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第2章 垣間見える闇
シアノの食生活
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シアノの衣服を一通り揃えたキリハたちは、昼食を取るためにレストランへと向かった。
選んだのは、半個室が売りのこじゃれたレストラン。
子供を連れて入るのは憚られるような雰囲気だったが、それが逆に好都合だった。
シアノは騒ぐタイプではないので店の空気を壊すこともないし、こういう雰囲気の店ならば、キリハ目当ての野次馬も集まってこないからだ。
「シアノ。帽子取ってもいいよ。」
カーテンをきっちりと閉めたキリハが言うと、途端に帽子を取ったシアノが勢いよく首を振った。
「あはは。やっぱ、邪魔くさかった?」
「うん。ちょっとだけ。」
大きく一呼吸したシアノは、次に帽子をぎゅっと握った。
「……でも、これをつけてると、あんまり嫌な目で見られない。だから、ありがとう。」
少しだけ照れたように言うシアノ。
そんなシアノの反応が嬉しくて、キリハとエリクは互いに笑い合った。
「じゃ、何食べよっか? 好きなのを選んでいいよ。」
エリクがシアノの目の前にメニューを広げる。
すると、シアノはまるで珍しいものを見るかのようにメニューをめくり、やがて不思議そうに小首を傾げた。
「もしかして……こういうの、食べたことない?」
おそるおそるキリハが訊ねると、シアノはこくりと頷いた。
「見たことはあるけど、よく分かんない。」
「じゃあ、今までは何食べてたの? 飲み物とかは?」
「父さんがいつも、肉を焼いてくれるよ。あとは、その辺の木の実とか葉っぱとか。喉が乾いたら、川に行けばいいし。」
「………」
それは、なんとも原始的な食生活だ。
キリハとエリクは顔を見合わせ、次にシアノを見下ろす。
こちらを見上げるシアノは、純な瞳をしている。
決して、嘘をついているわけではないようだ。
「えっ……と…。と、とりあえず何か頼もう。シアノ君は、ハンバーグとジュースでいいかな?」
「そうだね。じゃあ、俺は何かパスタでも頼もうっと。」
「いいね。僕はピザにするよ。せっかくだし、シアノ君に色んなものを食べてもらいたいもんね。」
エリクが机に据えられたベルを鳴らして、店員に注文をする。
しばらくして届いた料理の数々に、シアノはものすごく目を輝かせていた。
しきりに匂いを嗅ぎながらハンバーグにフォークを刺し、思い切った仕草でそれを口の中に放り込む。
何度か咀嚼しているうちに強張っていた表情が和らいでいき、やがてシアノは、机に並んだ料理を一心不乱に食べ始めた。
「本当に、食べたことないんだね。こういうの……」
自分が頼んだものを食べることも忘れ、キリハとエリクはシアノの様子を見つめる。
「うん、そうだね……」
エリクの感想に同意しつつ、キリハは表情を曇らせるしかない。
シアノのことを知れば知るほど、嫌な気持ちが胸の中に溜まっていく。
シアノは今まで、どんな場所でどんな生活をしてきたのだろう。
これまでの孤児院暮らしの中で、複雑な環境から保護されてきた子供たちはたくさん見てきた。
でもシアノは、今まで出会ってきた子供たちとは一線を画しているような気がする。
別に心が荒んでいるとか、何かに傷ついて怯えているとか、そんな印象は受けないけれど……
ただ、人として知っていてもおかしくない何かを知らないような。
そんな風に、空虚な欠如を感じるのだ。
きっと気のせいだ。
こういう子を見たのが初めてだから、ちょっと大袈裟に心配してしまっているだけ。
そう思っていたかったのに……
現実はあまりにも無慈悲に、不安な心を襲う―――
選んだのは、半個室が売りのこじゃれたレストラン。
子供を連れて入るのは憚られるような雰囲気だったが、それが逆に好都合だった。
シアノは騒ぐタイプではないので店の空気を壊すこともないし、こういう雰囲気の店ならば、キリハ目当ての野次馬も集まってこないからだ。
「シアノ。帽子取ってもいいよ。」
カーテンをきっちりと閉めたキリハが言うと、途端に帽子を取ったシアノが勢いよく首を振った。
「あはは。やっぱ、邪魔くさかった?」
「うん。ちょっとだけ。」
大きく一呼吸したシアノは、次に帽子をぎゅっと握った。
「……でも、これをつけてると、あんまり嫌な目で見られない。だから、ありがとう。」
少しだけ照れたように言うシアノ。
そんなシアノの反応が嬉しくて、キリハとエリクは互いに笑い合った。
「じゃ、何食べよっか? 好きなのを選んでいいよ。」
エリクがシアノの目の前にメニューを広げる。
すると、シアノはまるで珍しいものを見るかのようにメニューをめくり、やがて不思議そうに小首を傾げた。
「もしかして……こういうの、食べたことない?」
おそるおそるキリハが訊ねると、シアノはこくりと頷いた。
「見たことはあるけど、よく分かんない。」
「じゃあ、今までは何食べてたの? 飲み物とかは?」
「父さんがいつも、肉を焼いてくれるよ。あとは、その辺の木の実とか葉っぱとか。喉が乾いたら、川に行けばいいし。」
「………」
それは、なんとも原始的な食生活だ。
キリハとエリクは顔を見合わせ、次にシアノを見下ろす。
こちらを見上げるシアノは、純な瞳をしている。
決して、嘘をついているわけではないようだ。
「えっ……と…。と、とりあえず何か頼もう。シアノ君は、ハンバーグとジュースでいいかな?」
「そうだね。じゃあ、俺は何かパスタでも頼もうっと。」
「いいね。僕はピザにするよ。せっかくだし、シアノ君に色んなものを食べてもらいたいもんね。」
エリクが机に据えられたベルを鳴らして、店員に注文をする。
しばらくして届いた料理の数々に、シアノはものすごく目を輝かせていた。
しきりに匂いを嗅ぎながらハンバーグにフォークを刺し、思い切った仕草でそれを口の中に放り込む。
何度か咀嚼しているうちに強張っていた表情が和らいでいき、やがてシアノは、机に並んだ料理を一心不乱に食べ始めた。
「本当に、食べたことないんだね。こういうの……」
自分が頼んだものを食べることも忘れ、キリハとエリクはシアノの様子を見つめる。
「うん、そうだね……」
エリクの感想に同意しつつ、キリハは表情を曇らせるしかない。
シアノのことを知れば知るほど、嫌な気持ちが胸の中に溜まっていく。
シアノは今まで、どんな場所でどんな生活をしてきたのだろう。
これまでの孤児院暮らしの中で、複雑な環境から保護されてきた子供たちはたくさん見てきた。
でもシアノは、今まで出会ってきた子供たちとは一線を画しているような気がする。
別に心が荒んでいるとか、何かに傷ついて怯えているとか、そんな印象は受けないけれど……
ただ、人として知っていてもおかしくない何かを知らないような。
そんな風に、空虚な欠如を感じるのだ。
きっと気のせいだ。
こういう子を見たのが初めてだから、ちょっと大袈裟に心配してしまっているだけ。
そう思っていたかったのに……
現実はあまりにも無慈悲に、不安な心を襲う―――
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