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苦悩する国王や宰相
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エリックがシオン令嬢を修道院送りにした事で、王国中の貴族達から嘆願書や抗議文が山の様に送られてきていた。
「はぁ~、まったくどうしたものか………」
書簡の山を見てため息を付く国王がいた。最初に言っておくが、現国王は無能ではない。むしろ有能な部類に入る国王であった。
故に、現国王に忠誠を誓っている貴族は意外と多いのだ。
しかし─
植物を操る稀な魔法を使うシオン令嬢は、自身が知らないだけで、王国中にその名を轟かせていた。飢饉が起きても解決出来る魔法使い。そして、新しい農業方法の確立で収穫高を3倍にもした。それを秘匿せず、王国中に教えを広めた事で、農民の生活は向上し王国の税収も増加した。
公爵令嬢でありながら民と一緒に泥だらけになりながら働くシオンの姿は、【貴族の鏡】として、一部の貴族が民と一緒に働く事で、関係が改善され友好な状態になったのだ。
シオン令嬢が王妃となって国王を支えれば、どの貴族も派閥を気にせず、飢饉の時に助けて貰えると期待していた。
(貴族には派閥があり、他の派閥に助けを求めると、見返りを求められるので、お願いしにくいのです)
まぁ、能天気な令嬢シオンはお茶会や社交界でも派閥を気にせず話掛けるので、貴族令嬢達にもウケは良かった。
「わたくし、シオン様に話し掛けられましたわ!」
「わたしなんて、実家のお菓子を褒められて大口の取引までしたいと言われて感激ですわ!」
と、まぁアイドルのように居ても居なくても、話題に事欠かない人物であった。
それは人柄なのか、シオンを悪く言う令嬢はほとんどいなかった。悪意のない向日葵のような笑顔で話し掛けられれば、憎み難いというものだ。
そんな聖女のような人物を不当に扱ったとなれば、当事者だけではなく、その父親にも責任が及んだ。
「アクエリアス公爵家の引っ越しが完了したそうです。また公爵家に繋がりのある人々も移動を開始したと報告がありました」
宰相の言葉に、国王はホッと安心した。
「そうか、少し安心したな。これで引き継ぎの手続きが終わればアクエリアス領は、しばらく【王家の領地】として管理していくとが出来るな」
「ええ、アクエリアス家は大量の資産を持っていますからな~、辺境の地では商会など誘致しても軌道に乗るまで何年も掛かります。当面は資産を切り崩しながら、領地を治める事になるでしょうな?」
「うむ!正直な所、領地経営に失敗してそれを王家が援助することで妥協してもらえるのが1番良いのだが…………」
国王と宰相は腕を組んで考えた。
「傑物揃いのアクエリアス家です。数年で領地の税収を黒字にしそうで怖いですな………」
「ああ、ワシも同じ事を思った」
何とも言えない空気が流れた時─
コンッ!コンッ!
「失礼します!火急にお知らせしたい事があります!」
扉の外から緊迫した声が聞こえた。
「入れ!」
扉から騎士が1人入ってきた。
「はっ!失礼致します!帝国の軍が南に兵を集めております!騎士団長殿は先に出立されました!」
その報告に驚いた国王と宰相だった。
「なんだと!?規模は分かっているのか!?」
「少なくとも5千ほどは確認されております!」
宰相が騎士に怒鳴った!
「どうして気付かなかった!南の国境砦には精々200人ほどしか滞在していなかったはずだ!」
「はっ!帝国は軍を分隊に別けて、少しずつ兵士を移動させたのでは?と騎士団長が言っておりました!」
!?
「騎士団長はどれだけ連れていった?」
「すぐにかき集められる兵士3千を引き連れて行きました!」
王国も睨みあう南の国境砦に200人ほどしか詰めていない。5千もの帝国兵が攻めてこれば1日も持たずに落とされるだろう。
「残った者にも緊急徴収を掛けて、騎士団長の後を追わせろ!」
「承知しました!」
伝令の騎士は慌てて出ていった。
「どうしてこの時期に帝国が動いたんだ?」
「いえ、この時だからではないでしょうか?守りの要であるアクエリアス家が北の辺境へ移動し、現状のアクエリアス領は後任の執政官の引き継ぎが終わっていなく、何をどうしてよいのか分からない状態でしょう?」
国王は真面目な顔で宰相に尋ねた。
「やられたな。アクエリアス家の事ばかり目がいってしまって、現状のアクエリアス領の脆さを把握していなかった。………帝国は本気で領地を狩り取ってくると思うか?」
「私なら本気で取れる所まで取るでしょうな。好機ですから」
国王と宰相は騎士団長に望みを託すのであった。
しかし、帝国は南の方に意識を向ける事が目的であり、その目論みは成功したのだった。
そして王国がその事に気付くのはもう少し後の事になる。
「はぁ~、まったくどうしたものか………」
書簡の山を見てため息を付く国王がいた。最初に言っておくが、現国王は無能ではない。むしろ有能な部類に入る国王であった。
故に、現国王に忠誠を誓っている貴族は意外と多いのだ。
しかし─
植物を操る稀な魔法を使うシオン令嬢は、自身が知らないだけで、王国中にその名を轟かせていた。飢饉が起きても解決出来る魔法使い。そして、新しい農業方法の確立で収穫高を3倍にもした。それを秘匿せず、王国中に教えを広めた事で、農民の生活は向上し王国の税収も増加した。
公爵令嬢でありながら民と一緒に泥だらけになりながら働くシオンの姿は、【貴族の鏡】として、一部の貴族が民と一緒に働く事で、関係が改善され友好な状態になったのだ。
シオン令嬢が王妃となって国王を支えれば、どの貴族も派閥を気にせず、飢饉の時に助けて貰えると期待していた。
(貴族には派閥があり、他の派閥に助けを求めると、見返りを求められるので、お願いしにくいのです)
まぁ、能天気な令嬢シオンはお茶会や社交界でも派閥を気にせず話掛けるので、貴族令嬢達にもウケは良かった。
「わたくし、シオン様に話し掛けられましたわ!」
「わたしなんて、実家のお菓子を褒められて大口の取引までしたいと言われて感激ですわ!」
と、まぁアイドルのように居ても居なくても、話題に事欠かない人物であった。
それは人柄なのか、シオンを悪く言う令嬢はほとんどいなかった。悪意のない向日葵のような笑顔で話し掛けられれば、憎み難いというものだ。
そんな聖女のような人物を不当に扱ったとなれば、当事者だけではなく、その父親にも責任が及んだ。
「アクエリアス公爵家の引っ越しが完了したそうです。また公爵家に繋がりのある人々も移動を開始したと報告がありました」
宰相の言葉に、国王はホッと安心した。
「そうか、少し安心したな。これで引き継ぎの手続きが終わればアクエリアス領は、しばらく【王家の領地】として管理していくとが出来るな」
「ええ、アクエリアス家は大量の資産を持っていますからな~、辺境の地では商会など誘致しても軌道に乗るまで何年も掛かります。当面は資産を切り崩しながら、領地を治める事になるでしょうな?」
「うむ!正直な所、領地経営に失敗してそれを王家が援助することで妥協してもらえるのが1番良いのだが…………」
国王と宰相は腕を組んで考えた。
「傑物揃いのアクエリアス家です。数年で領地の税収を黒字にしそうで怖いですな………」
「ああ、ワシも同じ事を思った」
何とも言えない空気が流れた時─
コンッ!コンッ!
「失礼します!火急にお知らせしたい事があります!」
扉の外から緊迫した声が聞こえた。
「入れ!」
扉から騎士が1人入ってきた。
「はっ!失礼致します!帝国の軍が南に兵を集めております!騎士団長殿は先に出立されました!」
その報告に驚いた国王と宰相だった。
「なんだと!?規模は分かっているのか!?」
「少なくとも5千ほどは確認されております!」
宰相が騎士に怒鳴った!
「どうして気付かなかった!南の国境砦には精々200人ほどしか滞在していなかったはずだ!」
「はっ!帝国は軍を分隊に別けて、少しずつ兵士を移動させたのでは?と騎士団長が言っておりました!」
!?
「騎士団長はどれだけ連れていった?」
「すぐにかき集められる兵士3千を引き連れて行きました!」
王国も睨みあう南の国境砦に200人ほどしか詰めていない。5千もの帝国兵が攻めてこれば1日も持たずに落とされるだろう。
「残った者にも緊急徴収を掛けて、騎士団長の後を追わせろ!」
「承知しました!」
伝令の騎士は慌てて出ていった。
「どうしてこの時期に帝国が動いたんだ?」
「いえ、この時だからではないでしょうか?守りの要であるアクエリアス家が北の辺境へ移動し、現状のアクエリアス領は後任の執政官の引き継ぎが終わっていなく、何をどうしてよいのか分からない状態でしょう?」
国王は真面目な顔で宰相に尋ねた。
「やられたな。アクエリアス家の事ばかり目がいってしまって、現状のアクエリアス領の脆さを把握していなかった。………帝国は本気で領地を狩り取ってくると思うか?」
「私なら本気で取れる所まで取るでしょうな。好機ですから」
国王と宰相は騎士団長に望みを託すのであった。
しかし、帝国は南の方に意識を向ける事が目的であり、その目論みは成功したのだった。
そして王国がその事に気付くのはもう少し後の事になる。
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