上 下
89 / 104

積もる話と事後処理と─

しおりを挟む
シオン達が世界樹から戻って休んでいる時に、幾つかの決まりごとを決めた。

シルフィードがクイーン・アントに喰われて1度死んだ事は伏せられ、魔王軍の四天王に捕らわれていた事に留めた。世界樹が狙われていたが、四大精霊シルフィードが捕らわれていても、力を使いそれを防いでいたと発表する事になった。

突然の発表に驚く市民だったが、長年姿を現さなかった四大精霊のシルフィードが現れたことで信じざる負えなかった。人知れず世界樹を救ってくれていた四大精霊に感謝するお祭りが開催される事になった。

「あらあら、先を越されたわね」

お城に滞在していたレイラ夫人が少し残念そうに呟いた。

「リュミナス王国でも四大精霊の感謝祭をするの?」
「ええ、それはもう建国祭以上に盛大にするよう働き掛けるつもりよ♪毎年ね!」

シオンの問い掛けに、負けていられないわ!という感じでレイラは答えた。

「それにしても、地下では緊急時だったから気にしなかったけど、シオンは凄いわね。四大精霊の3柱と契約するなんて?どうなっているのかしら?」

同じ年齢っぽい外見とは裏腹に、シルフィードは気品あるしぐさで紅茶を飲んでいた。

「シルフィよ、我々の契約者シオンはレベルをカンストして前代未聞の99レベルなのじゃ」

「えっ!?」
「そうそう、この子に常識は通用しないわよ?気にするだけ無駄よ」

ノームはシルフィードを背中から抱き付いた。

「ちょっと…………!?」

ボイーン!ノーム胸に埋もれるシルフィード。

ムカッ

「やめてよ。何よ!ボインボインさせちゃって!こんな姿になった私に対して嫌味のつもり?」
「あははは、シルフィも何?そんなペッタンペッタンさせちゃって。前も変わらないんじゃなかったっけ?」

ぶちっ!

「キッ!ナニカイッタカシラ?」

ブルブル!シルフィードに胸の事は禁句みたいだ。

「そういえば私もシルフィって呼んでもいいかな?そっちの方が呼びやすいし」
「ええ、いいわよ♪親しい人からそう呼ばれているしね。ああ、ノームはシルフィード様と呼びなさい」

「なんでだよ!」

なんだかんだで仲が良さそうな二人であった。

「でも、ノームも長年に渡り石になっていたんでしょう?下手をしたら私の様になっていたかも知れないんだから、気をつけなさいよ!」

シルフィードはそういうと、ノームから視線を反らして、残りの紅茶を飲み始めた。

「ああっ!シルフィはツンデレさんなんだ!」

ぶっーーー!!!!

盛大に紅茶を吹き出すシルフィードであった。








「祭りは明日から開催だってさ」
「早く帰りたいけど主役がいないとね」

そういうが、すでに転移で戻って事の顛末は各王様に伝えてあった。四大精霊が死ぬ事に、王様達は酷く驚き動揺したが、その事実は秘匿される事になった。

「う~ん…………やっぱりダメか~」

1日暇になったシオンは、亜人のお城の裏手にある兵士の訓練所に来ていた。

「それはそうよ。水や土、植物と違って風魔法でゴーレムを造るなんて不可能でしょう?」

シオンの実験に付き合っているノームが答えた。

「せっかくシルフィと契約して風魔法が使えるようになったのになー!なんか便利な魔法とか知らない?」

う~んと悩んでいると、ノームとシオンの監視役としてシルフィードが様子を見に来た。

「それならレビテーションの魔法でも覚えてみる?」
「どんな魔法なの?」

シルフィードは説明より先に実演してみた。

「おおっ!浮いてる!浮遊魔法なんだね!便利そうだよ♪」

こうしてシオンは浮遊魔法を覚えたのだった。

「えっ?ノームも浮遊魔法が使えるの?」
「ええ、系統は違うけど、土属性は重力を操れるからその応用でね」

こうして実りある1日が過ぎて行くのであった。

「それにしても料理もだいぶん変わってきたわね」

夕食を食べているとシルフィードがそんな事を言ってきた。四大精霊は食べなくても生きていけるが、食べられない訳ではないのだ。

「ここの料理は香辛料を使ったピリ辛な味付けが多いわね。王国では余り辛い料理はありませんでしたので斬新です」
「でも美味しいよ♪それに料理といえばシオンだからね!」

レイラ夫人とノームはシオンを見た。

ガツガツッ

「モグモグ………どったの?」

食事に夢中だったシオンは首を傾げた。
こらこら口に物を入れてしゃべらないの!

