悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!

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唯我独尊、再び☆

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顔見せのお茶会もゼノン皇帝の言葉で困惑し、早々にお開きになりそうな時、閉まった扉からノックの音が聞こえた。

「失礼致します。皇帝陛下にお手紙をお持ち致しました」

扉から入ってきたのは、王宮に昔から仕える執事だった。

「なんだ?お茶会が終わってからでも良かろうに」

普通、妃達の交流会のような席で手紙を持ってくるなんて常識では考えられない。

「陛下に置かれまして大変申し訳ございせん。ただ、手紙の送り主が、もしこの手紙が届いた時に、妃達とのお茶会をしている場合は、その場で読んで欲しいとの旨がありましたので」

???

トレイに乗せられた手紙を受け取ると蝋印を見て目を細めた。

「…………オリオン辺境伯の令嬢からか」

!?

「あの人質姫からですか?」

令嬢達の視線が皇帝に集中した。ゼノンはそのままペーパーナイフで封を切るとそのまま読み出した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【拝啓】

この度、シオン・オリオン辺境伯令嬢は、王宮へ到着する日程が遅れる事をお伝え致します。

すでに帝国国内には入っております。
しかし、私は嫁ぐ帝国の事を何も知りません。
これでは私が【王妃】になった時に、適切な業務が行えません。
自分が治める国の事を良く知る為に、帝国中を周ってから登城したいと思います。

どのみち、妃選定の儀は4月からだと伺っております。その頃には伺いますのでご容赦ください。

これも私が王妃となり、帝国をより発展させ、繁栄に導く為の必要な事でございます。

早く私に会いたいとは思いますが、今しばらくお待ち下さいませ。

それでは、お会い出来る日を楽しみにしております。


未来の王妃
【シオン・オリオンより】

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

読み終えた後、お茶会の会場は沈黙が支配した。

「なっ、なんですって!辺境伯の令嬢は自分の状況を理解していないのではなくって!?」

「なんて不敬な!すでに自分が王妃になると確信しているかのように!」

「人質として嫁がさせた事を理解していないのではないかしら!?」

令嬢達が騒ぎ出した。

「ふっ、フフフ、あっーーはははははっ!!!!」

突然のゼノン皇帝の大笑いに周囲は騒然とした。

「まさか、こんな手紙を寄越すとは、存外面白い令嬢のようだな」

顔に手を当てて涙目で愉快そうに言った。

「皇帝陛下!笑い事ではありませんわ!これは明らかな契約違反ではありませんか!?」

怒った様子で言うが皇帝は不敵に笑いながら言った。

「確かに前回の停戦条約で姫を寄越せとは言ったが、明確な日にちまで決めてはいなかったな。妃を寄越して【妃選定の儀】に参加させろまでだ。4月までに登城すれば契約違反にはならない」

あっけらかんに話す皇帝に令嬢達は言葉を失った。

「し、しかし、このまま逃亡するのでは?」

皇帝は手紙に目を落した。二枚目があったのだ。

二枚目には簡潔に、定期的にどこにいるのか手紙を送りますと書いてあった。

ここまで先読みする令嬢にゼノン皇帝は興味を抱くのだった。















その頃シオンは──




「クスクスッ、そろそろ手紙が着いた頃かしら?」

手紙を読んだ皇帝がどんな反応をするのか気になる所だった。

「シオンお嬢様、本当に驚かせないで下さい。まさかすぐに王宮へ向かわないと、国境を越えてから言われるものですから、びっくりしましたよ」

「ごめんなさい。でも違反にはならないから安心して。条約では妃選定の儀に参加させよと書いてあったから4月まで登城すれば問題ないわ」

「それは屁理屈というものでは?」

ハルは心配そうに呟いたが、万が一の場合はすぐに向かえば何とかなるとシオンが説明した。

シオンは国境に1番近い街に来ていた。

「ハルとアキは私に付いてきて。残りの者は宿の手配をお願いね!」

「「はっ!かしこまりました!」」

シオンは身の回りの世話役のハルとアキ以外で、護衛の兵士5人連れてきていた。
高位貴族の護衛は通常10人以上とされるが、敵国の入国には、過剰な護衛は警戒されるので最低限の護衛であった。それでも辺境伯の騎士団の中では精鋭の者達を同行させていた。

「さて、1ヶ月半で帝国を周るのは時間が足りないわ。1度、4月に顔を出したらまた出掛けなければならないかな?」

平然を装っていても、シオンも限られた時間での活動に焦りがあるのだった。




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