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3.はあー。ため息
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「はあー。」
思わず、職員室で出てしまった。
「どうしたの?ため息なんかついて」
「うん」
彼女は池田直美。養成所時代の私の同期だ。私の苗字が飯塚、彼女の苗字が池田。レッスン第一目にアイウエオ順で隣に座っていたのがきっかけで、彼女から話しかけてきたのがきっかけだ。
地方から出てきて誰も知り合いがいなかった私は、嬉しかったのを覚えている。初日を終えてドキドキの授業から解放されてホットした後、直美と一緒に帰り駅前のカフェでずーっと話していた。この直美とはつかず離れずの関係が心地よく、10年以上経っても仕事、アニメ、声優、映画、プライベートと色々ファミレス、飲み屋なので話すのが本当に楽しい。
デビューもアニメのガヤで一緒だったし、こうして同じ養成所の講師もやっている。
「実はさー、先週から台本渡して今日から読み合わせなんだけど、やりたい人って言っても誰も手を上げなくてさー」
「よくあることじゃん」
「それで、つい怒っちゃった」
「別にいいじゃん、当たり前だよ」
「怒るってつかれるよ」
「まあね。」
勿論、指名して台本を読ませることは出来る。でも、自分から率先して手を挙げていかなければ、それくらいの積極性がなければ声優としてやっていくのは相当厳しい。それで、何で手を上げないのよ!と怒ってしまったのである。あー怒るってパワー使うよ・・・。
でも・・・そういう私も人のこと言えないんだけど。
養成所の生徒として通ってたころ、同じような・・・いや、ほぼ同じシチュエーションだが、私も含めて誰も手を上げず先生を怒らせたことがあった。何で手を挙げなかったかと聞かれれば、いやはや何とも言えないんだけど。 その時、先生はある一人の男子生徒に
「山本、お前なんで手を挙げなかったんだ?」
と聞いた。すると山本君は
「いや、調子悪くて上手く出来ないと思ったからです」
「俺も舞台やったり役者やってたけど、100%完璧に出来たことなんてねーよ。」
そして先生はちょっと考えこう切り出した。
「俺が一番好きなアニメは銀河鉄道999なんだけど、メーテルがこう言ってたんだ。男は負けると分かってても戦いに行かなければならないのよ」(このセリフはうろ覚えなので、違ってたらご免なさい。)
ほおーと私はそれを聞いていた。
それ以来、私はとにかく手をあげることはやっていた。いつも1番に手をあげる木下さんという人がいて、今日こそは私が1番に手を挙げるぞ!と意気込んではいたが、私はいつも3番目から5番目辺りに手を挙げていた。
結局は声優の養成所とは自分との闘いなのである。
さて、来週の授業はどうなることやら・・・。
思わず、職員室で出てしまった。
「どうしたの?ため息なんかついて」
「うん」
彼女は池田直美。養成所時代の私の同期だ。私の苗字が飯塚、彼女の苗字が池田。レッスン第一目にアイウエオ順で隣に座っていたのがきっかけで、彼女から話しかけてきたのがきっかけだ。
地方から出てきて誰も知り合いがいなかった私は、嬉しかったのを覚えている。初日を終えてドキドキの授業から解放されてホットした後、直美と一緒に帰り駅前のカフェでずーっと話していた。この直美とはつかず離れずの関係が心地よく、10年以上経っても仕事、アニメ、声優、映画、プライベートと色々ファミレス、飲み屋なので話すのが本当に楽しい。
デビューもアニメのガヤで一緒だったし、こうして同じ養成所の講師もやっている。
「実はさー、先週から台本渡して今日から読み合わせなんだけど、やりたい人って言っても誰も手を上げなくてさー」
「よくあることじゃん」
「それで、つい怒っちゃった」
「別にいいじゃん、当たり前だよ」
「怒るってつかれるよ」
「まあね。」
勿論、指名して台本を読ませることは出来る。でも、自分から率先して手を挙げていかなければ、それくらいの積極性がなければ声優としてやっていくのは相当厳しい。それで、何で手を上げないのよ!と怒ってしまったのである。あー怒るってパワー使うよ・・・。
でも・・・そういう私も人のこと言えないんだけど。
養成所の生徒として通ってたころ、同じような・・・いや、ほぼ同じシチュエーションだが、私も含めて誰も手を上げず先生を怒らせたことがあった。何で手を挙げなかったかと聞かれれば、いやはや何とも言えないんだけど。 その時、先生はある一人の男子生徒に
「山本、お前なんで手を挙げなかったんだ?」
と聞いた。すると山本君は
「いや、調子悪くて上手く出来ないと思ったからです」
「俺も舞台やったり役者やってたけど、100%完璧に出来たことなんてねーよ。」
そして先生はちょっと考えこう切り出した。
「俺が一番好きなアニメは銀河鉄道999なんだけど、メーテルがこう言ってたんだ。男は負けると分かってても戦いに行かなければならないのよ」(このセリフはうろ覚えなので、違ってたらご免なさい。)
ほおーと私はそれを聞いていた。
それ以来、私はとにかく手をあげることはやっていた。いつも1番に手をあげる木下さんという人がいて、今日こそは私が1番に手を挙げるぞ!と意気込んではいたが、私はいつも3番目から5番目辺りに手を挙げていた。
結局は声優の養成所とは自分との闘いなのである。
さて、来週の授業はどうなることやら・・・。
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