上 下
114 / 181
6章:スタンピード!

前哨戦なのです!

しおりを挟む
遂に土龍が城塞都市に近付いてきた。

「城壁から見ても壮観だな……」
「ああ、アレを相手にするのか」
「軽く死ぬぞ?」

相手は体長20メートルはある巨体である。しかも岩の様に硬い鱗で覆われていて、同じ龍でも最高クラスの防御力を持っている。ダメージを与えるだけでも一苦労なのだ。

『妙じゃな?ここまで接近して攻撃が無いとは?いったい何を企んでおるのじゃ?』

土龍の背に乗り攻撃に備えていたタクシャカは不思議に思っていた。実は龍の制御に精神を集中していたため、配下からの念話が届かず落とし穴の存在を知らないのだ。

一部、タクシャカの思惑は成功し、城塞都市に近付いた事により、土龍の上を旋回していたワイバーンは食べ易いエサ(人間)を見つけ城塞都市へ向かった。

「ワイバーンが向かってくるぞーーーー!!!!」

「ワイバーンには投石機を使え!いくぞ!放て!!!」

いつでも放てる状態であった投石機を使い、無数の石がワイバーンに向かっていく。

『ぐぎゃぁぁぁぁぁあああああ!!!!』

5匹の内、3匹に無数の石が当たった瞬間に爆発が起こった!無数の石の中に火炎魔石が混じっていたため、強い衝撃を与えた事により爆発に似た炎がワイバーンを焼いていく。無論、外れた火炎魔石は地面に落ちて地面を焼くが、ただそれだけである。

翼を石でズタズタにされ、更に炎で焼かれた3匹のワイバーンは墜落した。動きの止まったワイバーンをバリスタで狙いを定めて放つ!

「今だ!!!一斉に放てーーーー!!!!」

城壁に設置されたバリスタから巨大な弓矢が放たれ、ワイバーンを襲う。

『ぐぉーーーーーーーん!!!』
『ぎゅぁぁぁあああ!!!!』

3匹のワイバーンは巨大な弓矢に貫かれ絶命した。なんともあっけなく倒せたため逆に帝国軍は唖然した。ワイバーンはAランク冒険者がパーティーを組んでやっと1匹倒せるレベルなのに、1度に3匹も倒せたのだ。

「すげーー!」
「マジかよ!こんなに簡単に……」
「これなら土龍も倒せるぜ!?」

喜びに沸く帝国軍にイルベルトが号令を掛ける。

「まだ気を抜くな!これより一部を除き、投石機及びバリスタは土龍に集中投入する!残りのワイバーンは冒険者に任せる!」

イルベルトの指示に、バリスタを土龍の方へ移動させる準備に入った。そして、攻撃を避けて城塞都市上空に移動したワイバーンは街中にいた人間を見付け襲い掛かった。

『きしゃーーー!!!』

「よし、掛かったぞ!?」

ワイバーンは鉤爪で人を掴み掛かるが、襲い掛かる瞬間に下水道の入口(現代風でマンホールと思って下さい)に入り逃げたのだ。ワイバーンでは追う事の出来ない穴に入り逃げる事により、ワイバーンの動きが止まる!

その瞬間に隠れていた屋根から、網を投げワイバーンを拘束する。

「今だ!かかれーーーーー!!!!」

民家から冒険者達が一斉に飛び出し、網の中で暴れ廻るワイバーンを攻撃した。

「槍を持つ者は思いっきり刺せ!弓の者は間近で射て!弱った所を剣で斬りつけろ!」

「なぁ?どうして剣の奴は先に攻撃しちゃダメなんだ?」
「バカ!作戦聞いていなかったのかよ?剣で攻撃したら網も切れてワイバーンが逃げ出すだろ!?」
「やべっ!そうだった!」

ワイバーンは龍の亜種のため空を長時間飛べる代わりに装甲が薄く、柔らかい。地面に墜ちてしまえば倒し易いのだ。そして遂に冒険者達もワイバーンを倒す事に成功する。

「やったぞーー!!!」
「信じられない!Cランクの俺がワイバーンを倒せるなんて!」
「まだまだやれるぜ!」

こちらも、滅多に倒せない大物を狩れて喜びに沸くが、冒険者達はすぐに次の持ち場へと向かうのだった。

「喜ぶのは土龍を倒してからだ!ワイバーンなど前哨戦に過ぎない!作戦通りに次へ向かうぞ!」

「「「おおっ!!!」」」

そして最後に残るワイバーンだが……

「スイレン、良く狙ってね?私は魔力を無駄に出来ないから……」

「任せるのじゃ!昨夜から絶好調の妾に不可能はない!」

『アクア・ショット!』

スイレンが放った水の弾はワイバーンの翼を貫き、ワイバーンを地面に落とす。

「アルフさん!今です!」

「おう!やるぜ!」

ザシュッ!

一刀両断の言葉がここまで似合う場面ないだろう。地面に落ちて頭を上げたワイバーンの首をスパッと切り落としたのだ。

「お見事!!!」

アルフさんに賛辞を贈る。

「スイレン殿がワイバーンを墜としてくれたおかげですよ」

スイレンは、にししといった顔で笑う。

「スイレンもありがとう。予定より早く片が着いたわね?少し早いけど私達もお兄様と合流しましょう!」

二人は頷き、その場を後にするのだった。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】

シオン
「ふふふん♪ワイバーンなんてザコ楽勝ですわ!」

愚者の声
「君は何もしてないけどね!」

シオン
「これからの戦いに備えているのです!いざとなったら手を貸す予定でしたし?」

愚者の声
「冒険者達はどこに向かったの?」

シオン
「次回を待て!ですわ!」
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

悪徳領主の娘に転生しました。『魔法学園恋愛編!』たぶん!

naturalsoft
恋愛
別タイトル『悪徳領主の娘に転生しました。貧乏領地を豊かにします!』 の、続編になります。 前回の幼少期から成長して学園に入学する所から始まります! 果たして、シオンの恋心はどうなるのか? (ファンタジー強めです)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

処理中です...