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1章:過去編
過去編~新たな国の始まり
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まさか、兵を挙げて王都に行くなんて考えて無かったな。そう呟くと、隣にいたシリカが馬に揺られながら答えた。
「そうよね~まさか連合軍を駆逐して逆に攻め込むなんて考えないわよ・・・普通はね」
少し呆れ気味に答える
「こら!攻め込む訳じゃないぞ?国王陛下に直談判するための脅しで連れて来たんだからな」
いや、同じ事だろう?と、その場にいた者達は思った。連合軍が攻めて来て、殆ど時間を置かずにこちらから攻め込むんだ。今頃、城では戦勝パーティーでも開かれているんじゃ無いのか?その会場に乱入してこちらの言い分を聞かせる。さぞ驚くだろうな!城の城門はシリカに任せる事とする。
「シリカ、頼んだよ!」
「うん!任された!殺っちゃって良いんだよね!」
「殺ったらダメだから!?なるべく殺さずに気絶させるようにやっちゃってね?」
シリカのお茶目に少し震えたが、周りには笑いが広がりピリピリした感じが和らいだ。
「もうすぐ王都ですが、どうされるのですか?街の門は昼間なので開いていますが、この軍勢を見ればすぐに閉じられるでしょう」
いつの間にか下級貴族のまとめ役になったグラン男爵が尋ねる。
「今もシリカと話していたが、2つ考えがある。既に工作しているので、上手く行けばこのまま街の門はくぐれる。閉まっている場合はシリカにぶち抜いて貰うから」
「普通はあの分厚い城門は破れないのですがね・・」
呆れ気味に呟くと、ちょうど斥候の騎士が戻って来た。
「アルフォード様にご報告致します!王都城門は開いております。そして、我々の想いに同調してくれている兵士が門を死守しており閉じる心配はありません!」
その言葉に私は兵士達に大声で伝える。
「皆に告げる!このまま王都に入るぞ!いいか!向かってくる敵だけ相手にしろ!絶対に無関係な街の人達に危害を加えるなよ!」
「「はい!」」
兵達が一斉に答える。
「アルフォード様、1つお聞かせ下さい。工作とは何をされたのですか?殆ど強行軍で事前準備は出来なかった筈ですが?」
グラン男爵の疑問は最もだ、私は連合軍が向かってくる情報が来た時点で商人達を使い全国に情報を流したのだ。大飢饉の時に自分の身を削って食糧を国中の民に配付して国を救ったのに上級貴族達はメンツの為に汚名を着せ軍を向かわせたと・・・
まぁ、本当の事なんだけど。今頃は私達以外の領地で反乱が起きてるかもね。ともあれ、王都にもその噂は蔓延しているだろう。何せ、炊き出しの時に私の家紋と名前をしっかり伝えて食糧を配ったからな。
その事をグラン男爵及び周りの指揮官クラスの貴族や騎士達に伝えると察しの良い者は気付いたようだ。
「街の門を守っているのは平民の兵士が大半だからな。私のおかげで家族や自分の村が救われたと知れば露骨に邪魔はしないだろう?」
国の兵士だから無条件にとはいかないだろうが、と続けると周りから歓声が上がった。
「流石です!アルフォード様!そこまで考えておいでとは!?」
何やら感動している見たいだが私は首を捻る。そんなにびっくりすることかな?と釈然としないまま進軍すると街の城門が見えてきた。門は開いていた。門を潜ると国軍との戦闘を覚悟していたが・・・
誰も向かって来なかった・・・
あれ?
その代わり王都の街の人々から熱烈な歓迎を受けた。・・・
あれ?あれ?
「ミスレイン侯爵様バンザーイ!」「アルフォード様!素敵!」「街を、故郷の村を救ってくれてありがとう!」
私は動揺した。戦闘覚悟で来たのに、石を投げられても仕方無いのに、この歓迎振りはなんだろうか?
