悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft

文字の大きさ
上 下
64 / 100

戦争の始まり

しおりを挟む
騎士団長は部下からの報告を聞いて、耳を疑った。

「なんだと!?」

「帝国が南に兵を集めています!数は5千ほど!」

アクエリアス家に帝国の姫であるレイラ公爵婦人が嫁いでから、帝国と王国はほとんど小競り合いもなく10年以上は良好な関係を築いていた。
それも、レイラ公爵婦人がデルタ公爵にベタ惚れで、自分の娘も天使のように可愛がっているのは帝国でも良く知られていたからだ。
これが下級貴族なら関係ないが、帝国の姫が幸せに暮らしている国に、理不尽に攻め込んだりは出来ないからだ。

なのに何故?と、言う話しになるが、心当たりがありすぎる騎士団長は苦虫を噛んだような顔をして顔を歪めた。

「帝国の元姫の娘を不当に扱った報復と考えるのが妥当か…………それに、アクエリアス家の引っ越しも先日、完了したと聞いたからな。憂いなく攻め込めるか………」

帝国が本気を出せば万の軍勢は出せるだろうが、今まで平和だったため、帝国に隣接する国境の守備兵の数は年々減っていった。
下手に国境に兵を増強すると、緊張感がでて軋轢を生むため、逆に減らすことで信用しているとアピールができ、貿易など友好関係になっていったのだ。

馬を走らせながら騎士団長は、己の息子が加担したシオン令嬢の修道院送りの悪行を再度後悔した。
馬を走らせている数は300ほど、残りの2千以上は徒歩のため、後から追いかける事になっていた。

「騎士団長!もし南の国境砦に着いたとしても、我々だけでは対処出来ません!」
「わかっている!しかし、我々が早急にたどり着いた事で帝国の進行が止まるかも知れん!」

騎士団長もこの騎馬隊のみで5千の帝国軍をどうにか出来るとは思っていなかった。ただ、騎馬隊は平原では無視出来ない攻撃力を持つため、圧力を掛ける事が出来れば良いと考えていた。無論、傷付いた仲間の救援も兼ねている。

こうして、徒歩3日の距離にある南の国境に1日で到着した騎士団長だったが、目の前の光景を見て顔を青くする事になった。

少し時間は遡る─

ヒューズ将軍が率いる帝国軍は、威力軍事演習を初めていた。

「言いか!これは皇帝直々からの命である!最近のぬるま湯に浸かった練習を忘れ、原点に立ち返り、本気で気合いを入れろ!!!」

歴戦の猛者であるヒューズ将軍と皇帝直々の命令であれば気合いを入れない訳にはいかない。下手をすれば減給や懲罰行きになるからだ。

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」

大地が震える程の雄叫びを上げながら、王国の国境砦の前で軍事演習が始まった。
演習以外に500の兵士を砦側に配置し、万が一、砦の200の兵が出て来ても対処出来るようにしていた。

気合いの入った帝国軍は万にも匹敵する気迫で、演習に身を投じた。
多彩な、軍の移動から始まり、右翼の型から左翼の型、扇状の型などの移行など、ヒューズ将軍の指示が的確なのと、良く訓練されているのがわかった。

そして、お互いの組手の演習に入った所で、王国の砦から白旗を持った兵士が帝国軍へやってきた。

「わ、私は使者として来ました。砦を預かる隊長から、降伏するとの事です!」

!?

ヒューズ将軍は目を開いて内心、驚いた。砦からみれば、これば軍事演習だとわかるはずだ。威力目的なのだが、何もせず降伏とは………せめて数日待てば王国から同数ほどの援軍も来るだろうに。演習を初めて数時間で降伏するとは思っていなかったのだ。

「………これは困った」

あくまでも南に王国の意識を向けさせる事が目的であり、本気で砦を奪って戦争をする気はなかったのだ。少なくとも帝国側は。
しかし、それを知るのはヒューズ将軍とその側近のみであり、末端の兵士は自分達の気迫が王国をビビらせて、無条件降伏させたと気分が高揚していた。

「皇帝陛下も王国軍が来たら迎撃せよと言っていたしな。砦は貰っておくか」

こうして、ヒューズ将軍は血を流さず南の国境砦を手に入れたのだった。

そして、王国騎士団長がやって来たときには、砦には帝国の旗が靡いていたのだ。

「もう落とされていたのか…………」

砦から目をやると、砦の兵士達がこちらに向かっていた。

「お前達!無事だったか!?」

砦に詰めていた兵士は王国の騎士団をみて喜んだ。

「何があった?」

1人の兵士が事の顛末を話した。砦を預かる隊長が、保身の為に無条件降伏したことを。そして誤算だったのは、一般兵は武器を取り上げて解放し、隊長クラスは捕虜にされたことを。

砦の隊長は抗議したがヒューズ将軍の一睨みで沈黙した。砦にはだいたい隊長クラスしか知らない抜け道や隠し部屋がある事が多いため、隊長クラスを捕縛し捕虜にしたのだ。貴族であれば身代金も請求出来るからだ。

辺境に飛ばされた無能隊長はそこまで頭が廻らなかったのである。

「クソッ!せめて籠城してくれれば、砦と外から挟撃出来たのに!」

すでに敵の手に落ちた砦を見つめながら、後方の次の街に撤退するのだった。





しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

処理中です...