244 / 598
第3章 カリスマ王の猛進
魔王様、ご満悦。
しおりを挟む
とある苦い確信を胸に、幹部二人を呼んだディアラント。
その呼びかけから数秒後、すぐにドアが開いた。
「ディア……頼むから、呼ぶならもう少し早くしてくれ。ジョーが活き活きしすぎて、マジで怖かったじゃねぇか。」
ドアの向こうから顔を覗かせたミゲルは、気疲れした息をつく。
さらにその奥から。
「えー。怖いだなんて失礼な。僕は、自分の仕事をしてただけなのに。」
ちょっぴり不満そうな、そしてその不満を遥かに上回る上機嫌さを滲ませたジョーの声が聞こえてくる。
「盗み聞きさせるとは、無粋だな。」
「いきなり押しかけてきておいて、無茶言わないでくださいよ。出入口はそこにしかないんですから。それに、奥の部屋に誰かがいることくらい、気付いてたでしょうが。」
「まあな。」
ノアは当然だと言わんばかりに頷いた。
それに対して、ディアラントは肩を落とすしかない。
ノアが執務室に飛び込んできた時は、すっかり帰りが遅くなってしまった自分を待ってくれていたミゲルたちと、明日以降のスケジュール調整を行っていたところだったのだ。
さっさとノアに自室へ帰ってほしかったのは、この二人を一刻も早く休ませたかったという理由が大きい。
結局話が長引いてしまって、二人には申し訳ないことをした。
しかしノアの発言を受けた後では、やはり待機していてもらってよかったと思わないでもない。
「ノア様。あくまでも、親切心で言っときますからね? 下手にうちのセキュリティに手を出すと、そこにいる魔王様に情報を全部搾り取られますよ。」
「何?」
ノアはピクリと片眉を上げて、ソファーから身を起こす。
「魔王って……ディア、普段から僕のことをそんな風に思ってたの?」
部屋から出てミゲルの隣に並んだジョーは、冗談めかした口調でディアラントに問う。
それに、ディアラントは大きく頷いた。
「思ってますよ。むしろ魔王という言葉ですら、先輩の脅威を表すには足りないと思ってるくらいです。」
「そら違いねえ。」
「もう。二人揃って、お客様の前であんまり本音を零さないでくれる?」
ディアラントだけではなくミゲルにもしみじみと言われ、ジョーはその顔に苦笑を浮かべた。
「どうせウルドさんに色々と調べさせてるでしょうから、オレからは手短に紹介します。うちで副隊長を務めてるミゲル先輩と、参謀代表を務めてるジョー先輩です。」
ディアラントの言葉に合わせ、ミゲルとジョーはノアに丁寧に頭を下げた。
「ちなみに、ノア様が褒めていたスケジュール管理と隊員の教育指導はミゲル先輩が、セキュリティ管理はジョー先輩がほとんど一人でやっています。」
「なんと…!!」
さすがに驚いたらしいノアが、口をあんぐりと開ける。
さて、本題はここから。
「ジョー先輩。」
ディアラントは、ミゲルの隣でやたらとにこにこしているジョーを見やる。
「どこまで掴んだんです?」
そこまでご機嫌なのだから、収穫ゼロというわけではあるまい。
「それが、期待してたよりはって感じかな。」
わざとらしく肩をすくめるジョー。
「もう少し粘ってくれれば、いい感じにウイルスを忍び込ませられたのに、ちょっと残念。せっかく、頑張れば第一層には辿り着けるくらいに甘くしておいたのになぁ。」
やはりいつものように、攻撃を逆手に取る策を講じていたか。
過去にも彼はこうして、セキュリティを破ろうとした人間の情報をかすめ取り、多くの人々を未然に黙らせている。
本当に、ウルドが止めてくれて助かった。
溜め息をつくディアラントに、ジョーがさらに続けた。
「あ、そうそう。キリハ君がよく行ってるライザ海岸近くに、今は使ってない空軍施設跡地があるよね?」
「え、ええ…。ありましたけど。」
答えながらも、ディアラントは今一つピンとこない顔。
しかしその顔も、次のジョーの発言で一変する。
「あそこ、ターニャ様の許可を取ってノア様に貸してあげて。いくらそれ専用に造ってあるとはいえ、ずっと貨物機の中じゃ、ルーノって子が窮屈すぎて可哀想なんじゃないかな? ついでにその間だけ、レティシアとロイリアもそこに放してあげれば? 元々軍事基地ってことで周辺に人も住んでないから、ドラコンの管理場所として目はつけてたんだ。監視システムも、ちょうど復旧が終わったところだしね。」
「なっ、何故それを!?」
「ストーップ! ノア様、ルーノ連れてきてるの!?」
「今はそれどころでは―――」
「そう言うってことは、連れてきてるのね!?」
明らかに狼狽えるノアに、ディアラントはまた頭を抱えた。
セレニアに来るつもりがあるなら、ドラゴン関連の話題には気をつけろと、あれほど言っておいたのに。
自重するどころか、大爆弾を連れてくるとは。
ミゲルは明後日の方向を見つめて、部外者を装っている。
おそらくは奥で、先に話を聞いていたのだろう。
この話題に関しては、一切突っ込む気はないようだ。
「分かりました。すぐに手配します。」
ともかく、変に騒がれる前に、確実に管理できる場所へルーノを移動させた方がいい。
ディアラントはパソコンの画面を立ち上げ、朝一で話ができるようにターニャへと報告のメールを打ち始めた。
その呼びかけから数秒後、すぐにドアが開いた。
「ディア……頼むから、呼ぶならもう少し早くしてくれ。ジョーが活き活きしすぎて、マジで怖かったじゃねぇか。」
ドアの向こうから顔を覗かせたミゲルは、気疲れした息をつく。
さらにその奥から。
「えー。怖いだなんて失礼な。僕は、自分の仕事をしてただけなのに。」
ちょっぴり不満そうな、そしてその不満を遥かに上回る上機嫌さを滲ませたジョーの声が聞こえてくる。
「盗み聞きさせるとは、無粋だな。」