「な、何がどうなっているんだ?」
唖然としながら馬に揺られながら城へ向かう
「アルフォード様の行動が民に認められた証拠ですな」
その言葉に胸がじわりと熱くなる。そして特に何の障害も無く城の前までたどり着く。そして城の城門も開いていたが、流石に城の近衛騎士達が待ち構えていた。
「ミスレイン卿とお見受け致します。私は近衛騎士団長のカミーユと申します。本日はどのようなご用件でしょうか」
丁寧に挨拶を述べた近衛騎士団長に敬意を払い答える
「こちらから答えずとも要件はわかっている筈だ!悪いが通らせて頂くぞ!」
両者に緊張が走る。こちらは1500、近衛騎士は100人ほどだ。死守するのは不可能だろう。って言うか少なく無いか?
「無理に通ると言うなら全力で死守させて頂きます。しかし、そちらも無傷では済みませんよ。その前にミスレイン卿に2つ確認したい事があります」
近衛騎士団長の意図が分からずに少し考える。
「何を聞きたい?」
「まず、国王陛下に危害を加える気があるのかと・・・連合軍とアレク公爵はどうなったかです」
私は迷わず答える
「国王陛下に危害を加える気は無い。私の家名に誓う!ただ、国王陛下にお願いがあるだけだ。そしてアレク公爵はここにあると私は首の入った木箱を見せると近衛騎士団長は眼を開いて驚く。
「連合軍の殆どは戦死した。5000の兵の内1000人ほどしか生き残っていない。アレク公爵以外の高位貴族の首も持ってきた」
私が言い終わると近衛騎士団長および後ろに控えていた100名の騎士達も片膝を着いて敬礼した。
「この度は、暴走した貴族達の挙兵を止められず申し訳ありませんでした!そして大飢饉で苦しんでいる民を救って頂きありがとうございました!」
近衛騎士団長や後ろで控えている騎士達も、感謝と止められなかった悔しさで苦渋の顔をしている。
「差し出がましいと思いますが、国王陛下をお救い下さい。アレク公爵のせいで国王の権威は地に落ち、上位貴族達に良いようにされて国王陛下の味方は少ないのです!近衛騎士団もここにいる100名は実力で入隊した者達ですが本来、500名いる内の400名は貴族出の実力の無い無能者達で王宮の中で守備に当たっています」
おいおい、近衛騎士は国王に絶大な忠誠心を捧げ、何があっても自分の命を捨てて国を護るエリートだろう?その殆どが親のコネで箔を付けるためだけに近衛騎士になるってなんだよ・・・アレク公爵が反乱を起こした場合、近衛騎士が国王の身柄を押さえる事が出来たという訳か・・・これでは国王陛下も動くに動けないな・・・
「貴様ら!いい加減にしろ!!都合良すぎるだろうが!!!アルフォード様は身を削って王国の民のために国中を駆け回ったのだぞ!それなのに謂われない罪をでっち上げられ、殺されかけた!国の為に尽くした者の仕打ちがこれか!?」
後ろで聞いていたグラン男爵や私の仲間達からも批判の声が飛び交う。私は腕を上げ黙らせる。
「仰る通りです!この国のエリートと言われている近衛騎士ですらこの体たらく・・・私の首を差し出します!どうか国王陛下とこの国をお救い下さい!」
騎士団長は自分の剣を前に差し出すが、私はそれを制する。
「貴公の首は要らない。この度の要件が済めば休む暇も無いくらい忙しくなるだろうからな。国王陛下の事は任された!ただし、この国を救う事は出来ない!」
「な、何故ですか!?貴方様ならこの国をっ・・」
「この国を救うのは貴公等の仕事だからだ!最後まで甘えるなよ!!!こちらも怒っているのだ!」
最後まで言わさずに怒鳴り付ける。騎士団長は立ち上がり最敬礼をした後、案内しますと言い城の中の道案内を買ってでた。私は1000の兵を城門に待たせ、500の兵を連れて城に入った。
流石に、王都の城ともあって長い廊下を歩き、上にあがる階段を登り、遂に国王のいる謁見の間の扉の前に着いた。途中の執事や侍女、王宮勤めの貴族などは平伏して道を開いた。
さて、派手に行きますか!
扉を開こうとした近衛騎士団長を制して、大きな重厚の扉をシリカが蹴り破る。バッン!と大きな音がして扉は軸が外れて壊れ内側に倒れる。謁見の間に入ると大勢の貴族が整列していた。謁見中らしく、皆驚いてこちらを見ている。
「な、何者だ!ここを何処だと思っている!今はアレク公爵様がミスレイン領を占領した時の報奨について話しているのだぞ!」
「衛兵!何をしている!この者達を捕らえろ!」
どうやら連合軍参加した貴族の当主や身内を連合軍に出した者達の報奨に付いて話して居たらしい。丁度良かったな。クックク・・おっと、悪役見たいになってしまった。謁見の間にいた近衛騎士団もどきや衛兵達が向かって来たが後ろから次々に入ってくる兵士達の数に脚を止める
「ななな、どうしてこんな数の賊が入ってくる!?」
どうやら、私達が来たことを誰も伝えに来なかったらしい。
「御無礼申し訳ありません。私の名はアルフォード・ミスレインと申します。この度は、我が領地に侵入した逆賊を討ったのでご報告に上がりました。」
その場にいた貴族達は私の名を聞いて驚く。
「ば、バカな!アレク公爵様を始め、私達の施設軍も合わせて5000の兵力だぞ!勝てる訳が・・」
私は煩くわめき声を上げる貴族達に持ってきた木箱を開ける。
「ひぃいいいい!アレク公爵・・!?」
アレク公爵の生首を見て初めて話が本当の事だとわかった見たいだ。
「国王陛下にお願いが3つあります。まず私に汚名を着せ軍を向かわせた事に付いての正式な謝罪と、ここにいる貴族達の処刑及びお家お取り潰しをして頂きたい」
それを聞いた謁見の間の貴族達がまた騒ぎだす。
「そもそも貴様が我らの救援願いを無視したのが原因だろう!」
「私は救援物資を届けましたよ?それも私財を投げ売って他国から食糧を買い付けして王国中に届けた!貴公等ように備蓄分を民に与えず私腹を肥やす貴様等と一緒にするな!不愉快だ!!!!」
私の怒声に腰を抜かす者もいた。私は貴族の館ではなく各街や村に直接持っていきその場で炊き出しをした事を伝えた。
「そ、そんなデタラメを言うな!私達はしっかりと備蓄分を民に放出して対応した!」
他の貴族達もそうだと同意した事により私の怒りは頂点達した。刀に手を掛け、抜こうとした瞬間にシリカに止められ、魔石を渡された。
「ふざけた事を言うなよ。これを見てもまだ自分達を正当化するなら叩き切る!」
魔石を起動すると私達が全国で炊き出しや救援活動をしている映像が大画面のスクリーンで空中に写し出された。初めてみる魔術に唖然とする貴族達。そして写し出される各自の領地の実態が写し出されていた。映像にはアルフォードが息絶えた少女を抱いて嘆き悲しんでいる映像もあった。
「映像を保存する魔術だ。言い逃れは出来ない!」
こんな物は偽物だと騒ぐ貴族の首をはねる。言ったはずだ!まだ言い逃れするなら殺すと・・映像が終わると誰も言わなくなり沈黙が支配する。そこで初めて国王陛下が発言する
「アルフォード卿よ!感謝する。民を救ってくれて。他の貴族達から大飢饉で備蓄分放出していると言われていたが、こちらでも裏付けのため王家の斥候を放ち確認していた。民に食糧を配っている者は居たが、それは領主達では無くアルフォード卿が全国を廻り民を救ってくれていた事を知っていた」
その言葉に貴族達は驚いた。そして国王陛下は、ここにいる貴族達を捕縛するよう伝える。入ってきた本当の近衛騎士団もまがい者達を捕縛していく。
「アレク公爵に脅されていてアルフォード卿を護る事が出来なかった。本当にすまなかった」
国王陛下私の前に歩いてきて跪いて謝罪する。驚いた私はすぐに立たせてお伝えする。
「近衛騎士の殆どがアレク公爵の息の掛かった者達では仕方無いでしょう。長い間、良く我慢されました」
今の国王陛下は24歳と最近、王位を継いだばかり。アレク公爵が父親より若造の方が御しやすいと退位を勧め無理矢理交代させたのだ。因みに王妃様は居ない。候補として王妃教育を受けている令嬢は何人かいるがアレク公爵の娘がまだ幼く12歳で、もう少し成長したら王妃据える予定だったのだ。
「この国の膿を全て出してくれて本当に感謝する。アルフォード卿の望みは全て叶えよう」
う~ん。本当に感謝されている状態で言い出し難いな・・・
「では陛下にお伝えしたい事があります。大変申し訳ないのですが、私はこの王国に対する義理と義務は果たしたと思っております。よって、この国から独立させて頂きます」
国王陛下は初めて驚いた顔をした。私はミスレイン領と帝国に面する領地の南から南西を独立する事を決めたのだ。帝国に面する領地を貰ったのも最後の義理である。弱体化した王国では万が一があるから私が面倒を見た方が良いと思ったからだ。
「アルフォード卿にも見捨てられたか・・・当然の事とはいえ辛いな・・・」
力なく肩を落とす陛下に私は思いっきり殴った。
「甘えるな!私がここに来たとき近衛騎士団長は自分の首を差し出して国王陛下を救ってくれと懇願したんだぞ!貴方に忠誠を誓う者がいるのに全てに悲観してどうするんだ!この国の膿は出しきってやった!これから腐るのか正常に成長するかは貴方に掛かっているんだぞ!」
「ぐふっ・・効いたよ。確かにそうだ。今までは傀儡だったがこれからは違う!民を思う貴族をまとめ上げて今まで以上に良い国にするよ。・・・これから同じ王として対等な立場で力を貸してくれないか?」
国王陛下から差し出された腕に力強く握手をする。
陛下の目には先ほどとは違った力強さを感じる。無論、私も独立するとはいえ弱体した王家に力を貸して1日で早く王国が立ち直るよう尽力する積もりだ。独立するのは、また王家を食い物しようとしたものがいた場合に第三者の目で排除したり圧力を掛けれるようするためだ。
こうして私は独立都市・・国としての王となった事により侯爵から【公爵に陞爵】して今のミスレイン領と周辺の領地を見ていく事となったのだった。ちなみに民達は私が救援物資を運んだ事を知っており、貴族達だけが事実を知らなかったので私に連合軍を向かわせた貴族の領地は軒並み暴動が起こり、連合軍が壊滅的に負けた事と、貴族達の首を見た事によって暴動は終息したのだった。
その後、すぐにシリカとの結婚式を挙げて1年後に子供達が産まれるのは今後の話でお伝えしようと思う。
「そうよね~まさか連合軍を駆逐して逆に攻め込むなんて考えないわよ・・・普通はね」
少し呆れ気味に答える
「こら!攻め込む訳じゃないぞ?国王陛下に直談判するための脅しで連れて来たんだからな」
いや、同じ事だろう?と、その場にいた者達は思った。連合軍が攻めて来て、殆ど時間を置かずにこちらから攻め込むんだ。今頃、城では戦勝パーティーでも開かれているんじゃ無いのか?その会場に乱入してこちらの言い分を聞かせる。さぞ驚くだろうな!城の城門はシリカに任せる事とする。
「シリカ、頼んだよ!」
「うん!任された!殺っちゃって良いんだよね!」
「殺ったらダメだから!?なるべく殺さずに気絶させるようにやっちゃってね?」
シリカのお茶目に少し震えたが、周りには笑いが広がりピリピリした感じが和らいだ。
「もうすぐ王都ですが、どうされるのですか?街の門は昼間なので開いていますが、この軍勢を見ればすぐに閉じられるでしょう」
いつの間にか下級貴族のまとめ役になったグラン男爵が尋ねる。
「今もシリカと話していたが、2つ考えがある。既に工作しているので、上手く行けばこのまま街の門はくぐれる。閉まっている場合はシリカにぶち抜いて貰うから」
「普通はあの分厚い城門は破れないのですがね・・」
呆れ気味に呟くと、ちょうど斥候の騎士が戻って来た。
「アルフォード様にご報告致します!王都城門は開いております。そして、我々の想いに同調してくれている兵士が門を死守しており閉じる心配はありません!」
その言葉に私は兵士達に大声で伝える。
「皆に告げる!このまま王都に入るぞ!いいか!向かってくる敵だけ相手にしろ!絶対に無関係な街の人達に危害を加えるなよ!」
「「はい!」」
