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過去編
意外な軍師
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シオンは他の治療班からも一目置かれた。
「シオン皇妃様は素晴らしいですわ!本業の私達より回復魔法に優れているなんて!?」
「カイル皇王様も武勇に優れていましたが、何よりも、私達の為に行動してくれるその御心が嬉しく思います」
「本当にそうだよな。オレ達の為に危険な所まできてくれて感謝しかないよ」
元気になった兵士達は、砦のあっちこっちでシオン達を褒め讃える声が聞こえてきた。
「あらあら、少し恥ずかしいですわね」
「何をおっしゃるのですか!全てシオン皇妃様の行動に皆が感謝しているのですよ!」
シオンは後数日したら王都へ戻る予定だ。
短期でいる私にここまで持ち上げられて少し居心地が悪くなった。
そして遂に、新たな『エルザ国王軍』(こくおうぐん)と、名を変えて攻めてきた。
「大変です!エルザ軍が攻めてきました!」
伝令の兵が慌ててやってきた。
「遂に来ましたか。大丈夫です。すでに多くの兵士は体力を回復し、城門の修理も終えています。将軍の命令に従い迎撃して下さい」
「えっ…………あ、はい!」
シオンの余りの落ち着いた雰囲気に呆然としてしまった伝令だったが、すぐに次の報告に掛けて行った。
「さて、マーチス将軍の居ない国王軍がどれだけのものか見せて貰いましょう」
シオンは呟くと城壁へと向かった。
「シオン皇妃様!すぐに砦からお逃げ下さい!我々がエルザ軍を食い止めますので!」
多くの兵がシオンに逃げろと進言してきたが、シオンは静かに首を振った。
「国のトップである王族が逃げてどうするのですか!確かに私には戦う力はありません!しかし、国を守ろうとする貴方達を置いて逃げるような卑怯者ではありません!最後まで共に戦いましょう!」
お………オオオオオオォォォォォォォォオオオ!!!!!!!
砦中から歓声が響き渡った。
「シオン皇妃様に傷1つ付けるな!」
「シオン皇妃様に勝利を捧げます!!!」
士気が上がり、兵士達が戦の準備に駆け回る中で将軍が声を掛けた。
「あら?グレン将軍、どうされました?」
「いえ、カイル皇王様にも進言しましたが、シオン皇妃様の方が人心を掌握する術が御上手なようですな」
「フフフッ、グレン将軍の『情報』のお陰で勝ち戦の確率が高いのです。ただ勝つよりは、王権の忠誠心を上げる為に、行動するのは皇妃として当然の役目ですわ」
マーチス将軍を更迭して、指揮を取っているのは国王の元でぬくぬくと甘い汁を吸っていた無能な高官達。さらに、仲間を見捨てずに殿まで務めたマーチス将軍を捕まえた近衛騎士団の指示の元では士気は極めて低い。
更には、向こうはろくに斥候も放ってなく、こちらは向こうの情報聴き放題な状態。
私が到着してすぐにグレン将軍がエルザ軍の侵攻が近い事を打ち明け、すぐに密偵を放ち、敵の内部情報を精査した所、勝てると判断したのだ。
「さぁ、戦争を始めましょう」
シオンは顔は決死の覚悟の顔であったが、心では不敵の笑みを浮かべていたのだった。
「シオン皇妃様は素晴らしいですわ!本業の私達より回復魔法に優れているなんて!?」
「カイル皇王様も武勇に優れていましたが、何よりも、私達の為に行動してくれるその御心が嬉しく思います」
「本当にそうだよな。オレ達の為に危険な所まできてくれて感謝しかないよ」
元気になった兵士達は、砦のあっちこっちでシオン達を褒め讃える声が聞こえてきた。
「あらあら、少し恥ずかしいですわね」
「何をおっしゃるのですか!全てシオン皇妃様の行動に皆が感謝しているのですよ!」
シオンは後数日したら王都へ戻る予定だ。
短期でいる私にここまで持ち上げられて少し居心地が悪くなった。
そして遂に、新たな『エルザ国王軍』(こくおうぐん)と、名を変えて攻めてきた。
「大変です!エルザ軍が攻めてきました!」
伝令の兵が慌ててやってきた。
「遂に来ましたか。大丈夫です。すでに多くの兵士は体力を回復し、城門の修理も終えています。将軍の命令に従い迎撃して下さい」
「えっ…………あ、はい!」
シオンの余りの落ち着いた雰囲気に呆然としてしまった伝令だったが、すぐに次の報告に掛けて行った。
「さて、マーチス将軍の居ない国王軍がどれだけのものか見せて貰いましょう」
シオンは呟くと城壁へと向かった。
「シオン皇妃様!すぐに砦からお逃げ下さい!我々がエルザ軍を食い止めますので!」
多くの兵がシオンに逃げろと進言してきたが、シオンは静かに首を振った。
「国のトップである王族が逃げてどうするのですか!確かに私には戦う力はありません!しかし、国を守ろうとする貴方達を置いて逃げるような卑怯者ではありません!最後まで共に戦いましょう!」
お………オオオオオオォォォォォォォォオオオ!!!!!!!
砦中から歓声が響き渡った。
「シオン皇妃様に傷1つ付けるな!」
「シオン皇妃様に勝利を捧げます!!!」
士気が上がり、兵士達が戦の準備に駆け回る中で将軍が声を掛けた。
「あら?グレン将軍、どうされました?」
「いえ、カイル皇王様にも進言しましたが、シオン皇妃様の方が人心を掌握する術が御上手なようですな」
「フフフッ、グレン将軍の『情報』のお陰で勝ち戦の確率が高いのです。ただ勝つよりは、王権の忠誠心を上げる為に、行動するのは皇妃として当然の役目ですわ」
マーチス将軍を更迭して、指揮を取っているのは国王の元でぬくぬくと甘い汁を吸っていた無能な高官達。さらに、仲間を見捨てずに殿まで務めたマーチス将軍を捕まえた近衛騎士団の指示の元では士気は極めて低い。
更には、向こうはろくに斥候も放ってなく、こちらは向こうの情報聴き放題な状態。
私が到着してすぐにグレン将軍がエルザ軍の侵攻が近い事を打ち明け、すぐに密偵を放ち、敵の内部情報を精査した所、勝てると判断したのだ。
「さぁ、戦争を始めましょう」
シオンは顔は決死の覚悟の顔であったが、心では不敵の笑みを浮かべていたのだった。
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