101 / 598
【第3部】夏の嵐は師匠と共に~プロローグ~
故郷に降り立つ
しおりを挟む生産職なみゆきちだけど、実はちょー強い。針と糸を使わせたら右に出るものはいないのだ。ほら、某仕事人にも糸使いいるじゃん? あんな感じー。暗殺者向きなんだよねー。
打って変わってぼく。ちょー弱い。付加術で自分を強化したって、元がアレだからそんなに強くならない。だから役に立つため、他人のサポート特化できたえてきた。ので、ぼく自身はちょー弱い。大事なことなので二回言いました。
で、先生。ちょー強いけど詠唱とか溜めがあるので完全に後衛。いわゆる火力魔術師だねー。回復もできるけどやっぱ溜めが――以下略。しかも賢者って本当は大規模戦闘に適してる職業らしいよ。本当はこんな室内で戦う人じゃないのだ。……どうして攻城戦パーティーに戦略兵器を混ぜたし、アルスター。
というわけで、このメンツで戦闘に突入しちゃうと、必然的にみゆきちが前衛になっちゃう。
――何でぼくがこんな思考をしているかというと、ぶっちゃけこのメンツで戦闘に突入しちゃったからだ。
転移の罠が発動してとっさに手を繋げたのはぼくとみゆきちと先生だけだったみたいで、気付くと中庭。そこには貴族の集団が、お待ちしておりましたとばかりに襲いかかって来たんだよね。
フツー前口上とかあるでしょ? 今回、全くそんなのナシ。余裕なさすぎ!
「樹ー、バフ超大盛りマシマシでー」
「はいよー。『攻アップ』に『防アップ』に『すばやさアップ』入りましたー」
ちなみに『かしこさアップ』はかけない。バーサーカーには賢さなど必要ないのだ。本能で殺るのみ。……あ、これ言ったらみゆきちにコロコロされてしまうのでナイショで。
次々とみゆきちの糸で拘束されていく貴族っぽい人達。ちょろい。……と、思いきや。
「装飾師などに遅れをとるな! こちらの方が人数で勝っているのだから囲い込め!!」
ヒゲ面でひときわ豪華な衣装のオジさんが、不穏な内容をわめき散らしている。むむむっ、これはさすがのみゆきちも多勢に無勢かなー?
「せんせーには『詠唱速度アップ』盛っておくんで、よろですー」
「はーい。それじゃあ行きますよ! 『|吹雪よ(テンペスタ・ディ・ネーヴェ)』!」
先生の魔術で、足元から凍りついて行く貴族っぽい人達。頭だけは凍ってないところをみると、加減はしてるんだろうけど流石は戦略兵器級。こんな城の中庭なんかあっという間に氷漬け。めっちゃ寒いです。ぶるぶる。
「みゆきちー、何か羽織るもの作ってよ」
「材料ないから無理」
素気無く断られちゃった。ぼくらアイテムボックス持ちじゃないからねぇ。シータちゃんとか、四次元ポケット持ってる友瀬ちゃんが羨ましい。
「……ですよねー」
逆に言えば、材料あったら作ってくれるって事だ。みゆきちってば優しー。
「ええっと……先生、張り切りすぎちゃったかしら……?」
「いえいえ。丁度いい感じでっす」
「頭だけ凍らせてないとか、先生器用すぎるよ!」
ぼくとみゆきちの言葉に照れる先生。くるりと貴族たちの方に向き直って、口を開いた。
「――では、あなた方にお聞きしたいのですが……アルスター王は一体何を企んでいるのですか?」
先生の言葉で初めて『ああ、あの王さま何か企んでるんだー?』と気付いたぼく。まあ、城の入り口が意味ありげに開けっ放しだったし、入り口でわざわざ待ってたしねー。挙句に転移の罠で分断。他に何かあってもおかしくないかあ。
「しょ、正直に答えるとでも……?」
寒さに震えつつも気丈に振る舞う貴族の人。おう、これが貴族の誇りってやつですね。プライド高いだけともいうけど。でも氷漬けにされてる状態でこんな態度とられてもなぁ……。
「……まあ良いでしょう。しらみつぶしに城を探索すれば良いだけの話ですし」
早々に追及を諦める先生。先生はあれだね、RPGとかだとダンジョンの宝箱全部開けてからボスに挑むタイプ。
「じゃあ、行きましょっか先生! 樹も早くいくわよー」
みゆきちは元気いっぱいだなあ。ぼくは寒くて動きたくないや。できれば暖かい布団がほしい。あ、でもここから離れたら暖かくなるかー。早よ行こう。
……それにしても最近の女の人ってホント強いよねー。守る必要とか全然ない。むしろ守ってくださいって感じ。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説

老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる
八神 凪
ファンタジー
世界には多種多様な種族が存在する。
人間、獣人、エルフにドワーフなどだ。
その中でも最強とされるドラゴンも輪の中に居る。
最強でも最弱でも、共通して言えることは歳を取れば老いるという点である。
この物語は老いたドラゴンが集落から追い出されるところから始まる。
そして辿り着いた先で、爺さんドラゴンは人間の赤子を拾うのだった。
それはとんでもないことの幕開けでも、あった――

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる