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皇帝は激怒する
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ゼノン皇帝はシオンが襲われたという報告を聞いて、最初はまたか!?と落ち着いて報告を受けた。
しかし報告を聞いてみると自分でもわかるくらいに真っ青になっていった。
「し、シオン令嬢が意識不明の重体だとっ!!!!?」
「い、いえ、意識不明なだけで重体ではありません!」
報告に来た騎士は慌てて訂正する。
「同じことではないかっ!」
「いえ、魔法の使いすぎで倒れただけと伺っております!」
「それにシオン令嬢の護衛達は帝国でも騎士団長レベルの強者だぞ?その護衛の全員が全滅だと………?」
一体何が起こっているんだ!?
「いえ、確かに全滅と言ってはいいですが、全員が重体であって死んではいません!」
報告に来た騎士はすでにツッコミ要員となっていた。
「それで敵はどうしたのだ?」
「シオン令嬢の攻撃魔法を受けて、手傷を負いながら撤退したそうです」
なるほど。死んではいないのだな?
「これは使えるな………」
「どういうことでしょうか?」
ゼノン皇帝は指示を出した。
「シオン令嬢が襲撃を受けて意識不明だと各関係者に連絡するんだ。ただしこの情報は帝国国内に限定させる。国境には小隊を派遣し、表向は凶悪犯が逃げないための強化とする。ただし本当の目的は、シオン令嬢の情報を王国に漏らさないための処置だ」
「そ、それは大丈夫なのでしょうか?」
この伝令の騎士は知っていた。
シオンの母親が帝国内での化粧品に対する興味で夫人や令嬢に人気が高い事を。
その娘で次期王妃である令嬢が襲撃を受けて意識不明だという噂を流すことで、とんでもない事が起こりそうで心配であった。
そこに皇帝の信頼する宰相が入ってきた。
「失礼します。シオン令嬢が意識不明の重体と伺いましたが大丈夫なのですかっ!?」
走ってきたのか宰相は息を切らしていた。
伝令の騎士はまた勘違いしていると思い、最初から説明した。
「なるほど。それでゼノン皇帝はシオン令嬢の噂を流して、反乱分子を炙り出そうとしているのですな?」
伝令の騎士は、えっ、そうなの!?と、驚いた。
流石は長年、皇帝と国のために働いてきただけあって、皇帝陛下と意思疎通ができていたのだ。
「そうだ」
「しかしそれは諸刃の刃ですな。情報を止めても、オリオン家でも密偵は放っておるでしょうから、実家のオリオン家に情報が伝わるのは時間の問題かと……」
「だが、何もしなくても知られるのなら最低限、我々ができる事を示してから………誠意を見せたいと思う」
「なるほど。犯人を捕まえるまでの時間稼ぎですか。しかしタイミングが悪すぎますな。シオン令嬢の母君が帰られたばかりでこの不祥事。シオン令嬢を信用し過ぎましたかな?」
「シオンは悪くない!せめて少し離れた場所から警備の騎士を派遣しておくべきだったのだ。帝都で待機させていたのは俺のミスであり全ては俺の責任だ!」
テーブルに手をついて自分の失態を悔しがる。
「失礼しました。確かにシオン令嬢は何も悪くありません。失言でした」
宰相も皇帝に頭を下げてからこれからの事について話した。
「敵が手傷を負っているのならすぐに国境に向かうことはないでしょうが、先ほど言った様に帝国から逃がさないよう、国境に騎士団を派遣して検問を強化しましょう。そして西部に人海戦術を使い、未来の王妃を狙った犯人を探してはどうでしょうか?」
「よし、その案を採用する。俺も現地に行って実際にシオンに会ってくる。すまないがしばらく宰相には帝都を頼むぞ」
「はぁ仕方がありません。そのかわり必ずシオン令嬢を狙った犯人を捕まえてください。すでに【シオン王妃】様には莫大な利益を帝国にもたらしてくれているのです。犯人に怒りを覚えているのは陛下だけではないと、心に留めて置いてください」
宰相の目にも怒りが見えて、ゼノンはわかったと言って出かける準備をするのだった。
しかし報告を聞いてみると自分でもわかるくらいに真っ青になっていった。
「し、シオン令嬢が意識不明の重体だとっ!!!!?」
「い、いえ、意識不明なだけで重体ではありません!」
報告に来た騎士は慌てて訂正する。
「同じことではないかっ!」
「いえ、魔法の使いすぎで倒れただけと伺っております!」
「それにシオン令嬢の護衛達は帝国でも騎士団長レベルの強者だぞ?その護衛の全員が全滅だと………?」
一体何が起こっているんだ!?
