悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!

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悪友の正体

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シオンが屋敷の扉を壊して突入する少し前───

ワルノヨー伯爵家の屋敷の一階の奥には、元々ダンスホールがあったが、今はカジノの遊戯場に改造されていた。無論、違法カジノである。

エチゴーヤの悪友が進言して、ダンスホールを改造させたのだ。そこで屋敷の主であるエチゴーヤ・ワルヨノー伯爵子息もカジノを楽しんでいた。

カジノの機械や道具、そしてカウンターホールの人材であるディーラーなど全てエチゴーヤの【悪友】が手配したものである。

「フハハハッ!今日『も』ツイているな!」

上機嫌でポーカーを楽しんでいた。

「いやはや、今日はそろそろ勘弁してくださいよ」
「そうですよ。エチゴーヤ様、少しは手加減してください」

一緒にポーカーをやっている仲間から非難の声が上がるが、声色から本気で言っているのではないと、仲間うちで楽しんでいるのがわかった。

「さっきから3連続で勝っているじゃないですか?旦那のツキには勝てませんな」

仲間達からおだてられて上機嫌になっているエチゴーヤは気付いていない。

連続で勝ったのは少額を掛けたゲームで、少し大きな金額を掛けた場合は負けている事を。
勝ちよりも負けの金額の方が大きい事に、ずっと前から気付いていない。
カジノの機械も道具も人事も全て、目の前にいる人物が用意しているのだから、カードのすり替えや、ルーレットの出目など操作するのは簡単なのである。

この悪友達にとって、エチゴーヤ・ワルヨノー伯爵子息は金蔓であり、カジノの場所を提供する家主に過ぎないのだ。とはいえ、このバカ子息だけでは資金も限られているので、この屋敷を守る衛兵達にも開放してお金を稼いでいる。

そして、定期的に周辺の似たような貴族も招待して、荒稼ぎしているのだ。

『まったく、バカは扱いやすくて良いぜ』

こうも容易く稼ぎ場を用意出来るとは思っていなかったぜ?

酒を飲みながら適当に煽てる言葉を述べる。
その悪友の腕には蜘蛛のタトゥーが刻まれていた。

ドォォォオオオオン!!!!!

大きな音と振動が響いた。

「なんだ?」

酒に酔っているエチゴーヤはそんなに気にして無かったが、悪友は目配りをして、配下の者に見てくる様に指示を出した。

「オイッ!そんな音など気にせず早くカードを引け!ジグモ!」

「はいはい、そんなに急がせないでくださいよ」

ジグモと呼ばれた男は、長身で肌黒く、長い髪を後ろで縛っており、赤いハチマキを着けているのが印象的な男だった。

いつもニコニコしており、会話が上手くバカなエチゴーヤをおだてるのも上手かった。

『今の音、門が吹き飛ばされた音か?しかし、こんなに派手にカチコミしてくるヤツがいるか?』

ジグモは配下が戻ってくるのを待った。
そしてすぐに戻ってきた。

報告を聞くとすぐに立ち上がり──

バンッ!
テーブルを叩くとすぐに号令を掛けた。

「お前達!戦闘準備だ!すぐにでるぞっ!!!」

ひぃっ!?
突然、見たこともないような獰猛な顔付きのジグモに怯えるエチゴーヤは床に転がりながら叫ぶように言った。

「じ、ジグモ!いきなりなんだ!?」

「ああ、申し訳ない旦那。だが、カチコミの報告だったので、オモテに行ってきます。旦那は隠れていて下さいな」

「か、カチコミだと!?民の反乱か!?」
「ん~~?どうやら違うようなんですよね~。相手は10人ほどの少数で、リーダーっぽいのは貴族の女性らしいんですよ」

「な、なら、簡単に制圧できるんじゃ………」

「それが、連れてる護衛騎士がえらく強くてですね、すでに20人ほどヤられているようなので、応援に行ってきますぜ」

ジグモはまだ呼び掛けるエチゴーヤの声を無視して入口に向かうのだった。





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