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追い詰められる
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シオン達は、ようやく銀貨1枚で卸していた地酒を銀貨5枚に上げると言ったばかりだった。それがさらに倍の金貨1枚で卸して欲しいという提案に困惑した。
「アルト──王弟殿下、実は最近の領内の民の反応を見て銀貨5枚に値上しようと話していた所なのですが、それが倍の金貨1枚で卸すのは民にとって負担ではないでしょうか?」
シオンは、つい息子を名前で呼び捨てしようとして言い直した。
「確かにそれはありますね。しかし、良い物を安く売られては他の商品が売れません。適正価格と言うものがあります。この地酒『精霊の水』は最低でも金貨1枚以上の価値があります。あくまで卸値が金貨1枚です。そこから各酒屋で売られるのは送料や店の利益を入れると金貨3~5枚で店頭に並ぶでしょう。この地酒にはそれだけの価値があります。それ以下で売ってしまえば、他の酒類が売れず倒産してしまうぐらいには」
えっ!?
そこまで美味しいのですか!
ぜひとも飲んでみたいですわ♪
お父様にギロッと睨まれました。
まだダメと言う事ですわね。
ショボーン
はやく大人になりたいですわ…………ジュルリ
「お父様、悪い話ではありませんし、王弟殿下の提案に乗っても良いと思いますわ。価格が急に上がった理由については王室からの打診があったと言い訳してもよろしいのでしょう?」
「それは無論。ああ、この紅茶は変わった味がしますね。とても美味しいです」
「ふふふっ、お父様はお茶を煎れるのが上手なのですわ♪」
シオンは両手を使い、お茶のカップの下にあるお皿を持って自分の前に持っていきお茶に口を付けた。
その様子を見てアルトは人払いをさせた。
応接室にはシオンとイージス男爵、先王、アルトの4人だけが残った。
「さて、私の用事は済みました。再度問いましょう。目の前の『母上』はどういう事ですか?」
「あ、ああああアルトでで、殿下!な、何を仰っているのですか!?私はまだ5歳です!母親な訳ないでしょう!」
明らかに動揺しているシオンにアルトは指摘した。
「そうですね。ただの5歳が父親に意見しますか?兄上の子供ですらここまで礼儀正しくないですよ?それに、お茶を飲む仕草が母上そっくりではありませんか。貴族の子供とて僅か5歳で、カップの皿を持ちながらお茶を飲む作法ができる者がどれほどいることやら」
!?
えっ、なに?この名推理!?
シオンはチラチラッと先王を見た。
「コホンッ、アルトよ。どうしたと言うのじゃ?この子供がお前の母親な訳あるまい。ただ名前が同じなだけじゃ」
先王は真っ当な意見を述べた。
「では父上もどうして突然に、このイージス男爵領に隠居したのですか?」
「そ、それはワシも年じゃし、アリエル様の仰った上級薬草の栽培を最後の手土産にしようと決めただけじゃ」
先王も少し動揺しながら答えた。
「「特にやましい事などないの(じゃ!)」」
引き攣った笑い声?が同時に響いた。
「よく、『二人』とも王宮で政治的駆け引きができてましたね………」
アルトは二人の様子を見て深いため息を付いた。ここでイージス男爵が初めて口を出した。
「アルト王弟殿下は、このような常識外れな出来事に確信があるような様子ですな?」
不敵に微笑むアルトにイージス男爵の指摘が入った。
「アルト──王弟殿下、実は最近の領内の民の反応を見て銀貨5枚に値上しようと話していた所なのですが、それが倍の金貨1枚で卸すのは民にとって負担ではないでしょうか?」
シオンは、つい息子を名前で呼び捨てしようとして言い直した。
「確かにそれはありますね。しかし、良い物を安く売られては他の商品が売れません。適正価格と言うものがあります。この地酒『精霊の水』は最低でも金貨1枚以上の価値があります。あくまで卸値が金貨1枚です。そこから各酒屋で売られるのは送料や店の利益を入れると金貨3~5枚で店頭に並ぶでしょう。この地酒にはそれだけの価値があります。それ以下で売ってしまえば、他の酒類が売れず倒産してしまうぐらいには」
えっ!?
そこまで美味しいのですか!
ぜひとも飲んでみたいですわ♪
お父様にギロッと睨まれました。
まだダメと言う事ですわね。
ショボーン
はやく大人になりたいですわ…………ジュルリ
「お父様、悪い話ではありませんし、王弟殿下の提案に乗っても良いと思いますわ。価格が急に上がった理由については王室からの打診があったと言い訳してもよろしいのでしょう?」
「それは無論。ああ、この紅茶は変わった味がしますね。とても美味しいです」
「ふふふっ、お父様はお茶を煎れるのが上手なのですわ♪」
シオンは両手を使い、お茶のカップの下にあるお皿を持って自分の前に持っていきお茶に口を付けた。
その様子を見てアルトは人払いをさせた。
応接室にはシオンとイージス男爵、先王、アルトの4人だけが残った。
「さて、私の用事は済みました。再度問いましょう。目の前の『母上』はどういう事ですか?」
「あ、ああああアルトでで、殿下!な、何を仰っているのですか!?私はまだ5歳です!母親な訳ないでしょう!」
明らかに動揺しているシオンにアルトは指摘した。
「そうですね。ただの5歳が父親に意見しますか?兄上の子供ですらここまで礼儀正しくないですよ?それに、お茶を飲む仕草が母上そっくりではありませんか。貴族の子供とて僅か5歳で、カップの皿を持ちながらお茶を飲む作法ができる者がどれほどいることやら」
!?
えっ、なに?この名推理!?
シオンはチラチラッと先王を見た。
「コホンッ、アルトよ。どうしたと言うのじゃ?この子供がお前の母親な訳あるまい。ただ名前が同じなだけじゃ」
先王は真っ当な意見を述べた。
「では父上もどうして突然に、このイージス男爵領に隠居したのですか?」
「そ、それはワシも年じゃし、アリエル様の仰った上級薬草の栽培を最後の手土産にしようと決めただけじゃ」
先王も少し動揺しながら答えた。
「「特にやましい事などないの(じゃ!)」」
引き攣った笑い声?が同時に響いた。
「よく、『二人』とも王宮で政治的駆け引きができてましたね………」
アルトは二人の様子を見て深いため息を付いた。ここでイージス男爵が初めて口を出した。
「アルト王弟殿下は、このような常識外れな出来事に確信があるような様子ですな?」
不敵に微笑むアルトにイージス男爵の指摘が入った。
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