兵達が一斉に答える。
「アルフォード様、1つお聞かせ下さい。工作とは何をされたのですか?殆ど強行軍で事前準備は出来なかった筈ですが?」
グラン男爵の疑問は最もだ、私は連合軍が向かってくる情報が来た時点で商人達を使い全国に情報を流したのだ。大飢饉の時に自分の身を削って食糧を国中の民に配付して国を救ったのに上級貴族達はメンツの為に汚名を着せ軍を向かわせたと・・・
まぁ、本当の事なんだけど。今頃は私達以外の領地で反乱が起きてるかもね。ともあれ、王都にもその噂は蔓延しているだろう。何せ、炊き出しの時に私の家紋と名前をしっかり伝えて食糧を配ったからな。
その事をグラン男爵及び周りの指揮官クラスの貴族や騎士達に伝えると察しの良い者は気付いたようだ。
「街の門を守っているのは平民の兵士が大半だからな。私のおかげで家族や自分の村が救われたと知れば露骨に邪魔はしないだろう?」
国の兵士だから無条件にとはいかないだろうが、と続けると周りから歓声が上がった。
「流石です!アルフォード様!そこまで考えておいでとは!?」
何やら感動している見たいだが私は首を捻る。そんなにびっくりすることかな?と釈然としないまま進軍すると街の城門が見えてきた。門は開いていた。門を潜ると国軍との戦闘を覚悟していたが・・・
誰も向かって来なかった・・・
あれ?
その代わり王都の街の人々から熱烈な歓迎を受けた。・・・
あれ?あれ?
「ミスレイン侯爵様バンザーイ!」「アルフォード様!素敵!」「街を、故郷の村を救ってくれてありがとう!」
私は動揺した。戦闘覚悟で来たのに、石を投げられても仕方無いのに、この歓迎振りはなんだろうか?
「な、何がどうなっているんだ?」
唖然としながら馬に揺られながら城へ向かう
「アルフォード様の行動が民に認められた証拠ですな」
その言葉に胸がじわりと熱くなる。そして特に何の障害も無く城の前までたどり着く。そして城の城門も開いていたが、流石に城の近衛騎士達が待ち構えていた。
「ミスレイン卿とお見受け致します。私は近衛騎士団長のカミーユと申します。本日はどのようなご用件でしょうか」
丁寧に挨拶を述べた近衛騎士団長に敬意を払い答える
「こちらから答えずとも要件はわかっている筈だ!悪いが通らせて頂くぞ!」
両者に緊張が走る。こちらは1500、近衛騎士は100人ほどだ。死守するのは不可能だろう。って言うか少なく無いか?
「無理に通ると言うなら全力で死守させて頂きます。しかし、そちらも無傷では済みませんよ。その前にミスレイン卿に2つ確認したい事があります」
近衛騎士団長の意図が分からずに少し考える。
「何を聞きたい?」
「まず、国王陛下に危害を加える気があるのかと・・・連合軍とアレク公爵はどうなったかです」
私は迷わず答える
「国王陛下に危害を加える気は無い。私の家名に誓う!ただ、国王陛下にお願いがあるだけだ。そしてアレク公爵はここにあると私は首の入った木箱を見せると近衛騎士団長は眼を開いて驚く。
「連合軍の殆どは戦死した。5000の兵の内1000人ほどしか生き残っていない。アレク公爵以外の高位貴族の首も持ってきた」
私が言い終わると近衛騎士団長および後ろに控えていた100名の騎士達も片膝を着いて敬礼した。
「この度は、暴走した貴族達の挙兵を止められず申し訳ありませんでした!そして大飢饉で苦しんでいる民を救って頂きありがとうございました!」
近衛騎士団長や後ろで控えている騎士達も、感謝と止められなかった悔しさで苦渋の顔をしている。
「差し出がましいと思いますが、国王陛下をお救い下さい。アレク公爵のせいで国王の権威は地に落ち、上位貴族達に良いようにされて国王陛下の味方は少ないのです!近衛騎士団もここにいる100名は実力で入隊した者達ですが本来、500名いる内の400名は貴族出の実力の無い無能者達で王宮の中で守備に当たっています」
