9 / 9
第7話 本妖精
しおりを挟む第7話
本妖精
「ふふっ」
ガタガタ ガタガタ ガタッ
ポンッ
「!!!」
煙とともに一人の少女が現れた。
「ふっふっふっ、はーはっは~」
「わしの名はファリン、本の妖精みたいなものじゃ」
「まぁ座れ」
「うん」
それから正座をしながら淡々と説教混じりの昔話をしてくれた。
その話によるとこの少女は僕の先祖、つまり伝説の旅人が苗を成長させるために本に宿っていたらしい。ファリンには苗の情報と先祖の記憶が入っているそうだ。そして、外が楽しそうだからと出てきたらしい。
「祭りじゃ!祭りじゃ!」
「盛り上がっているところ申し訳ないが、祭りは終わった」
「なんじゃと!」
僕が祭りを見回っていたのを見ていたようだ。
「あの楽しいことはもうないのか……」
「…それなら一緒に遊ぼうか?」
「いいのか?」
「もちろん!」
「その前に」
「とりあえず、家族に話さないとな…」
トットット
階段を降り、両親にファリンを紹介した。そして、今まで隠していた、本の事を話した。
「そうだったのか…」
「…そうか…あの魔物を倒したのは…頑張ったな」
「うん」
「俺はとりあえず、村長と話をしてくる」
「本の事と新樹のこと、魔物のことを話さないとな」
「それと、今度は決して一人で行くな、俺たちも力になる」
「ありがとう」
「ファリンちゃん、歓迎するわ」
「うむ、すまないのじゃ」
「だれ~?」
妹が、眠そうに起きてきた。
「こちらファリン」
「ファリンじゃ、これからよろしく頼む」
「え!」
朝食のあと、僕と妹とファリンとで遊ぶことにした。途中でラーナも加わって、夕方まで遊んだ。
僕は夜、ファリンに尋ねた。
「楽しかったようだね」
「そりゃそうじゃ」
「長年、わしは封印ではなく隠れておった」
「こんなに楽しいのは久しぶりじゃ」
「そうか、それはよかった…」
「一つ聞いていいか」
「何じゃ」
「なぜ君は、僕をこの世界に連れてきたんだ」
「やっぱり、気になるか」
「そりゃそうだ、僕は普通の高校生だぞ」
「わしには使命がある」
「使命?」
「そうだ、おぬしが育てた新樹、それを立派な木にするという大切な」
「おぬしはわしが選んだ」
「えっ」
「まぁ、理由は…感じゃ」
「なぜそこまでしてあの苗を育てるんだ」
「それは言えない」
「?」
「でもの、大切なことなんじゃ」
「なぜ、君はそんなに知っているの?」
「どういうことじゃ」
「僕の祖先カリンさんはなぜ苗の成長の仕方を知っているの?」
「昔、同じようにしたからじゃ」
「同じように?」
「そうじゃ」
「カリンはあの苗を持ち出し、この村に植えた」
「あの苗は昔の苗そのもの」
「!」
「あの苗のことなら手に取るようにわかる」
「どういうこと?」
「まぁ、今はここまでじゃ」
「ともかく、一度育てたカリンはその難しさ、その危うさを知った」
「その対策としてわしが生まれたんじゃ」
「まぁ今後もわしがおるから心配するな」
「そこまで役に立ってなかったような」
「失礼な!わしのサポートは完璧だったであろう」
「うーん」
翌朝
「起きるのじゃー」ド-ン
「うわぁ!」
僕は腹部の痛みで飛び起きた。
「次じゃ次が来たぞ!!起きよ」
「え!」
「では」
ファリンはスッと真剣になって続けた。
「土の竜が闊歩する
立ち向かわなければ過ぎるであろう
褐色の光は隠されている」
「土の竜?」
「土の竜が動くのは夜じゃ」
「そうか、というかもっとわかりやすく言ってくれ」
「わがまま言うでない、最初から答えを言ったところで面白くないではないか!!!」
「そういうもんか?」
「そうじゃ!」
第7話、お読みいただきありがとうございます
後編1回目、いかがでしたか?初登場のファリン、悩みました。最初は小さいマスコットのような生物にしようとしていましたが、ぴったり合う動物のモチーフがなく、最終的には人に落ち着きました。また、予定ではファリンではなく名前をカリンにして、昔のカリンとは別物、とする予定でした。しかし、わかりにくさやわざわざ自分の名前をつけるか?と思ったのでファリンとしました。妹と幼馴染であるラーナは一度遊んだだけですがもう仲良しのようです。また、ファリンのことは本の妖精と言って、二人はすぐに納得し、それからは何も聞かれなかったのを主人公は不思議がっているようです。
ご感想、お気に入り登録をいただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします。
1
お気に入りに追加
8
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
クズ聖王家から逃れて、自由に生きるぞ!
梨香
ファンタジー
貧しい修道女見習いのサーシャは、実は聖王(クズ)の王女だったみたい。私は、何故かサーシャの中で眠っていたんだけど、クズの兄王子に犯されそうになったサーシャは半分凍った湖に転落して、天に登っちゃった。
凍える湖で覚醒した私は、そこでこの世界の|女神様《クレマンティア》に頼み事をされる。
つまり、サーシャ《聖女》の子孫を残して欲しいそうだ。冗談じゃないよ! 腹が立つけど、このままでは隣国の色欲王に嫁がされてしまう。こうなったら、何かチートな能力を貰って、クズ聖王家から逃れて、自由に生きよう! 子どもは……後々考えたら良いよね?

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる