七色の魔弾使い

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圧勝

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ボルドーが見えたのは黒焦げになった自分の腹の部分だった。

何が起こったのか見えなかった。

普通であればどんな魔法を放ったか見えるはずだった。しかし、聞き慣れない音が響いたと思ったら、衝撃が走り、このざまである。
身体を起こそうにも、ダメージが大きいのか起き上がれなかった。

「あらあら、勝者シオン・カラー君です~~~!」

ミント先生が声を上げた。

!?

バカな!
オレはまだ戦える!
ボルドーは必死に身体を起こした。

「ハァハァ…………ま、まだだ!まだオレは戦える!!!」

結界が解けて、ミント先生が歩いてきた。

「いいえ、勝負は着きました。胸の校章のバッチを見てみなさい」

ミント先生はメガネ越しに目を細めて静かに言った。

「な、なに………?」

腹に受けた衝撃により、直撃ではなかったのに、胸に付けていたバッチが粉々になっていた。

『ウフフッ♪
素晴らしい能力ですわね。
この子をけしかけて良かったわ♪』

ボソッとミント先生は呟くと、にこやかに笑いながら振り返り、シオンの腕を掴んで空に掲げた。

「もう1度、バッチ破壊と対戦者ボルドー君の戦闘不能により、シオン・カラー君の勝利です~~~!」

オオオッ!!!!!
歓声と共に大きな拍手が起こった。

『さーて、グランドでの剣魔決闘は教室の窓から、全ての一年生の生徒が見ていたはず。これから面白い事になりそうね~頑張ってね。シオンちゃん♪』

剣魔決闘には、別の闘技場のような練習場があり、グランドで行われるのは珍しい事であった。

そう、今回の剣魔決闘は、シオンの能力を、同級生達にみせるのが目的だったのだ。

そんなミントの思惑を知らずに、シオンは戻ろうとしたが───

「あら?忘れていましたわ。今回の剣魔決闘では敗者のボルドー君は1年間、シオン君に絡んではいけません。そして、決闘を行った場合は、最低3ヶ月間は同じ相手と再戦できませんので、ご注意下さいね」


ミント先生の言葉にシオンは手を振り返りながらルビーの所へ戻っていった。

「お疲れ様~はい、タオルですわ」

ルビーはシオンにタオルを渡した。

「ありがとうな」

汗を拭いている時に、アッシュも労いの言葉を掛けた。

「圧勝だったね。まさに一撃だったよ」
「まぁね。あれだけ情報を与えたのにまるで気付かなかったからな。正直、落胆したよ」

二人はうんうんと頷いた。

「確かにそうだね。あれだけ大剣を振り回して攻撃をしていたのに、かすりもしなかった事に全然気付いていなかったよ」
「普通なら、全然攻撃が当たらないなら、警戒して攻撃の手を休めて、スキを伺うのだけれどね」

シオン達は今回のバトルの戦術の話に華を咲かせたが、他の生徒も同じくとシオンのバトルを分析しながら話していた。


「シオン君の攻撃…………見えた?」
「いや、全然見えなかった。だが、予想はできる。構えた指先からファイヤーボールの様な魔法を放ったのだと思う。…………ただし目に見えない速さでだ」

周囲の生徒も同意見だったが、そんな魔法や技術、などあるとは聞いたことがなかった。

「もう1度見てみたいな」

誰かが呟いた。

それはグランドにいない、校舎から決闘を見ていた他の同級生も同じ気持ちだった。

ミントの狙い通りに、これからシオンに剣魔決闘の申込みが殺到するのは、もう少し後になってからだった。


そしてに1年校舎の屋上から数名の【人物】達も決闘を見ていた。


「あれがシオン・カラーの力の一端かね?」

「フッ、まさか。あんなのは遊びに過ぎませんよ。シオンが本気なら、結界を粉々にしてボルドーは死んでいたでしょう」

!?

「結界の能力を超えるだと!?」

驚く人物に薄笑いしながら言った。

「あの悪ガキどもは、未成年で初のダンジョン踏破の偉業を達成してますからね。この事実を知っているかどうかが、各個人の情報収集力を測るのに役立つでしょうね」

ダンジョン踏破は各地に点在するダンジョンでも、10年に1度あるかないかだ。ダンジョンの最奥にあるダンジョン・コアを取ってくる事が証拠になる。

それを未成年のパーティが達成した。
ただし、親のコネを使い秘匿したのだった。

理由は簡単。

『騒がれるのが嫌だったから』

しかし、その偉業を完全に隠すことは出来なかった。

シオン達も本気で隠せるとは思っていなかった。学園に入るまでは静かに過ごせればよかったからだ。

「あれが【死音】のシオンの能力か。面白い!」


そう、シオンも二つ名持ちだったのだ。
あの攻撃の【音】を聞いた相手は、気付いたらダメージを受けていた。もしくは死んでいたという、戦闘スタイルから付けられた二つ名であった。



『七色の魔弾使い』

【死音】(しおん)のシオン


字で見ないとわかり難いが、シオンもこの業界では名が上がってきている人物であったのだ。


「クククッ、これからの学園生活を楽しみにしているぞ。【死音】よ!」

校舎の屋上にいた人物達は音もなく消えるのだった。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
【後書き】

【死音】のシオン

この二つ名の主人公の小説をずっと書きたいと思っていたのです!格好良さそうだから!ドヤァ


続きは読者様の反応をみて書きたいと思います。



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