【連載版】異世界に転生した少女は異世界を満喫する

厳しい現実

シオンはエリザにこれからの事について話した。

「ここは貴族としての暮らしはできません。自分のことは自分でするのが普通です。メイド？さんがいるならいいですが、最低限のことは自分でやって下さいね？」
「わかりましたわ」

シオンは急いで家を作ることを約束して、この大きなレンガの倉庫っぽい家を小分けして１部屋ごとに区切った。しばらくはここで暮らしてもらうことになった。

「ま、まさか神獣ノヴァ様の子供と契約されていたとは………！？」

エリザは、シルビアの大きな龍の姿をみて驚きを隠せなかった。

「そんな凄いことなんてないから～」

エリザから話を聞くと、数人は裁縫が得意と言うので、衣類の修復などの針子の仕事をして、その他は畑仕事やできる事を探して暮らしていく事になった。

ただ１人、面倒な令嬢がいたのだった。

その令嬢とは──

「ちょっと！私はファーランド侯爵家の令嬢よ！もっとマシな屋敷はないわけ！」

如何にも高飛車な令嬢であった。

「マリン、もう勘当されて私達は平民になったのよ？現実をみましょう？」

エリザが言い聞かせるが──

「うるさい！あんたの巻き添えで婚約破棄されたのよ！私は！…………私は…………うぅぅ」

まだ貴族としてのプライドがあるようだ。
シオンは深呼吸をしてマリンに尋ねた。

「正直に言って、これでも優遇しています。他の村人の家を後回しにして、貴女方の住居を優先しているのですよ？」
「うるさい！子供に何がわかるのよ！」

「わかりませんよ？だって、私はこの村からほとんど出たことがありません。でもわかっている事が１つだけあります」

シオンはマリンを鋭い目で見詰めた。

「な、なによ！」
「辺境では皆が助け合わないと生きていけません。マリンさんは何ができるのですか？」

シオンの言葉にマリンは言葉に詰まった。

「貴族なんて、無能で役ただずでしょ？正直、ここでは何の意味もありません。マリンさんが働かないのなら追い出すだけです」

！？

「子供に何の権限が──！？」

シオンが指さした方向を見て声をつぐんだ。シルビアを見れば一目瞭然だったからだ。

「もう一度聞きます。過去の栄光など捨てて下さい。貴女は何ができますか？」

マリンはうつむきながら言った。

「………戦闘用の魔法と古代語の翻訳、計算とかできます」

へぇ～翻訳ができるんだ。でも、それより計算ができるのが役たつね！

「当面は、父の側で領地の税収や物資の管理をしてもらいます。それと、エリザさんと一緒に戦闘訓練をしてもらいます」

「せ、戦闘訓練ですか？」
「はい、ここでは魔法を使える者が少ないのです。遊ばせておく訳にはいかないの。ただ………」

シオンは二人に見えていない精霊を見詰めた。

「二人には精霊に好かれる性質があるみたい。エリザさんは火の精霊、マリンは水の精霊にね。精霊に魔法を学べば格段にレベルが上がるわよ♪」

！？

「精霊………？」

二人は困惑した様子で呟くのだった。