悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft

文字の大きさ
上 下
15 / 100

閑話1(アクエリアス家)

しおりを挟む
シオンが婚約破棄された。

私はシオンの兄クオン・アクエリアスだ。
1つだけ年上である。
シオンは『緑の癒し手』という2つ名を持っていた。植物を操るという稀な魔法を扱う事の出来る妹だった。

我が妹シオンは幼い頃から少し………いや、本人は自覚していないが、かなり変わった令嬢だった。まるで未来がわかるような行動をしてみたり、当時は誤解から夫婦仲が冷え込んでいた両親の仲を取り持つなど、子供では考えられないような行動をしてきた。

それによって我が両親はシオンを溺愛するようになった。まぁ、それは良いことなので私も否定はしない。我が天使級の可愛いシオンを冷遇するなど私が許さんがな!

シオンは本当に素晴らしい妹だった。
自らの能力を使い、飢饉を救ったばかりか、新しい農作技術を伝えて、収穫高を何倍にもした。ある時は、土壌改良をして自らが泥だらけになりながら田畑を開墾した。

公爵家という王族の血を引く最上級の令嬢でありながら、民と一緒に田畑を耕す姿を見た領民はすでに、我が父よりもシオンを『女神』として崇めている程だ。

だってそれはそうだろう?

貴族とは民から敬われるべき存在で、民に舐められれはお終いだ。しかし、シオンの緑聖魔術をその目で見れば、誰でもシオンの重要性を理解するだろう。無限に作物が成長し、必ず豊作になるのであれば農民にとって、【豊穣の女神】である。これは比喩ではなく本当にそうなのだ。

そして、そのシオンが学園に通う年齢になり、領地から離れたことで何かが変わっていった。

シオンも最初は学園に行きたくないと言っていたが、貴族である以上それは出来なかった。

そして、我が天使を無理矢理奪った王子の婚約者として王妃教育までさせられる事になった。

私達の天使の所業を知り、民に絶大な人気を誇ったシオンを王子の婚約者に添えて、王子の後ろ楯にしようと王命が下ったのだ。
私達、家族は必死に食い下がったが最後はシオンが家族の為に引き受ける事を承諾した。
(クソッ!王家と戦争しようとしたことをシオンにいうんじゃなかった!心優しいシオンがそれを認めるはずがないのに………)

シオンに戦争の準備の事を話したのは私の痛恨のミスだった。そのせいでシオンが人身御供のように婚約者になってしまった。

そして、学園生活に置いてシオンの周りに良くない噂が立ち始めた。

シオンがある令嬢を冷遇しているやら、いじめをしているやら暴力を振るっているなどという根も葉もない噂だ。そして、我が家の優秀な護衛(暗殺者)に寄れば、忙しいシオンの行方を先回りして、目の前で転んでシオンのせいにしたり、婚約者である王子に近付き親密な関係になったり、誰もいない教室で自分の教科書を破ってシオンのせいに─etc………

【ブチッ!】
うがぁーーーーー!!!

ぶっ殺していりたい!いいよな!?
私の可愛いシオンに冤罪を擦り付けたクソアバズレをぐちゃぐちゃにして豚の餌にしてやる!

と、手に剣を持って、さぁ殺るかと思ったら、クソ親父から待ったが掛かった。
王子の不貞を証拠に、シオンとの婚約を解消するように動くと言われてしぶしぶ我慢して証拠を集めた。
あのアバズレは高位の貴族の子息にばかり近付き、関係を持っていやがった。そしてこの私にも近付いて来やがった。マジで吐き気がする!

そして、証拠が集まり今度城で婚約破棄の手続きをしようとした矢先に先手を打たれた。

まさか、王族主催のパーティーで他国の使者も来ている所で、シオンに冤罪を掛けて一方的にシオンが悪いように断罪して追放しやがった!

私はパーティーに出席せず、城にて親父と婚約破棄の手続きをしていたのだ。主要な高官など出払っている時が狙い目だったからだ。余計な事を勘ぐる貴族達が居ないときに、書類を提出したのだ。

まさか、パーティー会場で婚約破棄をされて、そのまま罪人が乗る鉄格子の馬車で、国1番の辺境で厳しい修道院へ、王の許可なく王子の私兵に囲まれて、連れて行かれるなど思いもよらなかった。

シオンの周りがきな臭いので、密偵(暗殺者)は付けてあったのが幸いした。

密偵の話しでは何日も掛けて、質の悪い馬車に揺られて修道院を目指したという。しかもその道中は干し肉と硬いパンのみという、公爵令嬢の待遇とは思えぬ酷い食事だったそうだ。

極めつけは、修道院の手前の森で倒木がありドレス姿のシオン1人で修道院へ向かわせたという。

は、ははは!もう笑うしかないね。今の私にはどうやって【この国】の奴らに地獄を見せることしか考えられないよ。

あ、シオンを無事に修道院へ届けたと王子に報告させた後、その兵達は拷問してあの世へ行って貰ったよ。当然だろ?
ただ不満なのは私の母親がシオンをぞんざいに扱った王子の私兵を殺していまい、私が手を下せなかったことだ。

すでに領民達の嘆願書が山盛りアクエリアス家に届けられている。どうしてシオンが追放されたのか?どうして連れ戻さないのか?どうして豊穣の女神を追放した者達に報復しないのか?と………


【続く】


しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...