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シオンの襲撃に成功したサラグモだったが、こちらも手痛い反撃を受け、近くの隠れ家に避難していた。
「クソっ!うまくいったはずなのに、なんなんだ!あの女は!?」
この5年ほど手塩にかけて鍛えた精鋭の部下が半数が殺れた。
まだ実力は落ちるが予備としての部下は20人はいるが、奇襲が成功してから精鋭の10人中の5人が殺られるとは思っていなかった。
しかも、サラグモ特製の毒針を受けて死ななかったのが予想外だった。
普通、受けたら5分以内には身体が動かなくなり死んでしまう毒で、普通なら特別に調合した専用の毒消しが必要なのだ。並の毒消しの薬を飲んだとしても死ぬはずなのに、死なずに動けていたことが驚愕に値した。
「余程、強力な毒消しの薬を持っていたのか……」
サラグモはシオンの爆裂魔法の衝撃を受けて、アバラの骨が折れていたが致命傷ではなかった。
「他の仲間は大丈夫か?」
「はい。ほとんどが軽傷です。サラグモ様もゆっくりとお休みください」
サラグモはジグモが言っていた様に、自分で考えて動く人物ではなく、誰かの指示で動く方が得意な人物であった。
一兵士として部下を鍛え、助け、一緒に任務をこなす。配下の者には慕われているのだ。
今回、ジョロウグモから根城にしている遊郭で、シオンが闇組織を潰して廻っていると報告が入り、サラグモも調査をしていたのだ。
そんな時、闇組織を摘発しているのが、シオンと判明し、ジグモが言っていた、動ける王妃という言葉がようやく理解できた。
「あのジグモが、おっかない王妃と言っていた意味がようやくわかったぜ」
しばらくは相手の身辺調査に徹して怪我が治るのを待つ!
そして次こそはトドメを刺してやる!
この時サラグモは知らなかった。
今回の襲撃が千載一遇のチャンスだったのだ。
ジグモですらサラグモがここまでシオンを追い詰める事ができるとは思っていなかった。
盗賊をけしかけ、倒せればよし。生き残っても油断している所を襲撃する。
サラグモの作戦は途中までは成功していたのだ。
シオンがキレて手当たり次第に爆裂魔法をぶっ放さなければ。
しかし、ここからサラグモは思い知る事になる。
竜の尻尾を踏んだ事で誰の【逆鱗】に触れたかを。
実力は兎も角、皇帝を怒らせた事で帝国騎士団という何百、何千という兵士を動員できる事を思い知る事になるのだ。
・
・
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・
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・
シオンが目覚める少し前───
「………この度は本当に申し訳ありませんでした!」
一番最初に毒針を受けて倒れたエリザが土下座していた。不幸中の幸いか、倒れたエリザを守る為に、仲間の護衛騎士達が身体を張って守ったため、毒が抜けた今、一番軽症であった。
そして目が覚めたエリザは自分を責めた。
目覚めた時、エリザが見たのは傷だらけで、全身を包帯グルグル巻にされた仲間の姿だった。
自分は舞い上がっていた。
またシオンお嬢様と旅ができる。
口では軽口を叩いていても、内心ではワクワクしていたのだ。それは、他の仲間達も一緒であった。
だからこそ油断してしまったのだ。
自分達が索敵できる範囲に敵はいないと。
敵が遠眼鏡で見ていた事に気付かなかった。
「エリザ、そのセリフは私達ではなく、貴女を守った仲間とシオンお嬢様に言うべきです」
ハルはピシャリと言った。
「教えて下さい。どうしてお嬢様はなかなか目覚めないのでしょうか?本当に無事なのですか!?」
「お嬢様は魔法の使い過ぎで精神力を使い切っただけです。本来、魔法を使うとき前もって精神を集中してから使うのですが、キレたお嬢様は予備動作もなく急激に魔法を使ったので身体に、精神に負荷が掛かったのです。時間が経てば目覚めます」
「そう…です………か……」
唇を噛んで自分の失態を恥じる姿は少し前のハルと同じように見えるのだった。
「クソっ!うまくいったはずなのに、なんなんだ!あの女は!?」
この5年ほど手塩にかけて鍛えた精鋭の部下が半数が殺れた。
まだ実力は落ちるが予備としての部下は20人はいるが、奇襲が成功してから精鋭の10人中の5人が殺られるとは思っていなかった。
しかも、サラグモ特製の毒針を受けて死ななかったのが予想外だった。
普通、受けたら5分以内には身体が動かなくなり死んでしまう毒で、普通なら特別に調合した専用の毒消しが必要なのだ。並の毒消しの薬を飲んだとしても死ぬはずなのに、死なずに動けていたことが驚愕に値した。
「余程、強力な毒消しの薬を持っていたのか……」
サラグモはシオンの爆裂魔法の衝撃を受けて、アバラの骨が折れていたが致命傷ではなかった。
「他の仲間は大丈夫か?」
「はい。ほとんどが軽傷です。サラグモ様もゆっくりとお休みください」
サラグモはジグモが言っていた様に、自分で考えて動く人物ではなく、誰かの指示で動く方が得意な人物であった。
一兵士として部下を鍛え、助け、一緒に任務をこなす。配下の者には慕われているのだ。
今回、ジョロウグモから根城にしている遊郭で、シオンが闇組織を潰して廻っていると報告が入り、サラグモも調査をしていたのだ。
そんな時、闇組織を摘発しているのが、シオンと判明し、ジグモが言っていた、動ける王妃という言葉がようやく理解できた。
「あのジグモが、おっかない王妃と言っていた意味がようやくわかったぜ」
しばらくは相手の身辺調査に徹して怪我が治るのを待つ!
そして次こそはトドメを刺してやる!
この時サラグモは知らなかった。
今回の襲撃が千載一遇のチャンスだったのだ。
ジグモですらサラグモがここまでシオンを追い詰める事ができるとは思っていなかった。
盗賊をけしかけ、倒せればよし。生き残っても油断している所を襲撃する。
サラグモの作戦は途中までは成功していたのだ。
シオンがキレて手当たり次第に爆裂魔法をぶっ放さなければ。
しかし、ここからサラグモは思い知る事になる。
竜の尻尾を踏んだ事で誰の【逆鱗】に触れたかを。
実力は兎も角、皇帝を怒らせた事で帝国騎士団という何百、何千という兵士を動員できる事を思い知る事になるのだ。
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シオンが目覚める少し前───
「………この度は本当に申し訳ありませんでした!」
一番最初に毒針を受けて倒れたエリザが土下座していた。不幸中の幸いか、倒れたエリザを守る為に、仲間の護衛騎士達が身体を張って守ったため、毒が抜けた今、一番軽症であった。
そして目が覚めたエリザは自分を責めた。
目覚めた時、エリザが見たのは傷だらけで、全身を包帯グルグル巻にされた仲間の姿だった。
自分は舞い上がっていた。
またシオンお嬢様と旅ができる。
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「そう…です………か……」
唇を噛んで自分の失態を恥じる姿は少し前のハルと同じように見えるのだった。
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