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協力者!
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シオンは疑問に思っていた事を尋ねた。
「このヴァイス侯爵領で市場をみたのですが、物価がどうしてこんなに高いのでしょうか?仲間のアメリアの調べだと、3~4倍も高いのに、街の人々は何とか生活出来ているのが不思議なんです」
「街に着いたばかりで、よく調べたのう?実は───」
ヴァイス侯爵は自分の領地で作られた物を通常より高い料金で近隣の領主や商人に買わせて、自分の領地に売りにくる商人には、物を安く売るよう圧力を掛けた。
そうすると、どうなるか。
金は入ってくるが、他の領主や商人は物を売っても、赤字になるのか、利益が薄いので、必要最低限しか商品を卸さないようになる。商品の入荷が少なく、品薄が続くので、通常より高いお金を払わないといけなくなる訳だ。インフレとデフレの典型的なパターンである。
こりゃヴァイス侯爵は恨まれているわね。
「なるほど。それと、ワルノヨー伯爵の件はどこまで把握していますか?」
話を聞くと、屋敷の地下の件は知らないようだった。そこでシオンは常闇の蜘蛛の事を伝えた。
「なんじゃと!?まさかそんな非人道的な事が行われておったとは。よろしい。あの犯罪組織は少し前に壊滅したと聞いておったが、まだ生き残りがいて、力を付けてきたと言う事か………こちらでも情報を探ってみよう。この件についてお互いに情報交換をお願いしたい」
「無論です。皇帝陛下にも協力を要請しております」
「じゃが、その報告しに行った近衛騎士は信用できるのかのぅ?」
確かに。そう言われると絶対とは言えない。まだ知り合って数日だから。でも──
「少なくとも、私は信用できると思いました。もし、裏切られたなら、私の見る目が無かったと言うことです。近衛騎士カノンを」
「カノンじゃと!?」
名前を聞いて驚いたルドルフに首を傾げた。
「知っている方なんですか?」
「う、うむ………アヤツなら信用に足りる」
『何せ皇帝陛下自身じゃからのぅ~何をやっておるんじゃゼノンよ………』
宰相と同じく皇帝陛下の信用している人物がルドルフである。昔、剣術指南など担当していた。ただ、すでに隠退しているので、最近は、たまに手紙でのやり取りをしている程度だ。変装魔法も偽名も知っている。
取り敢えず落ち着いてから話を戻した。
「コホンッ、この件は極秘で動く事にしよう。それとシオン令嬢はこの帝国をどうしたいと思っておるのじゃ?悪徳貴族の退治はおまけなんじゃろう?」
「私はこの帝国をもっと富ませたいと思っています。この帝国は貿易ができない代わりに、独自の文化が発展していきました。でも、逆に一部の文化が遅れています。それ発展させたいと思っています」
「一部の文化とは?」
「知識です。もっと平民にも学問の門を広げるべきだと思っています。実は───」
いつもの土芋と赤芋の話をした。
「なんと!じゃから知識が必要と言う訳か……シオン令嬢が帝国に来てくれて良かったわい。そしてこれから何を成すのか楽しみじゃ!」
シオンとルドルフはガシッと握手をして協力する事で同意した。
「おっと、忘れておった。北の貿易を司るのはメイゲン伯爵家じゃ。おそらく、北の国との武器の輸入で、便宜をはかっておる。ただの金の繋がりだけなのかは、まだわからんが、協力関係にあるのは、間違いなさそうじゃ。気を付けるといい」
「確かにヴァイス侯爵は北に新しいワインを売り込んで、他国に帝国の地位を高めた事が認められて、陞爵されたんでしたね。昔から商売で協力関係にあったのは間違いないでしょう」
シオンはそこまで言ってフと気付いた。
「なるほど。今回の【妃選定の儀】は棄権した家は、政治的便宜が約束される。なら、複数で協力し合うことで、日曜の妃になるのを有利に進める事ができる訳ね」
貿易で裕福なメイゲン家は王妃にならなくても、協力した令嬢を王妃に付けて見返りを期待しているのね。推している令嬢が負けても、自分は棄権したことで政治的便宜はそのまま受けれるので、デメリットはない。
上手く立ち回っているようね。
ハルが追加で情報を伝えた。
