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6章:スタンピード!

ジークの覚醒!

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城塞都市に近付いた土龍は予想外の出来事にパニックになっていた。普段、痛みとは無縁の土龍にしてみれば久方ぶりの激痛に我慢出来なかったのだ。今もまだ一定の間隔で大きな石と弓矢が飛んできて自分の身体を傷付けている。何とかしようと手足をバタバタさせるが、起き上がれないのだ。不思議と思った時には遅かった。土龍の周囲はいつの間にか、【泥の沼地】になっており立とうにも踏ん張りが利かなく立てないのである。

あらかじめ、下準備をしておいて土龍が倒れた瞬間に水魔法と土魔法の組み合わせで泥に粘着性を持たせたのだ。粘りのある泥のためますます動きにくくなる土龍に攻撃は止まない。

「どんどん攻撃せよ!大丈夫だ。効いているぞ!」

イルベルトの言葉に兵士達は声を上げる。

「「「おおっ!!!」」」

攻撃に勢いが増した。土龍を倒そうと集中攻撃が始まり、投石機から石以外に火炎魔石の投石も始まり、土龍の身体が炎の爆発が起こり始めた。

「土龍の岩みたいな鱗を削れ!その下の肌は柔らかくバリスタの弓矢が通じるぞ!」

「次にバリスタの弓矢に油の入った筒を結び付けて発射しろ!」

所々、燃えている土龍に油が投入され身体全体が炎に包まれた。熱さと痛みに転げ廻る土龍に予期せぬ事態が起こった。土龍を攻撃していた大きな石が積もって土台となり土龍を起き上がらせてしまったのだ。起き上がった土龍は普段は動かないスピードで城塞都市に向かってきた!

!?

「まずい!総員、退却ーーーーー!!!!!」

城壁にいた帝国軍はすぐにバリスタや投石機を放棄して左右に逃げ出した。20メートルもある巨体が城壁に体当たりしたことで一撃で城塞都市を守る城壁は崩され、土龍が城塞都市に侵入した。

ドカーーーーン!!!

土龍がぶつかった振動で城塞都市全体が揺れた。しかし、ここから帝国軍の戦闘が始まった。

「落ち着け!!!土龍はすでに満身創痍だ!城塞都市内部では町の被害は大きいが、障害物が多く土龍も自由に動けん!城壁の上や建物の上からでも攻撃が出来る。このまま押し返してトドメを刺すぞ!」

「「「おおっ!!!」」」

投石機は狙いが甘いので使えないが、バリスタは使えた。城壁の端に設置していたバリスタを城塞都市内部に向けて、攻撃を開始する。土龍は四肢を振り上げ、目の前にバリケードを破り帝国軍に襲い掛かる!

「近付き過ぎるな!兎に角、遠距離から攻撃せよ!魔法部隊!お前達の出番だ!」

温存していた帝国軍本隊にいた魔法部隊が攻撃を開始する。先程以上の爆発が起こり、土龍にダメージを与えていく。土龍が動く度に城壁が崩れ、大きな隙間を広げていく。

城壁から投網が投げられ、土龍の動きを鈍らせる。しかしワイバーンと違い、完全に動きを止める事は出来ない。暴れ廻る土龍の動きを鈍らせるのがやっとだった。しかしそれで十分であった。

すでに身体中にバリスタからの弓矢が刺さり、かなりの鱗剥がれ落ちていた。

「土龍の動きが止まったぞ!バリスタ、魔法攻撃は1度中止!総員、槍を持ちワシに続けーーーー!!!!」

大将シャーマンが先陣を切り、土龍に斬りかかった!シャーマンの武器はハルバートである。斧と槍の両方の攻撃が出来る武器である。シャーマンは土龍の右腕の肌が剥き出しの箇所を攻撃した。

ザシュッ!!!

シャーマンの攻撃した箇所が深く刃が届く!

「よし、攻撃が通るぞ!皆の者!続けーーーー!!!!」

シャーマンの後ろに控えていた者達は、帝国軍の中でも強さが上位に入る精鋭部隊であり、一斉に攻撃を開始する。土龍には人数を揃えても被害が増えるだけ、故に精鋭部隊で土龍を切り結び、他の兵士は後方支援を主に請け負った。

土龍の体力は底無しの様に、深手を追っても暴れ廻り少なからずの被害も出て来た。

「くそ!攻めきれぬか!?しかし、光の精霊王様やその契約者のシオンお嬢さんの力はこれ以上借りれぬ!なんとしてもここでトドメを刺さねば!」

すでに、シオンの支援魔法により城塞都市の帝国軍は力と防御力は底上げされていたのだ。後は我々帝国軍の底力を見せる時なのだ!戦いが拮抗し攻めあぐねていた時、ジークが後方より魔法部隊と一緒に魔法攻撃の準備をしていた。

「シャーマン大将!部隊を退かせて下さい!特大の魔法を放ちます!」

「ジークだと!どうして!?総員、退避しろ!」

魔法部隊の直線上から兵士が居なくなると、ジークは魔法を放つ!

!?

「ジーク!城塞都市内で炎系の魔法はまずいぞ!街が火の海になる!最初の魔法攻撃も炎を抑えて外に向けて放っていたことを忘れたか!?」

魔法攻撃で巨大な10メートルはある炎の球体が出来ていた事により叫ぶシャーマン!

「大丈夫です!信じて下さい!いくぞ!放てーーーーー!!!!!」

ジークの指示の下、巨大な炎の球体が土龍にぶつかった。すると、勢い余って土龍が城壁から外に吹き飛ばされたのだ。その様子に唖然とするシャーマンがいた。

「な、なんだ!?炎の球体が爆発せずに土龍を吹き飛ばした?」

ジークが説明する。

「複合魔法です。土属性魔法と火属性魔法を組み合わせた【炎の岩】をぶつけたのです!【メテオボール】とでも名付けましょうか?」

「なるほど!だから質量を持って土龍を外へ吹き飛ばす事が出来たのか!でも急にどうして……?」









少し前に遡る─

土龍戦が始まり、ジークは自分の力の無さを呪った。精霊眼があっても精霊に助けを求める事が出来ないからだ。しかし、そこでジークは気付いた。自分の力で頑張ると言ったのに、結局の所で他人の力を当てにしていたことに。

「僕は馬鹿だ!自分の力で頑張るって言ったのに!何とかするんだ!これ以上、犠牲者が出ないように……考えろ!」

『…………え…る?』

「えっ?だれ?」

声が聞こえたので辺りを見渡す。

『聞こえ……る?』

「聞こえるよ?君はだれなんだ!?」

声の主を探すが見付からない。

『やっと聞こえたね!僕は土の精霊さ!ずっとジークに声を掛けてたんだよ?』

「土の精霊!?でも今初めて聞こえましたが?」

『少し前のジークは、心のどこかに他人の力を当てにしていた所があったからね。それは悪いことじゃないんだけど、僕達の産まれたばかりの力の弱い精霊は、心の清らかな人間の魔力を貰って成長するから、いくら精霊眼を持っていても不純物のある心じゃ滅多に声や姿を見ることが出来なかったんだ』

「土の精霊様、お会い出来て光栄ですが詳しい話はまたにしても良いでしょうか?今は土龍を何とかしなければなりません!」

『そうだね。でもジークに何が出来るのかな?』

「……魔法部隊を使い、特大の魔法攻撃をぶつけます!」

『良い案だね。でも火属性の魔法だと城塞都市を火の海にしてしまうかも知れないよ?』

「土属性の魔法を使います。投石機に乗せていた以上の巨大な球体の石をぶつけて城塞都市外に押し出します!」

『ふふふっ、いいね!それで良い!全ての力を頼るのでは無く、自分で考えてそれでも足りない時は僕も力を貸そう!ジーク、僕に名前をくれないか?それが契約の証になるんだ!』

「力を貸してくれるのですか!?……では【アース】でどうでしょう?」

『アースか、気に入った!』

すると、土の精霊【アース】が姿を現した。

「えっ?女の子!?」

「そうだよー?同じ一人称が【僕】同士、仲良くやろうね♪」

こうして、アースが複合魔法を制御して土龍にぶつける事に成功したのだった。

城塞都市から外に吹き飛ばされた土龍を確認すると首から地面に落ちたため首が折れて絶命していた。こうして、少なからず犠牲を出しながらも土龍を退治することに成功した帝国軍だった。

これが次期皇帝のジークの最初の功績となる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】
シオン
「………あれ?」

愚者の声
「なんか定番になったけどどうしたの?」

シオン
「私はどこに行ったの?」
(゜Д゜≡゜Д゜)?

愚者の声
「秘密の作戦実行中です」

シオン
「喜ばしいけど、私はどうしてるのかしら?」

愚者の声
「まぁまぁ、もう少し待って下さいね」

シオン
「早くしないと……わかっているわね?」
Σ(´□`ノ)ノ
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