45 / 117
告白と想いの行方は──
しおりを挟む
ペルセウスと張り合っていたルイン王子が演奏の終わったシオンに近付いていった。
「凄いなシオンは」
そう言うルイン王子にシオンはガシッと両肩を掴んで言った。
「貴方は兄なんです!妹が苦しんでいる時に支えてあげなくてどうするんですか!たった1人の妹も守れなくて、国を背負って守れるはずがありません!」
ルイン王子は頭をガツンッと殴られたような衝撃が走った。
「貴方は優秀です!勉強に、剣術とひいき目抜きで同世代ではトップでしょう。しかし、人の心が!気持ちが!分からなければ誰も付いて来てくれません!もっと、周りに気を配って下さい!」
シオンは真っ直ぐに目を見詰めて言った。
「…………はい」
ルインは反射的に返事をするだけで、呆然としていた。
「まったく、ワシの子供の癖に子育てが下手過ぎるじゃろう」
「ホホホッ、シオン様は幼くなってもお母さんですなぁ~」
物影から見守っていた先王とワイズ殿が微笑ましい光景に笑っていた。
「…………しかし、少し王宮を見てないだけで、イオンの家庭教師に自分の『駒』を送ってくるものがおるとは1度、大掃除せねばならぬかのぅ?」
「ちょうど守護精霊アリエル様が降臨されたばかりです。野心ある貴族を牽制するには絶好の機会でしょうな」
皇家の後ろには守護精霊様がついていると知ったはずだからだ。これで、皇家の力はしばらくは健在だろう。
先王とワイズ殿が話していると、大きな声が聞こえてきた。
「感動した!惚れたぞ!シオン・イージス子爵令嬢!俺と結婚してくれっ!!!」
なんだと!?
先王は慌ててシオンの元に向かった。
「ルイン!?いきなり何を言っているんだ!」
「父上!俺はシオン令嬢に惚れました!せめて婚約させて下さい!」
ルーク皇王はシオンを見ると静かに首を振った。
「落ち着きなさい。シオン令嬢だけはダメなんだ!」
「どうしてですか!?」
噛みつくルインに諭すように言った。
「シオン令嬢は守護精霊アリエル様の『愛し子』だからだ。アリエル様も静かに暮らせるように手を貸しなさいと言っていたからだ。王族に嫁げば静かな暮らしはできなくなるからな」
「「守護精霊アリエル様の愛し子!!!?」」
イオンとルインは驚きの声を上げた。
「あ、あははそういう事なの。だからごめんなさいね」
そう言うシオンに、諦めれないルインが手を握って言った。
「なら、時間を掛けてシオンに好きになってもらうよ。シオン令嬢が望めば問題ないだろう?」
え゛っ!?
ルインの言葉に固まってしまう。
「お兄様、無理強いはダメですよ!」
兄を止めようとしたイオン皇女に──
コソッ
「俺とシオンが結ばれれば、イオンもシオンと一緒に居られるぞ。協力してくれないか?」
!?
「はいっ!協力致します!」
秒で仲間になったイオン皇女であった。
なかなかの腹黒王子である。
「気持ちは嬉しいのですが、今は何を言われても同意できませんわ。だって、私には心から愛している人がいるのですもの♪」
チラッと頬を赤めて先王を見るシオンは妖艶な美しさがあった。
それは誰だ!?
シオンの想い人は誰だと聞き返そうとしたとき、シオンは逃げ出していた。
「「えっ?」」
ダーーーーッシュ!!!
恥ずかしいですわ~!
シオンは真っ赤にした顔を両手で隠しながら走っていった。
「だ、誰なんだーーーーー!!!!!」
ルイン王子とイオン皇女は知らないのだ。
シオンが、父上の母親の記憶を受継いている事を。
「グフッ!?」
先王もいきなりの不意打ちに胸を抑えた。
「まったく愛されておりますなぁ~」
「…………嬉しいのじゃが、心臓が持たんわい」
先王は理解しているのだ。
自分もシオンを愛している。しかし、同じ時を歩む事はできないのだ。
守護精霊アリエル様には奇跡を起こしてくれて感謝している反面、残酷な御業(みわざ)に恨みもした。
どうして自分もと、願わずにいられなかった。
しかし、無理して頑張っていた妻のシオンの事に気が付かなかった。
これが罪の償いと言うならどんなに残酷な事か。
自分の我儘でシオンの将来を閉ざす訳にはいかない。しかし、愛するシオンが他の男性と結婚し、幸せな家庭を築くのを見ていられるだろうか?
今は、問題の先送りをして、今の想いと関係を胸に秘めて一緒に過ごしていくだけであった。
「凄いなシオンは」
そう言うルイン王子にシオンはガシッと両肩を掴んで言った。
「貴方は兄なんです!妹が苦しんでいる時に支えてあげなくてどうするんですか!たった1人の妹も守れなくて、国を背負って守れるはずがありません!」
ルイン王子は頭をガツンッと殴られたような衝撃が走った。
「貴方は優秀です!勉強に、剣術とひいき目抜きで同世代ではトップでしょう。しかし、人の心が!気持ちが!分からなければ誰も付いて来てくれません!もっと、周りに気を配って下さい!」
シオンは真っ直ぐに目を見詰めて言った。
「…………はい」
ルインは反射的に返事をするだけで、呆然としていた。
「まったく、ワシの子供の癖に子育てが下手過ぎるじゃろう」
「ホホホッ、シオン様は幼くなってもお母さんですなぁ~」
物影から見守っていた先王とワイズ殿が微笑ましい光景に笑っていた。
「…………しかし、少し王宮を見てないだけで、イオンの家庭教師に自分の『駒』を送ってくるものがおるとは1度、大掃除せねばならぬかのぅ?」
「ちょうど守護精霊アリエル様が降臨されたばかりです。野心ある貴族を牽制するには絶好の機会でしょうな」
皇家の後ろには守護精霊様がついていると知ったはずだからだ。これで、皇家の力はしばらくは健在だろう。
先王とワイズ殿が話していると、大きな声が聞こえてきた。
「感動した!惚れたぞ!シオン・イージス子爵令嬢!俺と結婚してくれっ!!!」
なんだと!?
先王は慌ててシオンの元に向かった。
「ルイン!?いきなり何を言っているんだ!」
「父上!俺はシオン令嬢に惚れました!せめて婚約させて下さい!」
ルーク皇王はシオンを見ると静かに首を振った。
「落ち着きなさい。シオン令嬢だけはダメなんだ!」
「どうしてですか!?」
噛みつくルインに諭すように言った。
「シオン令嬢は守護精霊アリエル様の『愛し子』だからだ。アリエル様も静かに暮らせるように手を貸しなさいと言っていたからだ。王族に嫁げば静かな暮らしはできなくなるからな」
「「守護精霊アリエル様の愛し子!!!?」」
イオンとルインは驚きの声を上げた。
「あ、あははそういう事なの。だからごめんなさいね」
そう言うシオンに、諦めれないルインが手を握って言った。
「なら、時間を掛けてシオンに好きになってもらうよ。シオン令嬢が望めば問題ないだろう?」
え゛っ!?
ルインの言葉に固まってしまう。
「お兄様、無理強いはダメですよ!」
兄を止めようとしたイオン皇女に──
コソッ
「俺とシオンが結ばれれば、イオンもシオンと一緒に居られるぞ。協力してくれないか?」
!?
「はいっ!協力致します!」
秒で仲間になったイオン皇女であった。
なかなかの腹黒王子である。
「気持ちは嬉しいのですが、今は何を言われても同意できませんわ。だって、私には心から愛している人がいるのですもの♪」
チラッと頬を赤めて先王を見るシオンは妖艶な美しさがあった。
それは誰だ!?
シオンの想い人は誰だと聞き返そうとしたとき、シオンは逃げ出していた。
「「えっ?」」
ダーーーーッシュ!!!
恥ずかしいですわ~!
シオンは真っ赤にした顔を両手で隠しながら走っていった。
「だ、誰なんだーーーーー!!!!!」
ルイン王子とイオン皇女は知らないのだ。
シオンが、父上の母親の記憶を受継いている事を。
「グフッ!?」
先王もいきなりの不意打ちに胸を抑えた。
「まったく愛されておりますなぁ~」
「…………嬉しいのじゃが、心臓が持たんわい」
先王は理解しているのだ。
自分もシオンを愛している。しかし、同じ時を歩む事はできないのだ。
守護精霊アリエル様には奇跡を起こしてくれて感謝している反面、残酷な御業(みわざ)に恨みもした。
どうして自分もと、願わずにいられなかった。
しかし、無理して頑張っていた妻のシオンの事に気が付かなかった。
これが罪の償いと言うならどんなに残酷な事か。
自分の我儘でシオンの将来を閉ざす訳にはいかない。しかし、愛するシオンが他の男性と結婚し、幸せな家庭を築くのを見ていられるだろうか?
今は、問題の先送りをして、今の想いと関係を胸に秘めて一緒に過ごしていくだけであった。
19
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
王太子妃候補クララの恋愛事情~政略結婚なんてお断りします~
鈴宮(すずみや)
恋愛
王族の秘書(=内侍)として城へ出仕することになった、公爵令嬢クララ。ところが内侍は、未来の妃に箔を付けるために設けられた役職だった。
おまけに、この国の王太子は未だ定まっておらず、宰相の娘であるクララは第3王子フリードの内侍兼仮の婚約者として王位継承戦へと巻き込まれていくことに。
けれど、運命の出会いを求めるクララは、政略結婚を受け入れるわけにはいかない。憧れだった宮仕えを諦めて、城から立ち去ろうと思っていたのだが。
「おまえはおまえの目的のために働けばいい」
フリードの側近、コーエンはそう言ってクララに手を差し伸べる。これはフリードが王太子の座を獲得するまでの期間限定の婚約。その間にクララは城で思う存分運命の出会いを探せば良いと言うのだ。
クララは今日も、運命の出会いと婚約破棄を目指して邁進する。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる