竜焔の騎士

時雨青葉

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第5章 人間は嫌い

声をかけてくる者

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「そこの君、ちょっと待ってくれるかな?」




 暗い道を走っていると、ふと声をかけられた。
 そちらを見ると、数少ない街灯の下に傘を差した男性が一人。


 穏やかそうな男性だ。
 でも、彼が浮かべている微笑みはどこか胡散臭くて、一定以上は近づいてはいけないような気がする。


 シアノは警戒心をあらわにし、彼らを威嚇するように身構える。


 彼は見たことがある。
 父が、キリハと同等レベルに警戒していた人物だ。


 そして、彼が腕に抱くドラゴンのぬいぐるみは―――


「別に、そんなに怖がらなくてもいいよ。君に危害を加えようってわけじゃないから。」


「………」


「キリハ君から君のことを聞いて、少しばかり調べさせてもらったよ。できればしかるべき場所で、君を保護させてもらいたいんだけども。」


「保護…?」


 何を言っているのだ。
 意味が分からない。


 少なくともはっきりとしているのは、彼らの要求は飲めないということだけ。


「そんなの、ぼくは知らない。」


 シアノは無感動に告げ、その場を走り去る。
 走り去る、はずだった。




 ―――シアノ。




 頭の中に、そんな声が響くまでは。


 ―――代わっておくれ。私が話をしよう。


 その声は、気が抜けて膝が崩れてしまうほどの安心感をもたらしてくれる。
 不安でたまらなかったからこそ、泣きたくなるくらいに、その声を聞けたことが嬉しかった。


 やっぱり、自分の帰る場所はあそこなのだ。
 そう思うには十分だった。


「分かった。」


 シアノは微かに頷き、静かに目を閉じた。

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