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アクエリアス領の異変!
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騎士団長は南方の小さな町に砦の兵士と共に撤退し、後続の部隊を待った。
「ハンス殿、申し訳ない!」
騎士団長は町の長であるハンス町長に頭を下げた。
「いえいえ、騎士団長様が頭を下げる事ではありません。まぁ、原因に貴方の子息が絡んでいたとしてもね?」
ハンス町長は温厚な顔をしていたが、目が笑っていなかった。
「帝国軍が南方の砦を奪いました。帝国が領土拡大を狙っているなら、次はここに攻めてきます。出来る限り町に被害を出さないように全力を尽くしますが、ある程度の損害は出るかと思います………」
ハンス町長は目を瞑り一言、そうですかと呟いた。
「では私達は北の方へ避難します。この町にある物は騎士団の方々が自由に使って下さい」
騎士団長はハンス町長の言葉に驚いた。確かに避難する事は正しい。しかし、大抵の場合は自分の町や家が心配で中々離れられない事が多い。こんなにあっさり避難すると言われて不思議に思った。
「確かにそれが最善ですが………あてはあるのですか?」
「ええ、アクエリアス公爵様が万が一の場合に備えて【避難場所】を用意してくれていたのです。【こんな場合】に備えてね」
騎士団長は驚きの声を上げた。
「アクエリアス公爵は前々からこの状況を予想していたと言うのか!?」
ハンス町長は町の事を伝えて、早々に町の人々を集めてその日の内に町を出て行ってしまった。その素早い行動に騎士団長は少し怪しんだが、帝国軍が迫っている中、後続の兵を待つ間に町の防衛準備に忙殺された事で深く追及出来なかったのだ。
「騎士団長!こちらの防御柵の用意出来ました!」
部下の報告に騎士団長は首を傾げた。
「なに?もう準備が出来たのか!?」
余りにも早い準備に驚いた。
「はい!町の住民から貰った物資表に防御柵などすでに準備してあったのです。我々はただ倉庫から出しただけに過ぎません」
「すでに帝国が攻めて来る事を知っていて、あらかじめ用意していたのか?いや、それもアクエリアス公爵の指示だったのかも知れん。あの方は娘の事で王国を恨んでも、最後まで民の事を考えていたのか…………」
騎士団長はアクエリアス公爵に心の中で詫びて、帝国の迎撃の準備を整えるのだった。
帝国が動き出したのは3日後からだった。馬があるので砦を見張っていた部下から帝国が動き出したと連絡があった。
「動きだしたか!」
騎士団長は焦りを隠せなかった。後続の部隊がまだ到着していなかったからだ。
「すぐに伝令を出して、今どこまで来ているのか確認しろ!」
「はっ!」
すぐに部下が出ていった。確かに馬で急いで来たが、後方の町まで戻ったのだ。すでに到着していてもおかしくはないのだ。道中で何かなければ………
嫌な予感を胸に、騎士団長は約300名で5千の帝国軍を相手にしなければならなかった。
しかも、騎馬隊は平原で威力を最大限に発揮するが、町中では全く役に立たない。弓で応戦するしかないのだ。
こうして時間だけが経っていった。
「………遅い!まだ伝令は戻らないのか!?」
部隊の到着はまだしも、馬で出ていった伝令が戻らないのはおかしい!
「はっ!まだ戻っておりません!」
すでに帝国軍が目の前に迫っていた。そして住民の居なくなった町を見渡して、騎士団長は背筋が寒くなった。
「ま、まさか!?」
騎士団長の動揺に側近達が尋ねた。
「どうされました!?」
何かを思い立った騎士団長の行動は早かった!
「すぐにこの町にいる騎士団を全て撤退させる!馬に乗って脱出するぞ!」
!?
「この町を放棄するのですか!?」
確かに5千の帝国軍を相手にするのは無謀であるが、敵前逃亡には騎士として抵抗があった。
「恐らく援軍である後続部隊は来ない!すでに壊滅している可能がある!」
!?