おいおい、近衛騎士は国王に絶大な忠誠心を捧げ、何があっても自分の命を捨てて国を護るエリートだろう?その殆どが親のコネで箔を付けるためだけに近衛騎士になるってなんだよ・・・アレク公爵が反乱を起こした場合、近衛騎士が国王の身柄を押さえる事が出来たという訳か・・・これでは国王陛下も動くに動けないな・・・
「貴様ら!いい加減にしろ!!都合良すぎるだろうが!!!アルフォード様は身を削って王国の民のために国中を駆け回ったのだぞ!それなのに謂われない罪をでっち上げられ、殺されかけた!国の為に尽くした者の仕打ちがこれか!?」
後ろで聞いていたグラン男爵や私の仲間達からも批判の声が飛び交う。私は腕を上げ黙らせる。
「仰る通りです!この国のエリートと言われている近衛騎士ですらこの体たらく・・・私の首を差し出します!どうか国王陛下とこの国をお救い下さい!」
騎士団長は自分の剣を前に差し出すが、私はそれを制する。
「貴公の首は要らない。この度の要件が済めば休む暇も無いくらい忙しくなるだろうからな。国王陛下の事は任された!ただし、この国を救う事は出来ない!」
「な、何故ですか!?貴方様ならこの国をっ・・」
「この国を救うのは貴公等の仕事だからだ!最後まで甘えるなよ!!!こちらも怒っているのだ!」
最後まで言わさずに怒鳴り付ける。騎士団長は立ち上がり最敬礼をした後、案内しますと言い城の中の道案内を買ってでた。私は1000の兵を城門に待たせ、500の兵を連れて城に入った。
流石に、王都の城ともあって長い廊下を歩き、上にあがる階段を登り、遂に国王のいる謁見の間の扉の前に着いた。途中の執事や侍女、王宮勤めの貴族などは平伏して道を開いた。
さて、派手に行きますか!
扉を開こうとした近衛騎士団長を制して、大きな重厚の扉をシリカが蹴り破る。バッン!と大きな音がして扉は軸が外れて壊れ内側に倒れる。謁見の間に入ると大勢の貴族が整列していた。謁見中らしく、皆驚いてこちらを見ている。
「な、何者だ!ここを何処だと思っている!今はアレク公爵様がミスレイン領を占領した時の報奨について話しているのだぞ!」
「衛兵!何をしている!この者達を捕らえろ!」
どうやら連合軍参加した貴族の当主や身内を連合軍に出した者達の報奨に付いて話して居たらしい。丁度良かったな。クックク・・おっと、悪役見たいになってしまった。謁見の間にいた近衛騎士団もどきや衛兵達が向かって来たが後ろから次々に入ってくる兵士達の数に脚を止める
「ななな、どうしてこんな数の賊が入ってくる!?」
どうやら、私達が来たことを誰も伝えに来なかったらしい。
「御無礼申し訳ありません。私の名はアルフォード・ミスレインと申します。この度は、我が領地に侵入した逆賊を討ったのでご報告に上がりました。」
その場にいた貴族達は私の名を聞いて驚く。
「ば、バカな!アレク公爵様を始め、私達の施設軍も合わせて5000の兵力だぞ!勝てる訳が・・」
私は煩くわめき声を上げる貴族達に持ってきた木箱を開ける。
「ひぃいいいい!アレク公爵・・!?」
アレク公爵の生首を見て初めて話が本当の事だとわかった見たいだ。
「国王陛下にお願いが3つあります。まず私に汚名を着せ軍を向かわせた事に付いての正式な謝罪と、ここにいる貴族達の処刑及びお家お取り潰しをして頂きたい」
それを聞いた謁見の間の貴族達がまた騒ぎだす。
「そもそも貴様が我らの救援願いを無視したのが原因だろう!」
「私は救援物資を届けましたよ?それも私財を投げ売って他国から食糧を買い付けして王国中に届けた!貴公等ように備蓄分を民に与えず私腹を肥やす貴様等と一緒にするな!不愉快だ!!!!」
私の怒声に腰を抜かす者もいた。私は貴族の館ではなく各街や村に直接持っていきその場で炊き出しをした事を伝えた。
「そ、そんなデタラメを言うな!私達はしっかりと備蓄分を民に放出して対応した!」
他の貴族達もそうだと同意した事により私の怒りは頂点達した。刀に手を掛け、抜こうとした瞬間にシリカに止められ、魔石を渡された。
「ふざけた事を言うなよ。これを見てもまだ自分達を正当化するなら叩き切る!」
