悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!

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名場面再び!2

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エチゴーヤを地面に叩き付ける様に抑えたので、鼻血を出した。

「痛い………貴様、伯爵家のオレに怪我をさせるなんて貴様こそ処刑してやる!」

元気だなぁ~~こいつ、今の状況がわかってないのか?バカにもほどがあるだろう!?
皇帝の代理人の言葉は皇帝本人の言葉と同義なんだぞ?
つまりは、先ほどの口上はそのまま現実になるんだけど?

ここでカノンが口を出した。

「エチゴーヤよ!私は皇帝陛下の近衛騎士を務める騎士カノンだ!貴様の父はすでに王宮で逮捕され牢屋に入っている!助けがくるとは思わないことだ!」

「はっ?」

父親が牢屋に入っていると言われて、ジワジワと自分の立場が現実味を帯びてくる。そして、ガタガタッと震えだした。

「さて、まだここに罪人達がいる!聞け!愚かな罪人達よ!

まずは衛兵達!金で雇われているとはいえ、街の治安を守る貴様達が、雇い主である領主に言われるままに、女性達を攫い、領主達と同じく乱暴をした貴様らも同罪である!

そう簡単に牢屋から出られると思わない事ね!場合によっては死ぬまで鉱山行きよ!」

ヒュッと声に鳴らない悲鳴が周囲から上がった。
だが、それはまだ続いた。

まったく、罪人が多すぎて草生えるわね。
もうめんどくさい!シオンは罪人が多すぎてうんざりしていた。

「さらに!憲兵達よ!貴様らはもっと【罪が重い】と知れ!憲兵とは皇帝陛下が直接管轄する部署であり、貴族の横暴を止める民達の最後の拠り所である!

この度、皇帝陛下の威光を著しく損ねた罪!
目の前の犯罪を見逃した罪!
違法カジノの出入りの罪!
王室からの命令書を隠匿した罪!
街の人々の嘆願書を故意に握り潰した罪!
衛兵と同じく女性に乱暴した罪!
(コイツラもオコボレもらってたんでしょ?)


まだ罪状はあるが、以下省略する!

ここにいる者達及び、まだ憲兵宿舎に残っている者達は、個々の罪状が明らかになると同時に、処刑も含めての沙汰を下します!ワルヨノー伯爵家と同じくお家のお取り潰しも覚悟しなさい!」

※憲兵は必ず貴族の子息で構成される。権限が貴族をも裁けるため、平民では貴族を裁くことができないためだ。

憲兵達はザワッと声を上げた。

「なっ!?どうしてですか!」

ギロッ!

ハルとアキが睨みを利かせた。

「ど、どうしてでしょうか?」

シオンは腕を組み、冷たい目で見下ろした。
そして、さっきとは違い、恐ろしく冷たい低い声で言うのだった。

「はっ?どうしてですって?本気で言っているのかしら?今、反論したお前は死刑よ!この任命書がある限り、今の私は皇帝陛下そのものだと理解していないのかしら?」

ヒィィィイイイイイイ!!!!!
この御方の機嫌を損ねるとヤバいと、ここにいる全員が思った。

「理解出来ないって顔ね?理由を教えてあげる。お前達は私に対して言ったわよね?皇帝陛下の直属の憲兵だと。私に教えてくれない?皇帝陛下が民を蔑ろにしろと命じたかしら?ねぇ答えて?直答を許します。素直に答えたら先ほどの死刑は取り消してあげる。さぁ言いなさい!皇帝陛下は、民を蔑ろにしろと命じたかっ!」

縮こまって、その憲兵は震えながら答えた。

「め、命じていません………」

「そうよね。素直に言ったから【私が】死刑と言った事は取り消してあげる」

「あ、ありがとうございます!」

ここでシオンは腰に差してあった扇を広げて口元を隠した。

「でもね?」

ビクッ!?

「あなた達は皇帝陛下の命に背いたのよ。残念ね~。皇帝陛下の命令は何よりも優先されるの。わかるかしら?皇帝陛下はあなた達が憲兵になった時、もしくは新しく帝位に就かれた時に、言ったはずよ。民を守れと、言わなかったかしら?ねぇ答えて?」

ガクガクブルブル…………

「い、言われました………」

シオンは微笑みながら続けた。

「そうよね?皇帝陛下の直属の憲兵ですものね?その【直属】の憲兵が皇帝陛下の命令を無視して、逆の事をしたのですもの。これは皇帝陛下に叛意の意思ありと、見なされても仕方ないわよね?」

「そんな事はありません!私は、我々には、そんな気持ちはありません!」

「ああ!そうでしたわ!?私が領主の罪状を教えているのに、それはそれは、皇帝陛下の名前を口に出して、自分達は皇帝陛下の直属の憲兵だーって誇っていたものね?皇帝陛下を誇りに思っていたんでしょう?あなた達の忠義は素晴らしいわね~~」

シオンは貴族特有の遠回しの言い方で、チクチクと憲兵達の心を抉っていった。

「だったら、忠義の厚い、誇り高い憲兵達なら、命令違反をした場合は、潔く処刑されなきゃね?」

あっ!?と、一部の憲兵が恐怖の余り気を失った。

ニヤリッと………いや、ニタリッと言った方が表現に合っている感じで、シオンの今の顔は悪女である悪役令嬢のそのものであった。

「心に刻みなさい!お前達憲兵が、貴族でも裁ける権限を与えられているのは、弱き民を守るためだ!強い権限を持つ者には、責任が伴なる事を知れ!金と女で罪を見逃す憲兵などいらないのよっ!皇帝陛下の名前を安売りに出して、弱き民を虐げた事が1番の罪だと理解しろっ!!!

素直に罪を認めない者は、連座で家族も親類も処刑する!妻や両親、幼き子供も一族全て処刑する!

慈悲はないと知れ!

それだけ皇帝陛下の【名】は重たいものである!
軽々しく口にするだけでも不敬罪が認められる!
それを罪を侵す時の『免罪符』として軽々しく出すなんて言語道断である!!!

近々、王宮の騎士団が到着する!彼らの尋問に素直に答えるように!」


「「「ははっーーーーー!!!!!全て正直に話します!どうかお許しをーーーー!!!!」」」

憲兵達はみな真っ青を通り越して真っ白になりながら、ガタガタ震えて地面に額を擦りつけるように頭を下げて、完全に平伏するのだった。

心を折られた彼らは素直に犯した罪を吐くだろうと、思うのだった。








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