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閑話1(アクエリアス家)
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シオンが婚約破棄された。
私はシオンの兄クオン・アクエリアスだ。
1つだけ年上である。
シオンは『緑の癒し手』という2つ名を持っていた。植物を操るという稀な魔法を扱う事の出来る妹だった。
我が妹シオンは幼い頃から少し………いや、本人は自覚していないが、かなり変わった令嬢だった。まるで未来がわかるような行動をしてみたり、当時は誤解から夫婦仲が冷え込んでいた両親の仲を取り持つなど、子供では考えられないような行動をしてきた。
それによって我が両親はシオンを溺愛するようになった。まぁ、それは良いことなので私も否定はしない。我が天使級の可愛いシオンを冷遇するなど私が許さんがな!
シオンは本当に素晴らしい妹だった。
自らの能力を使い、飢饉を救ったばかりか、新しい農作技術を伝えて、収穫高を何倍にもした。ある時は、土壌改良をして自らが泥だらけになりながら田畑を開墾した。
公爵家という王族の血を引く最上級の令嬢でありながら、民と一緒に田畑を耕す姿を見た領民はすでに、我が父よりもシオンを『女神』として崇めている程だ。
だってそれはそうだろう?
貴族とは民から敬われるべき存在で、民に舐められれはお終いだ。しかし、シオンの緑聖魔術をその目で見れば、誰でもシオンの重要性を理解するだろう。無限に作物が成長し、必ず豊作になるのであれば農民にとって、【豊穣の女神】である。これは比喩ではなく本当にそうなのだ。
そして、そのシオンが学園に通う年齢になり、領地から離れたことで何かが変わっていった。
シオンも最初は学園に行きたくないと言っていたが、貴族である以上それは出来なかった。
そして、我が天使を無理矢理奪った王子の婚約者として王妃教育までさせられる事になった。
私達の天使の所業を知り、民に絶大な人気を誇ったシオンを王子の婚約者に添えて、王子の後ろ楯にしようと王命が下ったのだ。
私達、家族は必死に食い下がったが最後はシオンが家族の為に引き受ける事を承諾した。
(クソッ!王家と戦争しようとしたことをシオンにいうんじゃなかった!心優しいシオンがそれを認めるはずがないのに………)
シオンに戦争の準備の事を話したのは私の痛恨のミスだった。そのせいでシオンが人身御供のように婚約者になってしまった。
そして、学園生活に置いてシオンの周りに良くない噂が立ち始めた。
シオンがある令嬢を冷遇しているやら、いじめをしているやら暴力を振るっているなどという根も葉もない噂だ。そして、我が家の優秀な護衛(暗殺者)に寄れば、忙しいシオンの行方を先回りして、目の前で転んでシオンのせいにしたり、婚約者である王子に近付き親密な関係になったり、誰もいない教室で自分の教科書を破ってシオンのせいに─etc………
【ブチッ!】
うがぁーーーーー!!!
ぶっ殺していりたい!いいよな!?
私の可愛いシオンに冤罪を擦り付けたクソアバズレをぐちゃぐちゃにして豚の餌にしてやる!
と、手に剣を持って、さぁ殺るかと思ったら、クソ親父から待ったが掛かった。
王子の不貞を証拠に、シオンとの婚約を解消するように動くと言われてしぶしぶ我慢して証拠を集めた。
あのアバズレは高位の貴族の子息にばかり近付き、関係を持っていやがった。そしてこの私にも近付いて来やがった。マジで吐き気がする!
そして、証拠が集まり今度城で婚約破棄の手続きをしようとした矢先に先手を打たれた。
まさか、王族主催のパーティーで他国の使者も来ている所で、シオンに冤罪を掛けて一方的にシオンが悪いように断罪して追放しやがった!
私はパーティーに出席せず、城にて親父と婚約破棄の手続きをしていたのだ。主要な高官など出払っている時が狙い目だったからだ。余計な事を勘ぐる貴族達が居ないときに、書類を提出したのだ。
まさか、パーティー会場で婚約破棄をされて、そのまま罪人が乗る鉄格子の馬車で、国1番の辺境で厳しい修道院へ、王の許可なく王子の私兵に囲まれて、連れて行かれるなど思いもよらなかった。
シオンの周りがきな臭いので、密偵(暗殺者)は付けてあったのが幸いした。
密偵の話しでは何日も掛けて、質の悪い馬車に揺られて修道院を目指したという。しかもその道中は干し肉と硬いパンのみという、公爵令嬢の待遇とは思えぬ酷い食事だったそうだ。
極めつけは、修道院の手前の森で倒木がありドレス姿のシオン1人で修道院へ向かわせたという。
は、ははは!もう笑うしかないね。今の私にはどうやって【この国】の奴らに地獄を見せることしか考えられないよ。
あ、シオンを無事に修道院へ届けたと王子に報告させた後、その兵達は拷問してあの世へ行って貰ったよ。当然だろ?
ただ不満なのは私の母親がシオンをぞんざいに扱った王子の私兵を殺していまい、私が手を下せなかったことだ。
すでに領民達の嘆願書が山盛りアクエリアス家に届けられている。どうしてシオンが追放されたのか?どうして連れ戻さないのか?どうして豊穣の女神を追放した者達に報復しないのか?と………
【続く】
私はシオンの兄クオン・アクエリアスだ。
1つだけ年上である。
シオンは『緑の癒し手』という2つ名を持っていた。植物を操るという稀な魔法を扱う事の出来る妹だった。
我が妹シオンは幼い頃から少し………いや、本人は自覚していないが、かなり変わった令嬢だった。まるで未来がわかるような行動をしてみたり、当時は誤解から夫婦仲が冷え込んでいた両親の仲を取り持つなど、子供では考えられないような行動をしてきた。
それによって我が両親はシオンを溺愛するようになった。まぁ、それは良いことなので私も否定はしない。我が天使級の可愛いシオンを冷遇するなど私が許さんがな!
シオンは本当に素晴らしい妹だった。
自らの能力を使い、飢饉を救ったばかりか、新しい農作技術を伝えて、収穫高を何倍にもした。ある時は、土壌改良をして自らが泥だらけになりながら田畑を開墾した。
公爵家という王族の血を引く最上級の令嬢でありながら、民と一緒に田畑を耕す姿を見た領民はすでに、我が父よりもシオンを『女神』として崇めている程だ。
だってそれはそうだろう?
貴族とは民から敬われるべき存在で、民に舐められれはお終いだ。しかし、シオンの緑聖魔術をその目で見れば、誰でもシオンの重要性を理解するだろう。無限に作物が成長し、必ず豊作になるのであれば農民にとって、【豊穣の女神】である。これは比喩ではなく本当にそうなのだ。
そして、そのシオンが学園に通う年齢になり、領地から離れたことで何かが変わっていった。
シオンも最初は学園に行きたくないと言っていたが、貴族である以上それは出来なかった。
そして、我が天使を無理矢理奪った王子の婚約者として王妃教育までさせられる事になった。
私達の天使の所業を知り、民に絶大な人気を誇ったシオンを王子の婚約者に添えて、王子の後ろ楯にしようと王命が下ったのだ。
私達、家族は必死に食い下がったが最後はシオンが家族の為に引き受ける事を承諾した。
(クソッ!王家と戦争しようとしたことをシオンにいうんじゃなかった!心優しいシオンがそれを認めるはずがないのに………)
シオンに戦争の準備の事を話したのは私の痛恨のミスだった。そのせいでシオンが人身御供のように婚約者になってしまった。
そして、学園生活に置いてシオンの周りに良くない噂が立ち始めた。
シオンがある令嬢を冷遇しているやら、いじめをしているやら暴力を振るっているなどという根も葉もない噂だ。そして、我が家の優秀な護衛(暗殺者)に寄れば、忙しいシオンの行方を先回りして、目の前で転んでシオンのせいにしたり、婚約者である王子に近付き親密な関係になったり、誰もいない教室で自分の教科書を破ってシオンのせいに─etc………
【ブチッ!】
うがぁーーーーー!!!
ぶっ殺していりたい!いいよな!?
私の可愛いシオンに冤罪を擦り付けたクソアバズレをぐちゃぐちゃにして豚の餌にしてやる!
と、手に剣を持って、さぁ殺るかと思ったら、クソ親父から待ったが掛かった。
王子の不貞を証拠に、シオンとの婚約を解消するように動くと言われてしぶしぶ我慢して証拠を集めた。
あのアバズレは高位の貴族の子息にばかり近付き、関係を持っていやがった。そしてこの私にも近付いて来やがった。マジで吐き気がする!
そして、証拠が集まり今度城で婚約破棄の手続きをしようとした矢先に先手を打たれた。
まさか、王族主催のパーティーで他国の使者も来ている所で、シオンに冤罪を掛けて一方的にシオンが悪いように断罪して追放しやがった!
私はパーティーに出席せず、城にて親父と婚約破棄の手続きをしていたのだ。主要な高官など出払っている時が狙い目だったからだ。余計な事を勘ぐる貴族達が居ないときに、書類を提出したのだ。
まさか、パーティー会場で婚約破棄をされて、そのまま罪人が乗る鉄格子の馬車で、国1番の辺境で厳しい修道院へ、王の許可なく王子の私兵に囲まれて、連れて行かれるなど思いもよらなかった。
シオンの周りがきな臭いので、密偵(暗殺者)は付けてあったのが幸いした。
密偵の話しでは何日も掛けて、質の悪い馬車に揺られて修道院を目指したという。しかもその道中は干し肉と硬いパンのみという、公爵令嬢の待遇とは思えぬ酷い食事だったそうだ。
極めつけは、修道院の手前の森で倒木がありドレス姿のシオン1人で修道院へ向かわせたという。
は、ははは!もう笑うしかないね。今の私にはどうやって【この国】の奴らに地獄を見せることしか考えられないよ。
あ、シオンを無事に修道院へ届けたと王子に報告させた後、その兵達は拷問してあの世へ行って貰ったよ。当然だろ?
ただ不満なのは私の母親がシオンをぞんざいに扱った王子の私兵を殺していまい、私が手を下せなかったことだ。
すでに領民達の嘆願書が山盛りアクエリアス家に届けられている。どうしてシオンが追放されたのか?どうして連れ戻さないのか?どうして豊穣の女神を追放した者達に報復しないのか?と………
【続く】
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