「シオンが一流の料理人って話よ。今度、戻ったらシルフィにも食べさせてよ」
「了解だよ~!」

和やかな夕食が終わり後日、精霊感謝祭は大いに盛り上がり終了したのだった。

シオン達は表向きは船で帰ることになったが、人知れず転移で帰るのであった。

「ただいまー!」


【世界樹編】『完』


また一週間ほどお休みを頂いて、書き溜めます。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】ドケチ少女が断罪後の悪役令嬢に転生したら、嫌われ令息に溺愛されました。

やまぐちこはる
恋愛
仁科李依紗は所謂守銭奴、金を殖やすのが何よりの楽しみ。 しかし大学一年の夏、工事現場で上から落ちてきた鉄板に当たり落命してしまう。 その事故は本当は男子学生の命を奪うものだったが、李依紗が躓いた弾みで学生を突き飛ばし、身代わりになってしまったのだ。 まだまだ寿命があったはずの李依紗は、その学生に自分の寿命を与えることになり、学生の代わりに異世界へ転生させられることになった。 異世界神は神世に現れた李依紗を見て手違いに驚くが今回は李依紗で手を打つしかない、いまさらどうにもならぬと、貴族令嬢の体を与えて転生させる。 それは李依紗の世界のとある小説を異世界神が面白がって現実化したもの。 李依紗も姉のお下がりで読んだことがある「帝国の気高き薔薇」という恋愛小説。 それは美しい子爵令嬢と王太子のラブストーリー。そして李依紗は、令嬢を虐めたと言われ、嫌われることになるありがちな悪役令嬢リイサ・サレンドラ公爵令嬢の体に入れ替わってしまったのだ。 =============================== 最終話まで書き終え、予約投稿済です。年末年始は一日3〜4話、それ以外は毎日朝8時に更新です。 よろしくお願い致します。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

前世を思い出したのでクッキーを焼きました。〔ざまぁ〕

ラララキヲ
恋愛
 侯爵令嬢ルイーゼ・ロッチは第一王子ジャスティン・パルキアディオの婚約者だった。  しかしそれは義妹カミラがジャスティンと親しくなるまでの事。  カミラとジャスティンの仲が深まった事によりルイーゼの婚約は無くなった。  ショックからルイーゼは高熱を出して寝込んだ。  高熱に浮かされたルイーゼは夢を見る。  前世の夢を……  そして前世を思い出したルイーゼは暇になった時間でお菓子作りを始めた。前世で大好きだった味を楽しむ為に。  しかしそのクッキーすら義妹カミラは盗っていく。 「これはわたくしが作った物よ!」  そう言ってカミラはルイーゼの作ったクッキーを自分が作った物としてジャスティンに出した…………──  そして、ルイーゼは幸せになる。 〈※死人が出るのでR15に〉 〈※深く考えずに上辺だけサラッと読んでいただきたい話です(;^∀^)w〉 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。 ※女性向けHOTランキング14位入り、ありがとうございます!!

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。

和泉鷹央
恋愛
 アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。  自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。  だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。  しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。  結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。  炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥  2021年9月2日。  完結しました。  応援、ありがとうございます。  他の投稿サイトにも掲載しています。

初夜で白い結婚を宣言する男は夫ではなく敵です

編端みどり
恋愛
政略結婚をしたミモザは、初夜のベッドで夫から宣言された。 「君とは白い結婚になる。私は愛している人が居るからな」 腹が立ち過ぎたミモザは夫家族を破滅させる計画を立てる。白い結婚ってとっても便利なシステムなんですよ? 3年どうにか耐えると決意したミモザだが、あまりに都合の良いように扱われ過ぎて、耐えられなくなってしまう。 そんなミモザを常に見守る影が居て…。

処理中です...