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帝国の王子、遂にシオンと対面する!
しおりを挟むグランロード帝国の王子がアクエリアス家と手を結び、シオンの情報交換をしていた頃、外交でも帝国は王国に圧力を掛けていた。
「外務事務次官殿!これはどういう事ですか!我が王国の輸入品に増税するとは!?」
個人の商人の行き交いではなく、国同士の特産品の貿易において帝国は関税を数%を値上げすると言ってきた。本来であれば、疫病など起こった場合に、不用意に物を輸入しない為の処置である。
「国同士の貿易とは信頼関係が大事ですからね?」
「何を………」
王国の外交官は帝国が何を言っているのかわからなかった。
「次期王妃様を無実の罪で修道院送りにした王国は信用出来ないと言っているのですよ!」
!?
「そ、それは貴国には関係ない事であろうが!内部干渉だぞ!」
王国の外交官も自国の王子の騒動を知っていた。そして修道院送りになった次期王妃候補の令嬢が冤罪の可能性が高いことも、貴族の間で広まっていた
「そうでしょうか?もしあの【御方】が次の国王になった場合、明確な証拠もなく人を更迭する人物では、約束を平気で反故すると思いませんか?」
「………………」
王国の外交官は反論出来なかった。王子の名前を出さなかったのは嫌味でだろう。明確に反論する材料を持っていなく、顔に嫌な汗をかきながら言葉を選んで反論した。
「今はまだ現国王陛下が存命です。今後もお互いの不利益のない采配をしてくれます!」
「いやいや、実の子供の教育をまともに出来ない御方がね?いえ、これは失言でした。ただ、この件は私の一存ではないのですよ?」
「えっ?」
王国の外交官は自国の王子の失態に漬け込んで、値段を吊り上げようとしたのだと思ったのだが?
「我が帝国の皇太子様からのお達しなのです。もし、この条件が不服なら正式な手順を踏んでから抗議して頂きたい」
毎月の大きな取引自体がなくなれば、とんでもない負債が出てしまう。それは帝国も同じはずなのだが、王国より余力がある分、強気なのだろうか?
1外交官が直接王族に抗議文は送れず、宰相や国王に一筆書いて頂かないといけないため、時間が掛かる。王国の外交官は渋々、通常よりも不利な条件でサインするのだった。
・
・
・
・
・
・
・
「…………皇太子様の言う通りにサインしましたね?」
「ああそうだな。数%という大幅な増税ではなく、向こうも黒字だしサインするだろうという読みは当たったな」
帝国の外交官達は改めて自国の皇太子に敬意を払うのだった。ただ、その儲けた金額がシオン令嬢の支援金に使われることは知らなかった。
(知らぬが仏です)
そして、着々と資金を溜めアクエリアス家を援助する態勢が整って来たとき、アクエリアス家から新しい領地に鞍替えすると連絡がきたのだった。
「なんだ?領地の鞍替えとは?」
余りにない事例にカイルは使者に尋ねた。
「実は─」
!?
「ふ、ふはははは!!!!!そんな事が可能なのか?まさかそんな手で来るとは!」
修道院のある領地を手に入れて、そこに移り住むことは理解出来たが、まさか住民全てを移動させるとは思っても見なかった。
「では、こちらも少し動くとしよう」
「カイル、どうするつもりだ?」
側近は何をしようとしているのか確認した。
「南の方で戦争を始める」
!?
「お、おい!何を考えている!?」
いきなり戦争を始めると言って驚かない訳がばい。
「無論、小競り合いで終わらせるが、南で戦争が起こったため、住民が北に避難したとなれば不思議ではあるまい?」
カイルの言葉に側近も目を開いた。
「それはっ!?」
住民の大移動をカモフラージュするためにそこまでするのかよ!と、ツッコミを入れたかった。
「アクエリアス公爵様が引っ越しを完了させた後、1度シオン様をお呼びするそうですが、皇太子様も来られますか?」
「行くぞ!」
マッハで答えたカイルだった。
こうして、カイルはまたお忍びで元子爵家の【村】へ向かうのだった。ただ、シオンが3日間掛かる道のりを龍王様に運ばれた為に早く着いたので、カイルの方が遅れてくる事になってしまったのだ。
「…………おい?村って言って無かったか?」
カイルの言葉に側近も、護衛の騎士も首を傾げた。
「密偵の話しでは、1日で【村】が【城塞都市】に変わったと言っていた。まさか本当だったとは………」
呆然としていても仕方がないので、とにかく向かった。門に着くと、大きな門は開いていた。
「でかい門だな?しかも王城ほどの頑丈さだな?」
特に検問などいないので、そのまま入った。
「お待ちしておりました」
入口を入ると、セバスが出迎えた。
「貴方はアクエリアス家の………」
「はい、アクエリアス家の執事をしておりますセバスと申します。長旅、お疲れ様です!お屋敷へご案内致します」
深くお辞儀をし、慣れた仕草で誘導していった。
「セバスさん、この城塞都市は本当に1日で出来たのですか?」
セバスは意味深な表情で答えた。
「この後、修道院のある森の平野にアクエリアス領の首都を建設致します。滞在中にその目でご覧下さい」
驚きを隠せない一同は、新しいアクエリアス家の屋敷へと向かうのだった。
「あっ、セバス!お帰りなさい!お昼は私が作ったから食べてね~」
ちょうど屋敷の入口でシオンとばったり出会した。
「あれ?お客様?大変!料理を増やさないと!」
シオンは慌てて厨房に戻ろうとした所、呼び止められた。
「シオン嬢!お久しぶりです。お元気そうでなによりだ!」
カイルの呼び掛けに振り返った。
「えっ!?あれ!カイル…………?」
こうして小説の連載50話以上経って初めて、本命の王子と対面するのだった。
(※これでも当初は恋愛ジャンルだったんですよ?)
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