竜焔の騎士

時雨青葉

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第1章 白い子供

呼び出された助っ人

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「―――で? なんでオレが呼ばれるんだよ。」




 焦ったキリハに電話で呼び出されたルカは、開口一番にドスのいた口調で文句を放った。
 そんなルカに、眉をハの字にしたキリハは安堵の息を吐く。


「だって……ディア兄ちゃんたちは忙しいし、サーシャやカレンには迷惑かけられないし、頼れるのっていったら、ルカしかいなかったんだもん。」


「おい、てめぇ。一度、オレへの認識を改めろ。」


 ルカは心底不愉快そうだ。
 でも、これがルカの普通なのだと知っている今は、特に不快にもならない反応である。


 この表情が、彼の本当の心を表しているわけではないのだ。
 その証拠に。


「そんなことを言いながらも、ちゃんと来てくれるルカ好き。」
「黙れ。」


 キリハが素直にそう告げると、ルカは途端に頬を赤らめてそっぽを向いた。
 そして照れ隠しなのか、すぐに溜め息をついて髪の毛をぐるぐると掻き回す。


「あーもー…。来た後で文句言っても、しゃあないな。お前はまた、なんつー拾いもんをしてんだよ。」


 キリハの腕に抱かれた少年を見やり、ルカはしかめっ面でその場にしゃがんだ。


「こいつ、誰?」
「それが、まだ分かんなくて…。話を聞く前に倒れちゃったもんだから。」
「マジかよ……」


 ルカはがっくりとうなだれる。


 この大馬鹿野郎。
 そんな心の声が聞こえてくるようだった。


 さすがにルカも困っている様子。
 しかし彼は一度大きく息をつくと、真面目な表情で顔を上げた。


「熱か? 怪我か?」


 少年の前髪を掻き上げ、ルカはその顔色をうかがう。


「熱は、ないみたいだけど……」
「今はな。こんなに体が冷えてりゃ、そりゃ倒れるわ。」


「うん。だからせめて、どこかあったかい場所で着替えさせてあげたいんだけど、宮殿って関係者以外入れないじゃん? それに、ほら……」


 キリハは目を伏せる。


「この子の髪の色、珍しいでしょ。目の色も真っ赤でさ……」
「!!」


 それを聞いたルカが、瞬く間に顔色を変えた。


「なんか、普通の人には助けてって言いにくいっていうか……」
「………」


 ルカはキリハが言いたいことを察し、眉根を寄せて地面を睨んだ。


「…………行くぞ。」


 唐突に言い、ルカはその場から立ち上がる。


「え…? 行くって、どこに?」
「兄さんが住んでるマンション。」
「ええっ!? エリクさんのとこに行くの!?」


 ルカが告げた行き先に、キリハは素っ頓狂な声をあげてしまった。


「仕方ねぇだろ。オレが宮殿以外に行けるとこなんて、実家か兄さんだけだぞ。実家にはお袋がいるから説明めんどくさいし、行くなら兄さんのとこしかねぇよ。どうせ仕事で留守だろうし、部屋だけ勝手に貸してもらう。あの能天気兄貴なら、特に気にしねぇだろ。」


 すたすたと先を進んでいくルカ。


 エリクに迷惑をかけることに少し躊躇ちゅうちょしてしまったが、今はこの少年の服をどうにかするのが先決だ。


(エリクさん。お部屋、少しお借りします。)


 心の中で一礼し、キリハは少年をおぶってルカの後を追うことにした。

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