「いえ、確かに全滅と言ってはいいですが、全員が重体であって死んではいません!」
報告に来た騎士はすでにツッコミ要員となっていた。
「それで敵はどうしたのだ?」
「シオン令嬢の攻撃魔法を受けて、手傷を負いながら撤退したそうです」
なるほど。死んではいないのだな?
「これは使えるな………」
「どういうことでしょうか?」
ゼノン皇帝は指示を出した。
「シオン令嬢が襲撃を受けて意識不明だと各関係者に連絡するんだ。ただしこの情報は帝国国内に限定させる。国境には小隊を派遣し、表向は凶悪犯が逃げないための強化とする。ただし本当の目的は、シオン令嬢の情報を王国に漏らさないための処置だ」
「そ、それは大丈夫なのでしょうか?」
この伝令の騎士は知っていた。
シオンの母親が帝国内での化粧品に対する興味で夫人や令嬢に人気が高い事を。
その娘で次期王妃である令嬢が襲撃を受けて意識不明だという噂を流すことで、とんでもない事が起こりそうで心配であった。
そこに皇帝の信頼する宰相が入ってきた。
「失礼します。シオン令嬢が意識不明の重体と伺いましたが大丈夫なのですかっ!?」
走ってきたのか宰相は息を切らしていた。
伝令の騎士はまた勘違いしていると思い、最初から説明した。
「なるほど。それでゼノン皇帝はシオン令嬢の噂を流して、反乱分子を炙り出そうとしているのですな?」
伝令の騎士は、えっ、そうなの!?と、驚いた。
流石は長年、皇帝と国のために働いてきただけあって、皇帝陛下と意思疎通ができていたのだ。
「そうだ」
「しかしそれは諸刃の刃ですな。情報を止めても、オリオン家でも密偵は放っておるでしょうから、実家のオリオン家に情報が伝わるのは時間の問題かと……」
「だが、何もしなくても知られるのなら最低限、我々ができる事を示してから………誠意を見せたいと思う」
「なるほど。犯人を捕まえるまでの時間稼ぎですか。しかしタイミングが悪すぎますな。シオン令嬢の母君が帰られたばかりでこの不祥事。シオン令嬢を信用し過ぎましたかな?」
「シオンは悪くない!せめて少し離れた場所から警備の騎士を派遣しておくべきだったのだ。帝都で待機させていたのは俺のミスであり全ては俺の責任だ!」
テーブルに手をついて自分の失態を悔しがる。
「失礼しました。確かにシオン令嬢は何も悪くありません。失言でした」
宰相も皇帝に頭を下げてからこれからの事について話した。
「敵が手傷を負っているのならすぐに国境に向かうことはないでしょうが、先ほど言った様に帝国から逃がさないよう、国境に騎士団を派遣して検問を強化しましょう。そして西部に人海戦術を使い、未来の王妃を狙った犯人を探してはどうでしょうか?」
「よし、その案を採用する。俺も現地に行って実際にシオンに会ってくる。すまないがしばらく宰相には帝都を頼むぞ」
「はぁ仕方がありません。そのかわり必ずシオン令嬢を狙った犯人を捕まえてください。すでに【シオン王妃】様には莫大な利益を帝国にもたらしてくれているのです。犯人に怒りを覚えているのは陛下だけではないと、心に留めて置いてください」
宰相の目にも怒りが見えて、ゼノンはわかったと言って出かける準備をするのだった。
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