「いきなり押しかけてきておいて、無茶言わないでくださいよ。出入口はそこにしかないんですから。それに、奥の部屋に誰かがいることくらい、気付いてたでしょうが。」
「まあな。」
ノアは当然だと言わんばかりに頷いた。
それに対して、ディアラントは肩を落とすしかない。
ノアが執務室に飛び込んできた時は、すっかり帰りが遅くなってしまった自分を待ってくれていたミゲルたちと、明日以降のスケジュール調整を行っていたところだったのだ。
さっさとノアに自室へ帰ってほしかったのは、この二人を一刻も早く休ませたかったという理由が大きい。
結局話が長引いてしまって、二人には申し訳ないことをした。
しかしノアの発言を受けた後では、やはり待機していてもらってよかったと思わないでもない。
「ノア様。あくまでも、親切心で言っときますからね? 下手にうちのセキュリティに手を出すと、そこにいる魔王様に情報を全部搾り取られますよ。」
「何?」
ノアはピクリと片眉を上げて、ソファーから身を起こす。
「魔王って……ディア、普段から僕のことをそんな風に思ってたの?」
部屋から出てミゲルの隣に並んだジョーは、冗談めかした口調でディアラントに問う。
それに、ディアラントは大きく頷いた。
「思ってますよ。むしろ魔王という言葉ですら、先輩の脅威を表すには足りないと思ってるくらいです。」
「そら違いねえ。」
「もう。二人揃って、お客様の前であんまり本音を零さないでくれる?」
ディアラントだけではなくミゲルにもしみじみと言われ、ジョーはその顔に苦笑を浮かべた。
「どうせウルドさんに色々と調べさせてるでしょうから、オレからは手短に紹介します。うちで副隊長を務めてるミゲル先輩と、参謀代表を務めてるジョー先輩です。」
ディアラントの言葉に合わせ、ミゲルとジョーはノアに丁寧に頭を下げた。
「ちなみに、ノア様が褒めていたスケジュール管理と隊員の教育指導はミゲル先輩が、セキュリティ管理はジョー先輩がほとんど一人でやっています。」
「なんと…!!」
さすがに驚いたらしいノアが、口をあんぐりと開ける。
さて、本題はここから。
「ジョー先輩。」
ディアラントは、ミゲルの隣でやたらとにこにこしているジョーを見やる。
「どこまで掴んだんです?」
そこまでご機嫌なのだから、収穫ゼロというわけではあるまい。
「それが、期待してたよりはって感じかな。」
わざとらしく肩をすくめるジョー。
「もう少し粘ってくれれば、いい感じにウイルスを忍び込ませられたのに、ちょっと残念。せっかく、頑張れば第一層には辿り着けるくらいに甘くしておいたのになぁ。」
やはりいつものように、攻撃を逆手に取る策を講じていたか。
過去にも彼はこうして、セキュリティを破ろうとした人間の情報をかすめ取り、多くの人々を未然に黙らせている。
本当に、ウルドが止めてくれて助かった。
溜め息をつくディアラントに、ジョーがさらに続けた。
「あ、そうそう。キリハ君がよく行ってるライザ海岸近くに、今は使ってない空軍施設跡地があるよね?」
「え、ええ…。ありましたけど。」
答えながらも、ディアラントは今一つピンとこない顔。
しかしその顔も、次のジョーの発言で一変する。
「あそこ、ターニャ様の許可を取ってノア様に貸してあげて。いくらそれ専用に造ってあるとはいえ、ずっと貨物機の中じゃ、ルーノって子が窮屈すぎて可哀想なんじゃないかな? ついでにその間だけ、レティシアとロイリアもそこに放してあげれば? 元々軍事基地ってことで周辺に人も住んでないから、ドラコンの管理場所として目はつけてたんだ。監視システムも、ちょうど復旧が終わったところだしね。」
「なっ、何故それを!?」
「ストーップ! ノア様、ルーノ連れてきてるの!?」
「今はそれどころでは―――」
「そう言うってことは、連れてきてるのね!?」
明らかに狼狽えるノアに、ディアラントはまた頭を抱えた。
セレニアに来るつもりがあるなら、ドラゴン関連の話題には気をつけろと、あれほど言っておいたのに。
自重するどころか、大爆弾を連れてくるとは。
ミゲルは明後日の方向を見つめて、部外者を装っている。
おそらくは奥で、先に話を聞いていたのだろう。
この話題に関しては、一切突っ込む気はないようだ。
「分かりました。すぐに手配します。」
ともかく、変に騒がれる前に、確実に管理できる場所へルーノを移動させた方がいい。
ディアラントはパソコンの画面を立ち上げ、朝一で話ができるようにターニャへと報告のメールを打ち始めた。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました
ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】
ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です
※自筆挿絵要注意⭐
表紙はhake様に頂いたファンアートです
(Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco
異世界召喚などというファンタジーな経験しました。
でも、間違いだったようです。
それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。
誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!?
あまりのひどい仕打ち!
私はどうしたらいいの……!?
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる