悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!

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悪徳領主☆

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帝国の東には、山脈から流れる豊富な水脈で、大小の湖ができていた。

「水は豊富にあるのですね」
「そうね。この地方は豊富な水源を使い、農業や工業用水として利用されているのね」

シオン達は2日間掛けて次の街にたどり着いた。

「………おかしいわね」

考え込むシオンにハル達が声を掛けた。

「どうなさいました?」
「前の街からここまで、小さな宿場町すらなく、野宿してきたじゃない?目の前に大きな川もあるのに、旅人や商人の事を考えるなら、通ってきた道の途中に、小さな村が合ってもおかしくないはずなのよ」

「なるほど。そういえばそうですね」

ここは国境の街にも数日の距離でそれほど王都に向かう主街道から外れていないにも関わらずだ。

「それなりの商人の行き交いもありそうだけれど……」

良く見ると街の様子も活気がないように見える。

「取り敢えず情報収集するわよ!」

「「はい!」」

シオン達はいつも通りに街を探索した。
街の青空市で売っている物は、お世辞にも質の良いものとは思えなかった。

「すみません。この果物を下さい」
「ハイヨッ!見かけないお客さんだね。すまないな。こんな物しか並んでなくてよ」

キランッ
シオンの目が輝いた。

「これ代金です」

シオンはコッソリと金貨を渡した。
驚いた屋台の店員がシオンを見た。

「少しお話良いかしら?どうしてこの街は……領地は景気が悪いのかしら?」

声のトーンを落して尋ねた。
店員も周囲を気にしながらコッソリと話してくれた。

どうやらここの領主が帝国の法定以上の税を取り立てているみたいで、果物などの商品は、他の領地に良いものを卸して、地元で売るには、売れない形の悪い商品を売るしかない状態だと言う。

「俺達より農家の人達が酷くてよ。ここの領主が、【水】に税を掛けたんだ」

シオン達はここの領主のやり方に絶句した。
農業用水に税を掛けるのは珍しい事ではない。
しかし、この地方は大河があり、大小の湖あるほど水が豊富だ。基本的に水の少ない領地で掛ける税のハズなのだが………

さらにシオン達が絶句したのは、領主が、水源に近い農地の税金上げて、水源から遠い農地の税を安くしている事だった。

「それでは農家の皆さんはわざわざ、水源に遠い場所に畑を作り、重たい水の入った桶を何往復もして水をやってるという訳ですか…………」

なんといことを!?

「因みに、訴えとかは……?」
「ここの領主が国からの税務官に賄賂を渡して黙認させているんだよ。皇帝陛下も代替わりして1年だからな。地方にまで目が行かないんだろう。まったく、やってられないぜ」

シオンは口元に手を当てて悪い顔になった。

「お嬢様、いけません。ここで騒ぎを起こしては、妃選びのマイナスになってしまいますわ」
「ハル、アキ、私が困っている民を見過ごせるとでも?自国では第一王子が私を【悪女】として噂を流しているでしょう?なら悪女らしく悪徳領主退治と洒落込みますか!」

シオンの顔をみて二人は深いため息を付くのだった。




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