彼女は、自ら命を絶つことを選んだ。




 だがな……彼女は、死の間際ですら笑っていたのだ。
 そして、笑顔のまま炎の中へと消えていった。




 もしお願いを聞いてくれるなら―――今度こそ、みんなで仲良く笑ってくれと。




 そんな最期の言葉を残して……

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