「なっ!?」
「町の住民が寝返っていれば可能だろう。食事に睡眠薬など混ぜてな」
すでに、南方のアクエリアス領内の村や町が帝国に従順している可能性に至った事で、この町の住民がすんなり避難したことも説明が付く。
「どこまでがアクエリアス公爵の思惑なのだ?」
騎士団長の呟きに答えれる者は居なかった。すぐに馬を用意し、全部隊に撤退命令を出すとすぐに異変が起きた。5分も走らない内に全ての馬が走らなくなったのだ。
「やられたっ!馬の藁草などに薬を盛られたか!?」
こうして騎士団長達は馬を降りて、徒歩で帰らざるおえなくなった。
騎士団長はアクエリアス領内の村や町には立ち寄らず、遠回りをして領内を出たために帰りは1週間ほど掛かる事になった。アクエリアス領を出るとすぐに別の領内の詰所に行き、事情を話した上で馬を借りて、最初の300人と砦の一般兵士のみ帰還することが出来たのだった。
ちなみに、騎士団長の考えは当たっており後続部隊は少し大きめの町で宿泊したときに、食事に睡眠薬を混ぜられ捕縛されていた。
帝国軍はそれ以上の進軍はしなかったが、王国は王命が発令され、近隣の貴族の軍に招集が掛けられた。
その間にアクエリアス領内の領民は一斉に北へ避難するのであった。
「ハンス殿、申し訳ない!」
騎士団長は町の長であるハンス町長に頭を下げた。
「いえいえ、騎士団長様が頭を下げる事ではありません。まぁ、原因に貴方の子息が絡んでいたとしてもね?」
ハンス町長は温厚な顔をしていたが、目が笑っていなかった。
「帝国軍が南方の砦を奪いました。帝国が領土拡大を狙っているなら、次はここに攻めてきます。出来る限り町に被害を出さないように全力を尽くしますが、ある程度の損害は出るかと思います………」
ハンス町長は目を瞑り一言、そうですかと呟いた。
「では私達は北の方へ避難します。この町にある物は騎士団の方々が自由に使って下さい」
騎士団長はハンス町長の言葉に驚いた。確かに避難する事は正しい。しかし、大抵の場合は自分の町や家が心配で中々離れられない事が多い。こんなにあっさり避難すると言われて不思議に思った。
「確かにそれが最善ですが………あてはあるのですか?」
「ええ、アクエリアス公爵様が万が一の場合に備えて【避難場所】を用意してくれていたのです。【こんな場合】に備えてね」
騎士団長は驚きの声を上げた。
「アクエリアス公爵は前々からこの状況を予想していたと言うのか!?」
ハンス町長は町の事を伝えて、早々に町の人々を集めてその日の内に町を出て行ってしまった。その素早い行動に騎士団長は少し怪しんだが、帝国軍が迫っている中、後続の兵を待つ間に町の防衛準備に忙殺された事で深く追及出来なかったのだ。
「騎士団長!こちらの防御柵の用意出来ました!」
部下の報告に騎士団長は首を傾げた。
「なに?もう準備が出来たのか!?」
余りにも早い準備に驚いた。
「はい!町の住民から貰った物資表に防御柵などすでに準備してあったのです。我々はただ倉庫から出しただけに過ぎません」
「すでに帝国が攻めて来る事を知っていて、あらかじめ用意していたのか?いや、それもアクエリアス公爵の指示だったのかも知れん。あの方は娘の事で王国を恨んでも、最後まで民の事を考えていたのか…………」
騎士団長はアクエリアス公爵に心の中で詫びて、帝国の迎撃の準備を整えるのだった。
帝国が動き出したのは3日後からだった。馬があるので砦を見張っていた部下から帝国が動き出したと連絡があった。
「動きだしたか!」
騎士団長は焦りを隠せなかった。後続の部隊がまだ到着していなかったからだ。
「すぐに伝令を出して、今どこまで来ているのか確認しろ!」
「はっ!」
すぐに部下が出ていった。確かに馬で急いで来たが、後方の町まで戻ったのだ。すでに到着していてもおかしくはないのだ。道中で何かなければ………
嫌な予感を胸に、騎士団長は約300名で5千の帝国軍を相手にしなければならなかった。
しかも、騎馬隊は平原で威力を最大限に発揮するが、町中では全く役に立たない。弓で応戦するしかないのだ。
こうして時間だけが経っていった。
「………遅い!まだ伝令は戻らないのか!?」
部隊の到着はまだしも、馬で出ていった伝令が戻らないのはおかしい!
「はっ!まだ戻っておりません!」
すでに帝国軍が目の前に迫っていた。そして住民の居なくなった町を見渡して、騎士団長は背筋が寒くなった。
「ま、まさか!?」
騎士団長の動揺に側近達が尋ねた。
「どうされました!?」
何かを思い立った騎士団長の行動は早かった!
「すぐにこの町にいる騎士団を全て撤退させる!馬に乗って脱出するぞ!」
!?
「この町を放棄するのですか!?」
確かに5千の帝国軍を相手にするのは無謀であるが、敵前逃亡には騎士として抵抗があった。
「恐らく援軍である後続部隊は来ない!すでに壊滅している可能がある!」
!?
「なっ!?」
「町の住民が寝返っていれば可能だろう。食事に睡眠薬など混ぜてな」
すでに、南方のアクエリアス領内の村や町が帝国に従順している可能性に至った事で、この町の住民がすんなり避難したことも説明が付く。
「どこまでがアクエリアス公爵の思惑なのだ?」
騎士団長の呟きに答えれる者は居なかった。すぐに馬を用意し、全部隊に撤退命令を出すとすぐに異変が起きた。5分も走らない内に全ての馬が走らなくなったのだ。
「やられたっ!馬の藁草などに薬を盛られたか!?」
こうして騎士団長達は馬を降りて、徒歩で帰らざるおえなくなった。
騎士団長はアクエリアス領内の村や町には立ち寄らず、遠回りをして領内を出たために帰りは1週間ほど掛かる事になった。アクエリアス領を出るとすぐに別の領内の詰所に行き、事情を話した上で馬を借りて、最初の300人と砦の一般兵士のみ帰還することが出来たのだった。
ちなみに、騎士団長の考えは当たっており後続部隊は少し大きめの町で宿泊したときに、食事に睡眠薬を混ぜられ捕縛されていた。
帝国軍はそれ以上の進軍はしなかったが、王国は王命が発令され、近隣の貴族の軍に招集が掛けられた。
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