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拳を交えればマブダチに!(なんか違う)
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エリスは力強いシオンの決意の目をみて、心で思ってしまった。【勝てない】と………
この女性はどれだけの覚悟を持ってここに来たのだろうと。
エリスはセラ侯爵令嬢と仲がよく、お互いに帝国をより良いものにしたいと、常々話し合っていた。
セラは国内の不正を正すことに注力し、エリスは貿易を拡大して海外からの利益を増やす。
そう話して行動に移してきたが、目の前のシオンは我々の活動をより深く理解して、あり得ないほどの利益を帝国にもたらすプレゼンをした。そして、すでに利益が出始めている。
他国の令嬢が戦争にでて、さらに隣国の経済の立て直しを瞬く間に行ってしまった。
いったいどんな脳ミソをしているのだろうか?
そんな事を考えていると、ブルーネット公爵が話した。
「こんな場で申し訳ないが、一つだけお願いを聞いてもらっても良いだろうか?」
「そのお願いにもよりますが?」
シオンは飲んでいたカップを置いて答えた。
「私と試合をしてもらいたい」
「いいですね。やりましょう!」
即答だった。
「シオン、貴女は何を考えているのですか!」
お母様が怒るが───
「いえ、ここは私の実力を見せないと納得しないでしょう。大丈夫です。ただの試合であって、殺し合いではありませんので」
いや、そうじゃなくって、貴族令嬢がお茶会にきて剣を振るうのがおかしいと言っているのだが?
怪我をしたらどうするんだ!?
マリアは諦めた様に怪我をしないようにね、と言って見送るのだった。
木刀を手渡されると、シオンはドレス姿で構えた。
「令嬢にこんな事を頼むのは恥ずべき事だとわかっている!だが、自慢の息子を倒した貴殿の強さを知りたいのだ!!!」
全ての責任を取ると言う意味で、ほぼ叫びながらシオンに斬り掛かった!
ガギンッ!
鋭い一撃を受けたシオンは一瞬驚いた顔をしたが、瞬時に受け流して反撃した。
シュン!と相手の一撃を紙一重で避けるように。そして、鋭く反撃しながら、時間にして僅か3分ほどだろうか、目に留まらぬ激しい打ち合いが続いた。
バシッ
それは一瞬だった。ブルーネット公爵の手から木刀が弾き飛ばされたのだ。
カランッと地面に転がった。
「ハァハァ、まさかここまでとは。私も平均的な騎士以上の実力はあると思っていたのだが………」
息を切らしている公爵に比べてシオンは殆ど息を乱していなかった。
「ありがとうシオン令嬢。君の様な猛者に正々堂々と戦い敗れたのなら息子も本望であっただろう。できるならエリスと良き友になってくれればと思うよ」
ブルーネット公爵は晴々とした表情でシオンと握手を交わした。
「ねぇ?エリーゼ公爵夫人、わかるかしら?私がどんなにやめてと言っても、シオンは物心がつく前から剣を振るっていたのよ。何処かのバカが戦争を仕掛けてくるから、領地を守る為には強くならないといけないと言ってね。そして、私は大事な娘が傷付くのも嫌だし、何より娘が人を殺すのが嫌なのよ。そしたらシオンは、いつか戦争自体を無くすんだって、よくわからない物を作っていたわ。当時は理解出来なかったけど、今なら少しわかるの。経済が良くなれば、無理して他国に攻め込む事も無くなるって」
エリーゼはマリアの言葉に衝撃を受けた。
か弱い貴族令嬢がどうしてここまで強くなったのか。娘を持つ親として、自分の娘が人を殺す姿を思い浮かべて、自分はどう思ったか。
戦争とはいえ、自分の娘が人を殺めると言うのがとても嬉しいとは思えなかった。
そして、そうさせざる負えなかったのは、自分達の国のせいであると。
エリーゼ夫人は視線を落として、自分の気持ちに向き合うことにしたのだった。
「シオン、お疲れ様。貴女、わかっていたの?こうなる事を」
「前にエリスさんに決闘を申込まれたので、親子なら同じ事を言われるかなっと思いました」
はにかみながらシオンは言った。
そんな時、庭の外が騒がしくなった。
「なにごと!?」
「警備は何をしている!」
庭まで入ってしまえば、人払いしていた為に、一気にターゲットを狙える。黒ずくめの男が乱入してきてシオンに斬り掛かってきたのだ!
さてシオンの運命はいかに!?
次回【神の手】
お楽しみに!
