七色の魔弾使い

予想外

シオンが領地に到着した頃───

「クロム侯爵様！先ほどシオン様が屋敷に到着したと報告がありました！」

シオンの父は頷いた。

「そうか。思ったより早かったな。ならば数時間後にはここにやってくるか…………」

クロム侯爵の目の色が変わった。

「ならば、休んでいる訳にはいかないな」

すでに何度目かの魔物の襲撃を凌いで汚れているマントを払って言った。

「団長！出撃ですか？もう少し休まれては？」

ダンジョンからどんどん魔物がやってきて、街を取り囲む魔物を一掃しては取り込まれると言う状態が続いていた。精鋭なカラー侯爵家の騎士達も疲れが見えていた。

「もうすぐ息子が到着する。それまでに一掃して、街の門を通れるようにしておかねばな！」

！？

クロム侯爵の言葉に騎士達の目も変わった。
ギランッ！！！

「シオン坊っちゃんが戻ってくるんですね。それは頑張らないといけませんね！」

カラー侯爵家の私設騎士団達は知っている。
団長が、クロム侯爵が、心を殺してシオンに稽古を付けている事を。

昔からいる騎士達もシオンの稽古に付き合っているので、自分の子供のように可愛がっていた。
故に、危険を排除しようと士気が上がったのだった。

街の門にはシオンの母親が結界を張って、壊されないようにしていたので、まだまだ踏ん張ることが出来ていた。

「でるぞっ！！！」

門が開かれると、そのまま飛び出して、付近の魔物を倒していった。


『バカな！？これだけの魔物の大群をたったの50名ほどの騎士団で守っているだと！？』

仮面の人物、アングリーは驚愕していた。
予定ではこの街も、すでに陥落してカラー侯爵領を蹂躙しているはずだった。

しかし、現状は僅かなカラー侯爵領の騎士団に、第一侵攻は防がれている状態である。
そこ最たるものは───


『カラー侯爵は化物かっ！？』


シオンの父親の実力は信じられないものだった。
王国一の魔剣士と言う肩書はダテではなかったのだ。いや、下手をすると、世界でも有数の実力者なのだ。剣を一振りで複数の魔物が倒される。それに続く騎士達も相当な実力者達だった。
別の国や領地では騎士団長を名乗れるほどのレベルの者が約50人ほどが戦っているのだ。

魔物の良いところを組み合わせて作ったキメラも、最初こそは手こずっていたが、すでに慣れて適切に倒していた。

攻めきれてない状態で、時間を掛ければ国や隣の領主から援軍が到着し、スタンピードを終結させられてしまう。

アングリーは遠くから戦いを見ながら、対策を練った。

『まだまだダンジョンから魔物を呼び出せる。もう１日は絶えずせめて疲労を狙うか』

アングリーはさらに強いキメラを呼び出す準備に入った。

『この一手、防げるかな？』

カラー侯爵を見ながらアングリーは不気味な笑みを浮かべた。