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婚約破棄から始めよう!

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その昼間には王都に在住していた多くの貴族達が謁見の間に集まっていた。

王家から巨大龍の説明があると通達があったからだ。国王と宰相は目にクマを作っていたが、それでも威厳ある態度で玉座に座っていた。

ザワザワ
ザワザワ

「静まれーーーい!国王様から今回の事案に付いてご説明があります!」

側にいた兵士から大きな声が上がった。

「うむ、皆よく集まってくれた!今回の件に付いて説明をしよう。だが、先にお詫びしなければならない。今回の騒動に我が王族が関係してしていたのだ。それについて深くお詫びする」

国王様は玉座を立ち頭を下げた。

ザワザワ
ザワザワ

また騒がしくなった。

「静まれ!!!今から説明する!まずは王都に襲来した件に付いてだ。あの強大な龍は伝説の古龍ファフニール様である!」

!?

多くの貴族達がお互いの顔を見ながらどういう事だ?と戸惑いの色を隠せなかった。

「今まで秘密にしていたが、シオン公爵令嬢が連れている小龍の親であるのだ」

!?

ザワザワ!!!
ザワザワ!!!

先程より大きなざわめきが起こった。

「失礼します!どうしてそのような古龍様の子供をテイム出来たのでしょうか?」

「それは、まだ卵の状態の時に、悪質な魔物に毒など掛けられて死にそうになっていたそうだ。その卵を救ったのがシオン令嬢と言うことで懐いてしまったのが今の状態じゃな。そして、子供を救ってくれた古龍様がシオンに感謝して交流が始まったと聞いている」

うん、ここまでは嘘はないよね。
お兄様達が卵を盗んできたとは言わないけどw

「そして、今回古龍様が王都に飛来した理由が、シオン令嬢の『作品』が盗まれた事に起因する」

これには貴族達から声が上がった。
貴族達にもシオンの絵のファンは多いのである。

「それで、シオン令嬢の作品は見つかったのでしょうか!」
「もしまだなら私の衛兵もお貸し致します!」

純粋なファンからの申し出が殺到した。
無論、そのま見つけてネコババしようと言う者いるだろうが。

「安心せよ!シオン令嬢の新作は無事見付けてある。これだ」

貴族達の前に、布が被せてあった額縁が公開された。

「おおっ…………」
「なんと素晴らしい!」
「綺麗な湖の絵ですわね♪」

『精霊の湖』と名付けられた新作を見た貴族達は余りに綺麗な湖の絵に釘付けになっていた。

話が進まないため、また布が掛けられた。

「コホンッ、実行犯達はすでに捕まえてある。複数の者達から高額で依頼された盗賊団であった。そして、その『依頼主の1人』が我が息子のクロウであったのだ」

!?

「国王様!それは!?」

「王族たる者が嘆かわしいものである………クロウは古龍様の怒りに触れ処刑されている」

貴族達は驚愕した。すでに首謀者の1人は死んでいる事に。

「そ、それで古龍様はお許しになられたのでしょうか?」
「うむ、今回の騒動に王族が関わっているとなれば揉み消されると思ったそうだ。クロウを処刑された後は、全てをお許し下さり立ち去って行かれた」

いや、すぐそこに人の姿でいるんですけどね!

「今回の件に付いて深くお詫びする。後日、王都の民にも告知する予定である。全ての民の見本である王族が罪を隠す訳には行かぬのでな。しかし──」

国王様は言いにくそうにシオンの方を見た。
そこで宰相さんが代わりに説明した。

「あ~、大変申し難いことではあるが、シオン令嬢にも罰を与えなければならない。今回はシオン令嬢は被害者ではあるが自身の力の大きさを理解して欲しい。古龍様の襲来により王都はパニックとなり、怪我人が多数でたのじゃ。せめて騎士団を信じてもう1日ほど古龍様を呼ぶのを待って頂きたかった」

うぅぅ、それを言われると辛いデス。
紅さんが調子に乗るから!?

「ライト王子、お願い致します」

宰相さんはライト王子に丸投げした。
ズルい!ライトも絶望した顔で震えていた。

『『すまない!!!』』

国王と宰相は心の中でライトに謝っていた。

「し、シオン公爵令嬢………王都をぱ、パニック陥れた責任を取って頂き、あ、貴女との婚約を破棄させて……いただく」

血の涙を流しながらライト王子は悲痛な面持ちで宣言した。

「シオン令嬢には表向きは養生の為に、辺境の修道院へ行ってもらう。なに、数ヶ月の辛抱だ。そこで、しばらくは絵の製作に注力して、王都が落ち着くまで避難してもらう事とする。学園の単位などは優秀な成績を修めているので問題ないと学園には話を付けてある」

ザワザワ
ザワザワ

「国王様!それは余りにもシオン令嬢が可哀想ではありませんか!?」

シオンには過失がないのにアワを喰った状態に見える。

「王都が落ち着くまでの辛抱である。これはバーニングハート家とも話を付けてある政治的な駆け引きじゃ!異論は認めぬ!」

宰相さんの力強い言葉に貴族達は黙るしかなかった。

「皆様、このたびはお騒がせして申し訳御座いません。不可抗力とはいえ王都をパニックにしてしまい、多くの怪我人を出してしまいました。その責任を取りたいと思います」

シオンは公爵令嬢(笑)っぽく優雅に頭を下げた。

「シオン令嬢よ。そなたに罪はない。しかし、王都が落ち着くまでしばし休養をして欲しい。本日はもう一晩泊まっていき明日の朝、辺境へ向かうがよい。そなたの『他の作品』も積んで行くがよい」

「寛大な処置に感謝致します」

こうして悲劇のヒロインとしてシオンは婚約破棄(笑)され、辺境へ行く事になった。

色々ありすぎて、シオンがライト王子の婚約者だった?と気付く者はいなかった。

スカーレットやリリィは王子の婚約者候補として保留となった。

まぁ、リリィはお兄様と一緒になれる~と喜んだのは当然であった。




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