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策謀
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神炎騎士団のいる高台を睨め着ける男がいた。
「おいっ!斥候はどうした!!!」
昼間に差し掛かる頃、苛ついた声で部下に怒鳴り着けた。
「す、すみません!警備が厳しくて近付くと迎撃されて、詳しい情報が手に入っておりません!」
チッと舌を打ち、椅子にドカッと座った。
「どうなっていやがる?なぜ攻めてこない?」
敵の思惑が掴めず、周辺の地図を眺めて独り言を呟いた。
「ガルム様、詳しい情報は掴めておりませんが、奴らが攻城兵器を作っていると情報が入りました!」
後からやって来た伝令が伝えた。
ガルムはこの砦の最高責任者であった。
【主】が留守の間、しっかり守るよう言われていたのだ。
そう、本当の【主】はいないのである。
「バカか?俺達は外に出ているんだぞ!攻城兵器など、なんの役にも立たん!フェイクに決まっている!」
「すみませんでした!」
伝令は八つ当たりを恐れて逃げていった。
「このまま夜まで待つか?それとも今のうちに攻めるべきか…………」
このままでは主君に顔向けできない。
ガルムは整列させていた各部隊長を呼び出した。すぐに各部隊長は外に設置された会議室の椅子へ座った。
「神炎騎士団が攻めてこない。誰かヤツらの狙いがわかるか?」
ガルムに呼び出された部隊長達は皆、同じ事を考えていた。
「儂らも気になっていた。いつもの奴らなら突撃してきている頃だ」
「ああ、何かを作っているようだが、攻城兵器はフェイクとして、何をやっているのかわからんな………」
ガルムはここにいる者達に尋ねた。
「考えてもわからん事は置いておこう。俺が決めたいのは、今すぐ攻めるべきか、1日様子を見るかだが………皆の意見が聞きたい」
部隊長達はそれぞれ意見を言った。
「儂は攻めるに一票じゃ!今ならヤツらは何かの工作をしているため、全力は出せんとみた。一気にやれるじゃろう!」
「俺も待つのは性に合わない。攻めようぜ!」
ふむ、思慮深い老師と直感で動く部隊長が攻める方に意見を向けたか。ならば、このまま攻めてみるか!
ガルムの意思も攻める側に傾いた時、別の部隊長が意見を述べた。
「攻める事に異議はないが、【主君】様は大丈夫なのか?作戦では2~3日後にやって来るのだろう?それまで戦線を維持せよと厳命されていたはずだ」
ガタッと椅子を蹴って立ち上がった者がいた。
「貴様!我々が負けると言うのか!?」
感情的になって胸ぐらを掴むが──
「そうは言っていない!だが、主君様がやって来るまでに、まとまった戦力が残っていなければ主君様が危ないと言っているのだ!今の我々に主君様がいなくなれば、どうなると思っているのだ!!!」
この者の言う事も一理あった。
現在、この蛮族と言われている国の主は、自ら危ない橋を渡る危険な極秘作戦の為に国を空けていた。
故に、民達の支持や忠誠心が高いのである。
だからこそ、『主』を危険な目に合わせる訳にはいかないと言う思考に行き着くのだ。
「確かにそうだ。本来であれば外で討ってでると思わせて、守勢に廻る予定だった。しかし、いつの間にかこちらから討ってでると言う思考に誘導されていたな」
総指揮官のガルムは、ハッと気付いた。
「ガルム殿!」
「………皆の気持ちはわかっている。1日だけ様子を見る。動かなければこちらから攻める!我々は負ける訳にはいかないのだ!万が一、敵が策を講じても粉砕してくれる!こちらも高台を攻める為の準備をしておくぞ!」
「「「了解!!!!」」」
こうして蛮族の軍も偵察を増やして様子を見る事で落ち着いた。
奇しくもお互いに丸1日を戦の準備する時間になるのだった。
「おいっ!斥候はどうした!!!」
昼間に差し掛かる頃、苛ついた声で部下に怒鳴り着けた。
「す、すみません!警備が厳しくて近付くと迎撃されて、詳しい情報が手に入っておりません!」
チッと舌を打ち、椅子にドカッと座った。
「どうなっていやがる?なぜ攻めてこない?」
敵の思惑が掴めず、周辺の地図を眺めて独り言を呟いた。
「ガルム様、詳しい情報は掴めておりませんが、奴らが攻城兵器を作っていると情報が入りました!」
後からやって来た伝令が伝えた。
ガルムはこの砦の最高責任者であった。
【主】が留守の間、しっかり守るよう言われていたのだ。
そう、本当の【主】はいないのである。
「バカか?俺達は外に出ているんだぞ!攻城兵器など、なんの役にも立たん!フェイクに決まっている!」
「すみませんでした!」
伝令は八つ当たりを恐れて逃げていった。
「このまま夜まで待つか?それとも今のうちに攻めるべきか…………」
このままでは主君に顔向けできない。
ガルムは整列させていた各部隊長を呼び出した。すぐに各部隊長は外に設置された会議室の椅子へ座った。
「神炎騎士団が攻めてこない。誰かヤツらの狙いがわかるか?」
ガルムに呼び出された部隊長達は皆、同じ事を考えていた。
「儂らも気になっていた。いつもの奴らなら突撃してきている頃だ」
「ああ、何かを作っているようだが、攻城兵器はフェイクとして、何をやっているのかわからんな………」
ガルムはここにいる者達に尋ねた。
「考えてもわからん事は置いておこう。俺が決めたいのは、今すぐ攻めるべきか、1日様子を見るかだが………皆の意見が聞きたい」
部隊長達はそれぞれ意見を言った。
「儂は攻めるに一票じゃ!今ならヤツらは何かの工作をしているため、全力は出せんとみた。一気にやれるじゃろう!」
「俺も待つのは性に合わない。攻めようぜ!」
ふむ、思慮深い老師と直感で動く部隊長が攻める方に意見を向けたか。ならば、このまま攻めてみるか!
ガルムの意思も攻める側に傾いた時、別の部隊長が意見を述べた。
「攻める事に異議はないが、【主君】様は大丈夫なのか?作戦では2~3日後にやって来るのだろう?それまで戦線を維持せよと厳命されていたはずだ」
ガタッと椅子を蹴って立ち上がった者がいた。
「貴様!我々が負けると言うのか!?」
感情的になって胸ぐらを掴むが──
「そうは言っていない!だが、主君様がやって来るまでに、まとまった戦力が残っていなければ主君様が危ないと言っているのだ!今の我々に主君様がいなくなれば、どうなると思っているのだ!!!」
この者の言う事も一理あった。
現在、この蛮族と言われている国の主は、自ら危ない橋を渡る危険な極秘作戦の為に国を空けていた。
故に、民達の支持や忠誠心が高いのである。
だからこそ、『主』を危険な目に合わせる訳にはいかないと言う思考に行き着くのだ。
「確かにそうだ。本来であれば外で討ってでると思わせて、守勢に廻る予定だった。しかし、いつの間にかこちらから討ってでると言う思考に誘導されていたな」
総指揮官のガルムは、ハッと気付いた。
「ガルム殿!」
「………皆の気持ちはわかっている。1日だけ様子を見る。動かなければこちらから攻める!我々は負ける訳にはいかないのだ!万が一、敵が策を講じても粉砕してくれる!こちらも高台を攻める為の準備をしておくぞ!」
「「「了解!!!!」」」
こうして蛮族の軍も偵察を増やして様子を見る事で落ち着いた。
奇しくもお互いに丸1日を戦の準備する時間になるのだった。
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