悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!

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辺りが静まり返る。
誰もがシオンに圧倒され何も発する事が出来なかった。

そこに、シオンは忘れていた事を思いだした。

「あ、忘れてた。私が王国にいた時に開発した調味料もありました」

なんの事だ?と、皆が首を傾げる。
シオンはテーブルに置かれた野菜スティックを指した。

「このマヨネーズとケチャップと言う調味料は私が開発しました。大量生産が可能なので、工場を帝国に移します。これを逆輸出すればもっと利益出せますよ♪」

シオンは野菜スティックにマヨネーズを付けて食べた。カリッとうまし!

「えっ、嘘でしょ!?」

何故かバーネットが1番驚いていた。

「どうかした?」
「どうかしたって………この調味料は数年前に南の王国が開発して、他国で砂糖に次いで売れてる商品じゃないの!?」

うん!うん!そうだよね~~
美味しくてやみつきになるよね!

「私が開発しました。特許は私が持っています♪」

唖然としているバーネットはよろめいた。

「で、では、今後帝国内で販売されるマヨネーズは価格が下がると?」
「自国で生産するのですもの。安く売れるようになるわね」

初めてバーネットからシオンを恨む憎しみの目が消えた。
そう、バーネットはマヨネーズにハマり、何でもマヨネーズを付けないとダメになった重度の『マヨラー』だったのだ。

うん、今度、塩分半分にした健康的なマヨネーズを販売するとしよう。

「あら?バーネットさんはマヨネーズがお好きなのね~でも、あんまり食べ過ぎると身体に悪いわよ?今度、コレステロールを減らしたマヨネーズを開発するからほどほどにね?」

コレステロールってなに?
と、突っ込む者はいなかった。

「クククッ、シオン令嬢は地元では『発明女王』と呼ばれていたらしいからな。正直頼りにしているぞ」

こうしてさらに貿易の商品のネタを手にしていたのだった。こうして、最初の顔見せの場ではシオンが圧倒的な存在感を見せたのだった。

「シオンさん、少し二人でお話したいのですが?」
「ええ、いいですわ。私もお話したかったので」

帰り際にエリスに呼び止められた。
そしてついてきて欲しいと言われて、シオンは素直について行った。無論、ハルやアキ、護衛騎士を連れてである。

「それにしても、貴方達、短時間で仲良くなり過ぎじゃない?」

護衛騎士達は意気投合して、ワイワイと話していた。

「いやー!同じお嬢様に仕える騎士として、苦労など共感しちゃったんですよ~~」

ああ、そうですか?
なら今度、もっと過酷な任務を与えてやるわよ。

そんな事を考えていると、目的地に着いたようだ。

「ここですわ」
「何故にここ?」

着いた場所は、王宮騎士団の室内訓練所だった。
エリスはスタスタと歩いていき、木刀を手に取った。

「シオン・オリオン辺境伯令嬢!私と勝負しなさい!」

!?

周りのエリスの騎士達は止めに入るが、エリスは無視をして木刀をシオンに向けた。

「…………いいわよ」

逆にシオンの護衛達は静かだった。
少しかじった程度の剣術がシオンに通用する訳がないと知っているからだ。

「お嬢!ちゃんと手加減して下さいね!」
「向こうは帝国有数の公爵家の令嬢です。怪我などさせないで下さいね!」
「お嬢、手加減って言葉知ってる?」


ピクピクッと、顔の笑顔を引きつけながらエリスは言った。

「それは挑発なのかしら?」

護衛騎士達はヤベッと、ササッと後ろに下がった。

「うちの馬鹿達がごめんなさいね。そちらはそんなドレス姿で良いのかしら?」
「言葉を返すわ。そちらこそ、私の剣をそんなドレスで避けられるかしら?」

う~~~~ん?
シオンは木刀を手に取ると困った風に言った。

「避ける必要ないもの。さぁ、いつでも来なさい!」

ブアッとエリスにシオンの殺気が襲い掛かる。
額に汗を掻きながらも、エリスは斬り掛かった!

カンッ!
カンッ!カンッ!カンッ!

エリスの渾身の剣撃があっさりと、シオンに防がれた。

「ふむ?速さはあるけど軽いわね。本気で剣術を習うなら、腕だけの筋肉ではなく、身体全体の筋肉をバランスよく鍛えなきゃダメよ?」

カンッ!カンッ!カンッ!

エリスの力いっぱいの一撃をサラッと受け流す。
まさかここまで力の差があるとは思っても見なかった。敵わなくとも、もう少し善戦できると思っていたのに!シオンは全く足を動かしていない。

「どうしてっ!?」

それからしばらくシオンは攻撃を受け続けて、ついにエリスは体力が無くなり座り込んだ。

「ハァハァ、ハァハァ、ま、まさかこんなに力の差があるなんて………」

エリスは静かに涙を流して泣いた。

「…………普通の令嬢がここまで鋭い剣撃を放てるようになるには、かなり訓練されたのでしょう。誇りなさい。貴女はお兄様の剣技を引き継いでいますわ」

バッと顔を上げてシオンを見つめた。

「これを貴女にお返し致します。貴女のお兄様の形見です」

!?

綺麗なハンカチに包まれた中には、銀の指輪があった。ブルーネット家の紋章が入っていた。

「これはお兄様の………」

エリスは受け取ると呪文を唱えた。

「えっ?なに?」

エリスが、何をしようとしているのか警戒した。

『わ、私はバリス・ブルーネット、私の声が聞こえるか?』

!?

「これは音を録音できる魔道具!?」

指輪が淡く光ると急に声が聞こえてきた。

『ハァハァ、私はもう、な、ながくない。オリオン辺境伯の白騎士との一騎打ちに敗れた。だが、悔いはない。オリオン家は包囲された友軍を助ける為に、私兵で特攻し包囲網に穴を開けた。私はそれを防ごうと、一騎打ちとなり、負けたのだ………ハァハァ、エリス、私は勇敢に戦った。白騎士は強かったよ………戦争は帝国が仕掛けたものだ。エリス、オリオン家を恨むなよ。お互いの意地と意地がぶつかった結果だ………私は満足している。………お前はお前の幸せの為に生きなさい。これからきっと帝国は良い国になる。何故なら白騎士殿がお前を守ってくれると、最後の頼みを聞いてくれた………どうか、私の大事な妹のエリスを………よろしく頼みます………エリス……幸せ……に』

プツンッとここで音声は途切れた。

「巫山戯ないで!大切なお兄様を殺したヤツに、私を守れって、なに言ってるのよ!!!」

エリスは手から血がでるのを気にせず地面を殴った。

「すぐには心の整理がつかないでしょう。家に帰ってゆっくりと心を落ち着けて下さい」

シオンはエリスの手を握って優しく答えた。

「………最後に教えて。白騎士は何処にいるの?オリオン家の騎士なの?」

コソッ
「貴女の目の前にいますよ」

!??

エリスの目がこれでもかと開かれた。

「彼は強かった。私に手傷を負わせるほどに。私を恨むなら、いくらでも恨みなさい。でも、誇り高く散ったバリス殿を侮辱する事は許さない」

シオンはそう言う残すと訓練所を後にするのだった。









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