魔石を起動すると私達が全国で炊き出しや救援活動をしている映像が大画面のスクリーンで空中に写し出された。初めてみる魔術に唖然とする貴族達。そして写し出される各自の領地の実態が写し出されていた。映像にはアルフォードが息絶えた少女を抱いて嘆き悲しんでいる映像もあった。
「映像を保存する魔術だ。言い逃れは出来ない!」
こんな物は偽物だと騒ぐ貴族の首をはねる。言ったはずだ!まだ言い逃れするなら殺すと・・映像が終わると誰も言わなくなり沈黙が支配する。そこで初めて国王陛下が発言する
「アルフォード卿よ!感謝する。民を救ってくれて。他の貴族達から大飢饉で備蓄分放出していると言われていたが、こちらでも裏付けのため王家の斥候を放ち確認していた。民に食糧を配っている者は居たが、それは領主達では無くアルフォード卿が全国を廻り民を救ってくれていた事を知っていた」
その言葉に貴族達は驚いた。そして国王陛下は、ここにいる貴族達を捕縛するよう伝える。入ってきた本当の近衛騎士団もまがい者達を捕縛していく。
「アレク公爵に脅されていてアルフォード卿を護る事が出来なかった。本当にすまなかった」
国王陛下私の前に歩いてきて跪いて謝罪する。驚いた私はすぐに立たせてお伝えする。
「近衛騎士の殆どがアレク公爵の息の掛かった者達では仕方無いでしょう。長い間、良く我慢されました」
今の国王陛下は24歳と最近、王位を継いだばかり。アレク公爵が父親より若造の方が御しやすいと退位を勧め無理矢理交代させたのだ。因みに王妃様は居ない。候補として王妃教育を受けている令嬢は何人かいるがアレク公爵の娘がまだ幼く12歳で、もう少し成長したら王妃据える予定だったのだ。
「この国の膿を全て出してくれて本当に感謝する。アルフォード卿の望みは全て叶えよう」
う~ん。本当に感謝されている状態で言い出し難いな・・・
「では陛下にお伝えしたい事があります。大変申し訳ないのですが、私はこの王国に対する義理と義務は果たしたと思っております。よって、この国から独立させて頂きます」
国王陛下は初めて驚いた顔をした。私はミスレイン領と帝国に面する領地の南から南西を独立する事を決めたのだ。帝国に面する領地を貰ったのも最後の義理である。弱体化した王国では万が一があるから私が面倒を見た方が良いと思ったからだ。
「アルフォード卿にも見捨てられたか・・・当然の事とはいえ辛いな・・・」
力なく肩を落とす陛下に私は思いっきり殴った。
「甘えるな!私がここに来たとき近衛騎士団長は自分の首を差し出して国王陛下を救ってくれと懇願したんだぞ!貴方に忠誠を誓う者がいるのに全てに悲観してどうするんだ!この国の膿は出しきってやった!これから腐るのか正常に成長するかは貴方に掛かっているんだぞ!」
「ぐふっ・・効いたよ。確かにそうだ。今までは傀儡だったがこれからは違う!民を思う貴族をまとめ上げて今まで以上に良い国にするよ。・・・これから同じ王として対等な立場で力を貸してくれないか?」
国王陛下から差し出された腕に力強く握手をする。
陛下の目には先ほどとは違った力強さを感じる。無論、私も独立するとはいえ弱体した王家に力を貸して1日で早く王国が立ち直るよう尽力する積もりだ。独立するのは、また王家を食い物しようとしたものがいた場合に第三者の目で排除したり圧力を掛けれるようするためだ。
こうして私は独立都市・・国としての王となった事により侯爵から【公爵に陞爵】して今のミスレイン領と周辺の領地を見ていく事となったのだった。ちなみに民達は私が救援物資を運んだ事を知っており、貴族達だけが事実を知らなかったので私に連合軍を向かわせた貴族の領地は軒並み暴動が起こり、連合軍が壊滅的に負けた事と、貴族達の首を見た事によって暴動は終息したのだった。
その後、すぐにシリカとの結婚式を挙げて1年後に子供達が産まれるのは今後の話でお伝えしようと思う。
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