上 下
108 / 181
6章:スタンピード!

影の侵略作戦は順調です!

しおりを挟む
次回から、【_____】に戻ります。(多分)

あれ?シリアスさんどこに行った!?

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

レインは絶句しているシャーマン及び、この場にいる高位官僚達にまた幻影魔法であの時の場面を映像で見せた。

「こんなことが……」
「我らが帝国がこれを?」
「そんなバカな!?」

その場にいた者達は驚きを隠せなかった。余りにもリアル過ぎる映像に嘔吐する者までいた。

「これは、私が実際に体験した映像です。無論、シオンも!大将シャーマン殿、あなたは先ほどすまなかったといったな?その言葉にどれだけの重みがある?光の精霊王の契約者である妹のシオンは最初、助力を断った。これを見ればわかるだろう?目の前で大切な良民が、家族が傷付き死んでいく!でもシオンは城塞都市を護る為に自分の気持ちを圧し殺して助ける事を選んだ。その辛さ、貴方に分かりますか!!!?」

シャーマンは何も言えなかった。言えるはずが無かったのだ。

「貴方が事件に関与していない事は分かりました。しかし、安易に詫びの言葉を口にしないで貰いたい。我々は帝国を信用していない。いや、恨んでいると言っても良い!我々が力を貸すのは、無関係な街の人々を護るため、そしてジークの為に力を貸しているという事を忘れ無いで貰いたい」

レインの言葉を黙って聞いていたシャーマンはレインを再度、見つめる。そこには8歳の子供では無く、フィリアス公爵家次期当主としての姿があった。

「ワシの認識不足だった。本当に申し訳ありませんでした」

今度は丁寧、頭を下げるシャーマンに周りの官僚達も頭を下げる。

「では、私達の要求です。今回の助力のお礼として、シャーマン殿にはジークの後ろ楯になって貰いたい」

!?

「レイン!それはどういう……」

ジークが慌てて聞き返すが、アルフとシャーマンは理解出来たようだ。

「フィリアス公爵家ではこの要求を飲んでくれた場合は国境帝国軍に対して、食糧、武器などの物資を援助する体制が整えてあります」

「レイン殿!それは……!?」

そう、国境帝国軍を丸ごとクーデターに加担しろと言っているのだ。その為に援助する事も出来ると……
シャーマンは背中に冷や汗をかき始めていた。本当にこれは8歳の子供なのかと。否!これは、長い年月、権謀術数の貴族社会での荒波に揉まれた百戦錬磨の貴族の当主がそこに居た。

「ジークの事はこの城塞都市の全ての人々が支援してくれます。更に、ジークは【精霊眼】を持っています。精霊王が認めたと言えば他の都市や街なども賛同してくれるでしょう。そこに軍の後ろ楯があれば、身の危険も減らせると思うのです」

シャーマンはこれからの帝国の行く末を考えた。物価が上がり、民が困窮する中で未だに次期後継者争いを続けている王宮貴族達に任せて良いのだろうか?
実は、シャーマン自身が王宮の足の引っ張り合いに嫌気が差して人気の無い、国境に志願した経緯があったのだ。アルフの息子として育てられ、魔物のいるなか救援にも向かったと聞いたジークなら帝国の膿を出し、良い方向に導いてくれるのではないかと思った。

しかし、自分の決定が今後の帝国の命運を決めるかも知れないと思うと、安易に頷く事は出来なかった。

「レイン殿、個人的には賛成したい。だが、帝国の今後の未来に繋がりうる案件だ。すぐには頷く事が出来ない。せめてスタンピードが終結後に改めて話がしたい」

レインはシャーマンの言葉を予め知っていたかのように了承した。シャーマンはここまで読んで居たのかと内心、驚いていた。帝都に住んで居たときでもここまで先の読める人物を自分は知らなかった。もしかしたら、光の精霊王様やその契約者より、このレイン次期当主の方が油断出来ないのかも知れない。そんな事を思うシャーマンだった。

話し合いが終わり、外に出ると所々で食事をしながら笑い声が聞こえてきた。まるで魔物の襲撃など無かったかのように都市全体が暖かい空気に包まれていた。

「う~む、これはどうしたものか……士気が下がるよりは良いが余り軍規が緩むのも不味いのだが?」

人々の表情が明るいのには訳があった。それは光の精霊王と言う伝説の存在が現れ、奇跡を起こしてくれたから。少ない人数での防衛から国境の帝国軍本隊が到着し、人数が増えた事による安心感のため。そして最後に、美味しい料理があれば誰でも笑顔になるだろう。

「まぁまぁ、シオンお嬢様の料理ですよ!シャーマン大将殿も、さぁどうぞ!」

イルベルトから料理を貰い、初めて見る食べ物を少し見つめてから口に入れる。

クワッ!!!!

う~ま~い~ぞ~!!!!

そしてシャーマンもシオンの料理の虜になるのだった。シオンの料理による帝国侵略作戦は順調進んでいるのでした。
(違うわよ!)




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】

愚者の声
「なんて事だ!知らない間に侵略していたなんて!?」

シオン
「誤解ですわ!そんなことはしてません!」

愚者の声
「と、容疑者は申しております」

シオン
「むきーーー!!!貴方なんて歩く犯罪者の癖に!」

愚者の声
「ひどい!?私のガラスのハートは粉々よ!?」

シオン
「(|||´Д`)キモいですわ」

バッリーーーン!
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

悪徳領主の娘に転生しました。『魔法学園恋愛編!』たぶん!

naturalsoft
恋愛
別タイトル『悪徳領主の娘に転生しました。貧乏領地を豊かにします!』 の、続編になります。 前回の幼少期から成長して学園に入学する所から始まります! 果たして、シオンの恋心はどうなるのか? (ファンタジー強めです)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

処理中です...