シオン
「なぜ次回予告が!?」
naturalsoft
「その場のノリです」
この女性はどれだけの覚悟を持ってここに来たのだろうと。
エリスはセラ侯爵令嬢と仲がよく、お互いに帝国をより良いものにしたいと、常々話し合っていた。
セラは国内の不正を正すことに注力し、エリスは貿易を拡大して海外からの利益を増やす。
そう話して行動に移してきたが、目の前のシオンは我々の活動をより深く理解して、あり得ないほどの利益を帝国にもたらすプレゼンをした。そして、すでに利益が出始めている。
他国の令嬢が戦争にでて、さらに隣国の経済の立て直しを瞬く間に行ってしまった。
いったいどんな脳ミソをしているのだろうか?
そんな事を考えていると、ブルーネット公爵が話した。
「こんな場で申し訳ないが、一つだけお願いを聞いてもらっても良いだろうか?」
「そのお願いにもよりますが?」
シオンは飲んでいたカップを置いて答えた。
「私と試合をしてもらいたい」
「いいですね。やりましょう!」
即答だった。
「シオン、貴女は何を考えているのですか!」
お母様が怒るが───
「いえ、ここは私の実力を見せないと納得しないでしょう。大丈夫です。ただの試合であって、殺し合いではありませんので」
いや、そうじゃなくって、貴族令嬢がお茶会にきて剣を振るうのがおかしいと言っているのだが?
怪我をしたらどうするんだ!?
マリアは諦めた様に怪我をしないようにね、と言って見送るのだった。
木刀を手渡されると、シオンはドレス姿で構えた。
「令嬢にこんな事を頼むのは恥ずべき事だとわかっている!だが、自慢の息子を倒した貴殿の強さを知りたいのだ!!!」
全ての責任を取ると言う意味で、ほぼ叫びながらシオンに斬り掛かった!
ガギンッ!
鋭い一撃を受けたシオンは一瞬驚いた顔をしたが、瞬時に受け流して反撃した。
シュン!と相手の一撃を紙一重で避けるように。そして、鋭く反撃しながら、時間にして僅か3分ほどだろうか、目に留まらぬ激しい打ち合いが続いた。
バシッ
それは一瞬だった。ブルーネット公爵の手から木刀が弾き飛ばされたのだ。
カランッと地面に転がった。
「ハァハァ、まさかここまでとは。私も平均的な騎士以上の実力はあると思っていたのだが………」
息を切らしている公爵に比べてシオンは殆ど息を乱していなかった。
「ありがとうシオン令嬢。君の様な猛者に正々堂々と戦い敗れたのなら息子も本望であっただろう。できるならエリスと良き友になってくれればと思うよ」
ブルーネット公爵は晴々とした表情でシオンと握手を交わした。
「ねぇ?エリーゼ公爵夫人、わかるかしら?私がどんなにやめてと言っても、シオンは物心がつく前から剣を振るっていたのよ。何処かのバカが戦争を仕掛けてくるから、領地を守る為には強くならないといけないと言ってね。そして、私は大事な娘が傷付くのも嫌だし、何より娘が人を殺すのが嫌なのよ。そしたらシオンは、いつか戦争自体を無くすんだって、よくわからない物を作っていたわ。当時は理解出来なかったけど、今なら少しわかるの。経済が良くなれば、無理して他国に攻め込む事も無くなるって」
エリーゼはマリアの言葉に衝撃を受けた。
か弱い貴族令嬢がどうしてここまで強くなったのか。娘を持つ親として、自分の娘が人を殺す姿を思い浮かべて、自分はどう思ったか。
戦争とはいえ、自分の娘が人を殺めると言うのがとても嬉しいとは思えなかった。
そして、そうさせざる負えなかったのは、自分達の国のせいであると。
エリーゼ夫人は視線を落として、自分の気持ちに向き合うことにしたのだった。
「シオン、お疲れ様。貴女、わかっていたの?こうなる事を」
「前にエリスさんに決闘を申込まれたので、親子なら同じ事を言われるかなっと思いました」
はにかみながらシオンは言った。
そんな時、庭の外が騒がしくなった。
「なにごと!?」
「警備は何をしている!」
庭まで入ってしまえば、人払いしていた為に、一気にターゲットを狙える。黒ずくめの男が乱入してきてシオンに斬り掛かってきたのだ!
さてシオンの運命はいかに!?
次回【神の手】
お楽しみに!
シオン
「なぜ次回予告が!?」
naturalsoft
「その場のノリです」
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