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第2章 300年前の真実
ひとつの提案
しおりを挟む「は…?」
キリハの言葉を聞いたレクトは、それはもう奇妙な表情をしていた。
それに対し、キリハはキラキラと輝いた目でレクトに告げる。
「俺、レクトと友達になりたい。ユアンの真似をするわけじゃないけど、レクトやシアノと出会えたことを、ただの偶然で終わらせたくないんだ。これまでは変えられないけど、これからは変えられるんだから!」
大丈夫。
どんなに変えるのが難しいことでも、きっかけを大事にして 真摯に向き合えば、いつかは変えられる。
それは、今までの経験から分かっているじゃないか。
これは名案だと明るくなるキリハだったが、レクトはその意図を掴みあぐねて、胡乱げに顔をしかめる。
「今さら何を……」
「そんなことないよ! 騙されたと思って、人間の友達を作ってみない?」
「………」
無言のレクトは意地が先行しているのか、提案を受け入れずに渋っている。
これは、もうひと押しが必要か。
そう思ったキリハは、笑顔で畳み掛けた。
「レクトなら、きっと人間と仲良くなれるって。シアノを育ててくれてたのも、人間に興味があるからじゃないの?」
「どうだろうな……」
そこで、レクトが複雑そうな口調で曖昧な一言を。
彼はシアノの髪をひとつまみして、昔のことを語る。
「シアノの親がこの洞窟にこの子を捨てていったのが、四年前のことか…。別にその場で食ってやってもよかったが……この子の荒んだ目が、どことなく私と被ってな…。なんとなく、食う気が失せてしまった。」
訥々と語るレクトは、何故か自嘲的だ。
その理由は、すぐに彼自身が述べる。
「とはいえ、拾ったはいいものの……私は、シアノの人間嫌いを増長させる育て方しかできなかった。人間には期待などするなと、そう言い聞かせることしかできなかった。それはやはり、私が今も人間が嫌いだという証拠なのだろう。」
「それは……」
返事に窮しながらも、キリハはなんとか言える言葉を紡ごうと努力する。
「でも、シアノを殺さなかったんでしょ? だったら、きっと大丈夫―――」
「いずれは。」
その時、レクトが声を大きくしてキリハの言葉を遮る。
「いずれはまた、壊してしまうかもしれん。……あの時のように。」
「あの時…?」
首を捻るキリハ。
そんなキリハに、レクトは自嘲的な雰囲気をまとわせたまま笑う。
「そうだな、話しておこうか。お前はこれを聞いても、まだ私の友になりたいと願うか?」
一度呼吸を入れ、彼はとんでもないことを言い放つ。
「三百年前のドラゴン大戦―――それを引き起こしたのは私だ。」
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