悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!

naturalsoft

文字の大きさ
上 下
65 / 106

お披露目の演説

しおりを挟む
ゼノン皇帝が視線をこちらに向けた。

「さて、みんなも早く会いたいだろう。さぁ!今回の王妃候補達だ!」

大勢の拍手の中、私達は入場した。

「さて、知っている顔もいるだろうが、順番に挨拶して欲しい」

取り敢えず暫定順位で挨拶が始まった。
エリス・ブルーネット公爵令嬢

セラ・ラビット侯爵令嬢

バーネット・メイゲン伯爵令嬢


そして、シオン・オリオン辺境伯令嬢


それぞれの自己紹介と王妃になった時の抱負を語り、拍手で会場が包まれた。

先の令嬢達は帝国貴族で顔が知られている。今回、夜間の参加者達はシオンの順番を待っていた。

「それでは最後に、シオン・オリオン辺境伯令嬢、お願い致します」

壇上の上でシオンが一歩前にでた。

「初めまして。シオン・オリオンです。この度は皇帝陛下の妃候補としてここにいます」

無難な挨拶から始まった。
そして、シオンは各領地の収穫高など調べる事、新たな作物の事など語った、

「無論、全ての領地で受け入れられるとは思ってもいません。それぞれ、痛くもない腹を探られるのは嫌でしょうしね。しかし、この帝国は他国に較べて遅れています!これ以上遅れる事があれば、他国の経済競争に負けて緩やかに滅びる瀬戸際だと認識して下さい!故に、どんな反論があろうと国全体の収穫高をしっかりと把握し、合っていない農作物を作っている領地には別の作物を育ててもらい、各領地の収入を底上げします!すでに、東部では試験的に、新たな作物の大規模な作付けを行っています。民が飢える事がなければ、民も領主を、貴族を敬うでしょうし、収入が上がれば領主達も潤います」

最初のざわめきが無くなり、会場の全ての貴族がシオンの演説に耳を傾けた。

「そして、私が成そうとしている最大の政策として、平民が通える学校の設立です!」

ザワッと初めて会場がざわめいた。

「この帝国では【教育】が他国に比べ1番遅れております。正直、文字の読み書きが出来ないのは問題です」

ここで貴族達から質問が飛んだ。

「別に平民が文字を読み書きできなくても問題ないでしょう?」

シオンは足をダンッと叩いて黙らせた。

「その考えが愚かだと何故気付かないのですか!文字の読み書きが出来れば、契約書に騙される可能性が減ります!作物の収集量を民が計算できるようになるので、文官などの就職先が増えるでしょう!何より知識があれば、長年毒があり食べられ無かった物が、実は食べられる物だと、研究し知ることができたはずです。それでどれだけの民が飢えず済んだか、わかりますかっ!」

シオンの威勢にまた会場が静かになった。

「文字の読み書きだけではないのです!知識を蓄えることができれば、新たなアイディアが生まれると言うこと。1人の知識より大勢の知識が集まった方が、良い案が生まれるのは当然なのはわかりますね?それを国全体で考えて下さい。国の民は貴族より平民の方が多いのです。その民が知識を付ければ、様々な道具や政策、暮らしを少しでも良くする案がたくさん生まれるでしょう。そうやって国とは発展していくのです!」

シーーーン!

「本日、夜間の料理は私が考え考案した物ですが、それから少しでも、味と見た目を良くしようとしたのは料理人です。知識を幅広く公開していく事で、もっとより良い物が生まれると私は信じております」

シオンの演説が終わると会場が割れんばかりの拍手と喝采が起こった。シオンの言葉は多くの貴族達の心を打ったようである。

「素晴らしい!」
「ぜひ私の領地でも実践して欲しいですな!」
「次は私の領地を見にきてください!」

会場全体で拍手が響いたが、特に東部の貴族達から熱烈な歓迎を受けていた。
それから各王妃候補達も壇上か降りて夜会に参加した所、シオンの周りには人垣ができた。

「シオンお姉様、お久しぶりです!」

ルナーリア令嬢は抱きつきたい気持ちを抑えて、ドレスの裾を掴んでカーテシーをして挨拶した。

「お久しぶですルナーリアさんは元気に過ごしていましたか?」
「はい!お陰様で、お父様が新しい派閥を作って東部の盟主になりましたので、お茶会の誘いなど多くきて大変ですが、しっかりとシオンお姉様の活躍はお伝えしてます!」

拳を握ってフンスッと息巻くルナーリアちゃんにシオンはどんな事を話しているのか気になった。

「失礼致します。ゼファー令嬢、ぜひご紹介して頂けないでしょうか?」

貴族の当主だけではなく、同年代の令嬢達も群がってきた。
貴族の当主や子息達はまず、同年代の女性達を向かわせ、どういう対応をするのか伺っている状態だ。
シオンが友好的なのか、否定的な対応をするのか敵国の令嬢ということもあり様子を見ていた。

「シオンお姉様、こちらは同じ東部に領地を構えるご令嬢達です。それと南部で取引のある令嬢も何人かいます」

シオンは丁寧に挨拶するといきなり聞きにくい事から話した。

「南部の貴族とは何度も侵略してきた帝国の兵士として戦をしてきました。当家に家族や兵士を殺された方もいるでしょう。あなた達はそんな私を許せるのですか?」

その言葉で周囲の令嬢達の笑顔が固まるのだった。






しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

処理中です...