悪役令嬢の追放エンド………修道院が無いじゃない!(はっ!?ここを楽園にしましょう♪

naturalsoft

文字の大きさ
上 下
1 / 100

プロローグ

しおりを挟む


ガタガタッ!
ゴトゴトッ!

私は今、馬車に揺られながらこの国の最北端にある修道院へと向かっている。

はぁ~=3

「こんなはずじゃ無かったのになぁ~」

何度目かのため息を付いた後に呟いた。
私は敗れたのだ。
ただ、言い訳をさせてもらうと、ライバルに負けたのやら政治的やり取りで負けたのなら100歩譲って許せる。

しかし─

「イベントの強制力に負けたってのは承服できーーーーーん!!!!!」

ざわざわ
ざわざわ

「煩いぞ!静かにしろっ!」

護衛の兵士に叱られた。
(まぁ、護衛っていうより逃がさないための兵士なんだけどね!)

私はどうしてこういう状況になったのか思い出してみた。












これは、この国の貴族が通う学園での出来事だった。

我が国では12歳になる子供達は王立の学園へ入学する決まりがあった。すでに各家で家庭教師を付けて知識を付けているが、将来の人脈作りの為が大きな所である。ここで人脈を作り貴族社会での立ち位置を作っていくのだ。

そして私、シオン・アクエリアスはアクエリアス公爵家の長女であり、この国の第一王子であるエリック・ファーランドの婚約者で【あった】。(過去形)

王太子妃になるべく、それはもう厳しい指導を受けて立派な淑女へと邁進してまいりました。しかし、ピンクブロンドの変わった髪の色をした少女・ヒロインが転入して来てから運命は変わり始めました。
元は平民として暮らしていて、男爵家に引き取られたヒロインのアリアは私の婚約者であるエリックに近付き、心を奪っていったのです。

しかし、私も黙って見ていた訳ではありません!ここが【ゲームの世界観】の中だと知っている数少ない【転生者の1人】として、運命に抗いましたわ。

出逢いのイベントでは、エリック王子と一緒に登校したのに、忘れ物をしたと急にエリックが馬車の所へ走って戻った所で、ヒロインとぶつかりイベント成立!

魔法属性イベントでは、ヒロインが聖属性の力を持っている事が判明して騒ぎになる所で、エリックを別の場所に呼び出してその場に居ないようにしても【偶々】具合が悪くなり、保険室でヒロインが回復魔法を使って好感度を上げてくるし!

街中の遭遇イベントでは─etc……

はぁ、もう思い出すのも億劫ですわね。
極めつけは、王族主催のダンスパーティーでの婚約破棄イベントですわ!今、思い出してもムカッ腹立が立ちます!

あること無いこと罪をでっち上げて、私を断罪して!大体、本当の悪役令嬢と違って私はイジメなど行っていないのですからね!
ヒロインのアリアが目の前で【勝手】に転んだら、私が突き倒したと責められるわ。成績で首席を取ればカンニングなどの不正をしただのと………てめぇらこそヒロインと遊んで成績下がったら、絆された教師が点数をかさ上げして貰ったろーが!!!!!

ハァハァ………!!!

でも、断罪イベントでは唯一誤算があったのは家族が庇ってくれた事だった。両親を始め、攻略対象者の兄も私の擁護をしてくれた事だ。
そのせいでアクエリアス公爵家を取り潰すと喚き出したことで、私は全ての罪を【否定】した上で辺境の修道院送りを認めたのだ。

「はぁ~、厳しい教育から逃れられたし質素に暮らせるのも悪くないかな?」
(まぁ、限度があるけれど)

でも、まだ着かないのかしら?最後に街(村)に着いてから3日は経っているのだけれど?

そう思っているとヒヒィーン!と、馬車が急停止した。

「うわっと………何事?」

鉄格子ような小さな窓から外を見ると、鋪装もされていない獣道に近い馬車1台分だけ通れるような道に、大木が倒れて通れなくなっていた。左右は深い森の木々で覆われ迂回は不可能だった。

「おい、どうする?」

護衛の兵士の相談声が聞こえる。少しして─

「おいっ!出ろ!!!」

突然、馬車のドアが開き馬車から降ろされた。

「倒木のせいでこのまま進めない。Uターンも出来ないため、馬を切り離し馬車は捨てていく!地図ではもう少し先に北方修道院『シャングリラ』がある事になっている。お前はここから1人で向かえ!」

あら?シャングリラなんて洒落た名前の修道院なのね。ってじゃなーい!!!!!
ここから1人で向かえっていった?言ったよね!?

「えっ?ここから1人で?」

「ああ、【地図】ではすぐ先のようだ。まぁ、逃げようとは思わない事だ。馬もなしに水、食料もなしで引き返しても、道に迷って野垂れ死ぬのが落ちだ」

兵士達は次々に馬で引き返していった。

「修道院へ行けば食事ぐらいは出よう!大人しく向かえ!」

そして、馬車の従者を馬に乗せ最後の兵士も去っていった。

「マジで?私、質素とはいえドレスなんだけど?」

私は途方に暮れても仕方がないので行動を開始した。いちを馬車の中には立ち寄った村で買った干し肉と硬いパンが少し残っていた。

倒木を乗り越え、道なき道を歩いていくことになった。












おかしいわ?あの倒木の折れ目から見て、倒れたのはずいぶん前のようだわ。ときどき足りない食料や生活物資を買いに来ていると聞いていたけれど…………どうやって行き来をしていたのかしら?まさか、別のルートがある?

その時、私は嫌な予感を感じて背筋に嫌な汗をかいた。

「いや、あの兵士達の表情も予想外の様だったはず………私を亡き者にしようとしての行動ではない。ただ、道を間違えただけなのかしら?」

しかし、すでに前に進むしか無い私は歩き続けた。

30分ほど歩いて行くと、光が射してきた。森の出口が近い!

森から抜けるとそこには─

半分崩れ落ちた修道院がありましたとさ。
手入れされていない田畑や家庭菜園や、雑草が覆い繁る状態から誰もいない事が見て取れた。

why?

何これ?なにこれ??ナニコレ???

これが後に『シャングリラ桃源郷』を見た私の最初の感想であった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お読み頂きありがとうございます!
これから楽しんで頂ければと思います!

『よろしければ感想、お気に入り、よろしくお願いします!』
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

処理中です...