「確かメイゲン伯爵の令嬢は、バーネット・メイゲンと言って今の所、水曜の位の妃ですね」
ちょうど真ん中ね。
誰からも恨まれず、下位でもないのでちょうど良いポジション。そういうやり方もあるでしょうが、私は好きになれないタイプね。
ただの偶然か、それとも───
まだ会った事はないけれど油断せず行きましょう。
「このヴァイス侯爵領で市場をみたのですが、物価がどうしてこんなに高いのでしょうか?仲間のアメリアの調べだと、3~4倍も高いのに、街の人々は何とか生活出来ているのが不思議なんです」
「街に着いたばかりで、よく調べたのう?実は───」
ヴァイス侯爵は自分の領地で作られた物を通常より高い料金で近隣の領主や商人に買わせて、自分の領地に売りにくる商人には、物を安く売るよう圧力を掛けた。
そうすると、どうなるか。
金は入ってくるが、他の領主や商人は物を売っても、赤字になるのか、利益が薄いので、必要最低限しか商品を卸さないようになる。商品の入荷が少なく、品薄が続くので、通常より高いお金を払わないといけなくなる訳だ。インフレとデフレの典型的なパターンである。
こりゃヴァイス侯爵は恨まれているわね。
「なるほど。それと、ワルノヨー伯爵の件はどこまで把握していますか?」
話を聞くと、屋敷の地下の件は知らないようだった。そこでシオンは常闇の蜘蛛の事を伝えた。
「なんじゃと!?まさかそんな非人道的な事が行われておったとは。よろしい。あの犯罪組織は少し前に壊滅したと聞いておったが、まだ生き残りがいて、力を付けてきたと言う事か………こちらでも情報を探ってみよう。この件についてお互いに情報交換をお願いしたい」
「無論です。皇帝陛下にも協力を要請しております」
「じゃが、その報告しに行った近衛騎士は信用できるのかのぅ?」
確かに。そう言われると絶対とは言えない。まだ知り合って数日だから。でも──
「少なくとも、私は信用できると思いました。もし、裏切られたなら、私の見る目が無かったと言うことです。近衛騎士カノンを」
「カノンじゃと!?」
名前を聞いて驚いたルドルフに首を傾げた。
「知っている方なんですか?」
「う、うむ………アヤツなら信用に足りる」
『何せ皇帝陛下自身じゃからのぅ~何をやっておるんじゃゼノンよ………』
宰相と同じく皇帝陛下の信用している人物がルドルフである。昔、剣術指南など担当していた。ただ、すでに隠退しているので、最近は、たまに手紙でのやり取りをしている程度だ。変装魔法も偽名も知っている。
取り敢えず落ち着いてから話を戻した。
「コホンッ、この件は極秘で動く事にしよう。それとシオン令嬢はこの帝国をどうしたいと思っておるのじゃ?悪徳貴族の退治はおまけなんじゃろう?」
「私はこの帝国をもっと富ませたいと思っています。この帝国は貿易ができない代わりに、独自の文化が発展していきました。でも、逆に一部の文化が遅れています。それ発展させたいと思っています」
「一部の文化とは?」
「知識です。もっと平民にも学問の門を広げるべきだと思っています。実は───」
いつもの土芋と赤芋の話をした。
「なんと!じゃから知識が必要と言う訳か……シオン令嬢が帝国に来てくれて良かったわい。そしてこれから何を成すのか楽しみじゃ!」
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「おっと、忘れておった。北の貿易を司るのはメイゲン伯爵家じゃ。おそらく、北の国との武器の輸入で、便宜をはかっておる。ただの金の繋がりだけなのかは、まだわからんが、協力関係にあるのは、間違いなさそうじゃ。気を付けるといい」
「確かにヴァイス侯爵は北に新しいワインを売り込んで、他国に帝国の地位を高めた事が認められて、陞爵されたんでしたね。昔から商売で協力関係にあったのは間違いないでしょう」
シオンはそこまで言ってフと気付いた。
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誰からも恨まれず、下位でもないのでちょうど良いポジション。そういうやり方もあるでしょうが、私は好きになれないタイプね。
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